第16話京都に集合2

中国古来の風水による地形分析だとは思うが、

五山に火を放ち天空より舟を呼ぶ、は気になる。


この五山は禅宗の京都五山ではないのだから

京都盆地を囲む大文字焼きの五つの薪基地が


太古の昔からすでに存在していた証でもある。

何のために?天空から舟を呼ぶために?


一般には雨乞いの為に龍神を呼ぶと言うのが通説だが

ひょっとしたらほかの何かを呼ぼうとしたのかもしれない。


現在の大文字焼きは右大文字と左大文字、妙と法の文字、

舟形と鳥居の形で四つの文字(漢字)と二つの図形が


8月16日の夜空に浮かび上がるが、地上からはまず全部見

れることはできない。最大の右大文字でさえ下から見上げるのは


寝そべったような大の字だ。天空から見てこそ、大、大、

妙、法、舟形、鳥居は意味を成す。

妙法蓮華経の五字を当てたのは相当後の話である。



竹取物語は西山の竹林に昔から語り継がれた民話だし、

日本海方面の羽衣伝説や古事記や日本書紀の神話には

どうしても宇宙が関与していると思えて仕様がない。


今でも大原の里の奥地にはUFOが来るるという。

その昔京都盆地全体がUFOの目印として交流していた

としても少しもおかしくはないのだ。


水がめと言うのは京都盆地の地下水脈のことで琵琶湖の水量

に匹敵するほどの膨大な大伏水脈が現として今も存在している。


水と盆地と五山の火。宇宙との交流はこうして年に1回行われ

ていたのではあるまいか。旧暦の七月七日を過ぎて九日目と

いうのは現代ではちょうど八月十六日のことだ。


これはぜひ実験してみようとオサムオサナイは思った。宇宙

と交流したいとナムストーンに同時に各五地点で祈ってみよう。


何もなければそれはその時だ。五人のいい思い出にはなるだろう。

しかしオサムオサナイには必ず何かが起こるような気がしていた。


それは何故だか分からないが必ず何かが起こる。五人の胸中にも

現実にも何かが起こる。そこで我々五人の使命も明らかになるのだ

という一点の疑いもない大確信だけはあった。


八月十日正午に全員が関空ロビーに集合した。

皆会うや否や石を確認した。


みんなにははっきりとほかの石も見えたのだ。

手放してもほかの人の手の中で光っている。


ナセルが放り投げようとしたらぱっと消えて

またもとのナセルのポケットに戻っていた。


石は一番居心地のいいところに存在するようだ。

場所がなければ姿を消すだけだ。

入浴中は大体姿を消している。


関空のロビーで五人はじめてそろった時、

一瞬みんなが宙に浮いたような気がした。


「ベリーウェルカム!ようこそ日本へ。わがナムストーン

の皆様。私がオサムオサナイです。今日は歴史的な出会い

の日です。自己紹介をどうぞ」


年長者のキーツカーンは医者としての貫禄と冷静さが

しっかりと身についていた。身長180cm、

頬髯を生やしてめがねをかけている。


「この間の水害の時にはほんとに心配をかけました」

と明るく礼を述べた。


実業家タイプのナセルはとても軽妙だ。

「オー、プレジデントジュニア、ナセル!」

と握手を求めると大笑いだった。

「しかしテロは恐ろしい」

と彼は顔をしかめた。

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