第188話 開始

東名自動車道



起動輪、誘導輪、複数の転輪が回り、無限軌道で履板が地面を踏破



駆動する履帯(キャタピラ)



時速60キロでバック走行する5輌の10式戦車がいた。



クラッペハッチ(視察口)から顔を出す隊員が双眼鏡を覗きながら



「距離3.4キロ…少し引き離したがまだ後方から追って来てるぞ」



「分かってる…こっちのセンサーでも捉えてるよ」



「やさぐれクマでも運転出来るオートマブーブーとは訳がちげぇーんだぞ」



「いいから中へ入れ」



ハッチを閉め中へと戻る隊員



「なぁ…信じられるかぁ…?車体に何十体もの奴等が乗り、ロケットランチャーを所持してんだぞ…」



「…」



「なぁ…お前聞いてんか?それを撃ってくるなんて信じられるかよ…水鉄砲扱えるだけでも驚ける程単細胞な生物だぞ そんな奴等がランチャーを扱うだって それから戦車まで操縦しちゃうだって… 悪い夢だ…これはフレディークルーガーの陰謀だ…なぁ そう思うだろお前も」



「…そうだな」



「おい 及川 ちゃんと俺の話し聞いてんのかよ?」



及川「聞いてるよ 分かったから いいから落ち着け 南 でっ 火砲の種類は何だった?」



南「バラエティーにとんでるよ RPGを始めグスタフ、スティンガー、SAM1、01式誘導弾からパンツァーファウスト…それからM…」



及川「分かった分かったもういい分かったよ」



南「本当に分かってんのかよお前…防衛線が突破されて1000人もの同胞達が死んだんだぞ…ヘリが撃ち落とされ、皆食われた 生き残ったのは…多分…俺達だけだ…事の重大さをお前は…」



声を荒げ一喝する及川



及川「分かってるよ だから今こうして第2防衛線まで退避してるんだ 俺達だけでも生き残って情報を伝えなくちゃならない」



南「あの追っ手はどうする?」



及川「さあな 防衛線へ着けば仲間が何とかしてくれるだろう…とりあえずこの距離さえ保ってれば、少なくとも4輌のヒトマル式と俺達は助かる」



南「あいつらから逃げ切れるのか?」



及川「何もなければ逃げ切れる」



その時だ



志水「ジィージ …ジジ…えるか…?ヒトマル隊…ヒトマル隊…応答せよ ジジ」



「ジィ 聞こえます こちらヒトマル隊13 ジジ」



及川「こちらヒトマル隊6」



「ジジ ヒトマル隊11です ジィ」



「ジィー こちらヒトマル隊05  ジジジ」



「ジィージジ こちらヒトマルシキ17 ジジ」



突如 指令部志水からの無線が飛び込んできた。



志水「ジジジ あの状況からよくぞ生還してくれた… 分かってると思うが前線から生き残ったのは恐らく貴官等の5輌のみとなる…奴等の人間じみた異変も…悲惨な現状も私達より十分把握してる事だろう… ジジィ」



南「デスクの身分であの恐怖の何が分かるってんだ…」



「ジジィ えぇ…あそこはまさに地獄でした…ジィ」



志水「ジジィ 各車輌 後方から追って来る1台の戦車についても既に分かってるな? ジジ」



「ジジジ えぇ 何なんですかあれは?奴等本当の戦争をおっ始めるつもりですか…?ジジ」



及川は南を見ながら無線機を手にする



及川「本部 1つだけ教えて下さい あの…後ろから追いかけて来る戦車…あれを操縦してる奴や…ランチャーをぶっ放して来る奴…あいつらは本当にゾンビなんですか?実は人間って事はないですか?」



志水「ジジ 混乱するのも無理はない…当本部も、いや、全ての者がこの異常事態に困惑している……奴等は無論人間じゃ無い 正真正銘ゾンビ共だ ジジィ」



及川「南 聞いたか?だとさ 悪い夢じゃなかったな フレディーの仕業じゃねえ~よ リアルだ」



南「…まじか」



「ジィ 新手の変異体なんですね?ジジィ」



志水「ジィジジ 詳しい事はまだ分かっていない…したがって断定は出来ないが当本部の見解はそうゆう事だ ジジィ」



南「新手の変異体感染者って…にしても戦車を操るって…運転には高度なテクニックが必要な筈だぞ 戦車は猿でも運転出来る一般のオートマ車とは違う ただハンドル握ってアクセル踏めばいいってもんじゃないんだよ…それなりに知識を要するのに、それをこなすならもう人と大差は無いぞ…」



志水「ジジィ 皆…よく聞け!今 後ろから1台の戦車が追いかけて来てるのは分かってると思うが……実はそれが関越でも全く同様の事態が発生している 突破されたタイミング、ヘリへの攻撃、そして…戦車での追走…これらがまるでリンクしてるかの様に同時進行で起こってるんだ つまり…この併発は…もはや偶然じゃない 戦車を操縦してるのも…車体に乗り、ロケット弾を肩に担ぐ貴官等と同じ自衛官も…この感染者達の一連の行動は…1つの意志で動いている  徒党を組み、組織化されようとしている…… 当本部はそう判断している これから危険な何かが起きようとしてるんじゃないかと… そんな前触れだと推測している ジィ」



「ジジ 関越道でも同じ事が… ジジジィ」



南「何かって何だよ…?」



「ジジィ 組織化ですか? ではっ…つまり本当に戦争を仕掛けて来るつもりだと…?ジジ」



志水「ジジ その可能性が高い ジジ」



南「はぁ?能無しのゾンビが戦争を仕掛けて来る?」



及川「今更驚く事でも無い ここまで来れば有り得るだろ」



志水「ジジジ そこで貴官等にある作戦を言い渡す 関越ではこれから米軍の戦闘機が迎撃に向かい、そっちにはこれより2機のガンシップが向かってる……ジジ」



南「おいおい何だよ作戦って?ふざけんなよ…」



及川「黙って聞け」



志水「…今から貴官等の5輌で追っ手の戦車を止めてくれ… ジジ」



南「はぁ?何とちくるった事言ってんだこいつ…」



及川「うるさい 少しは口をチャックしろ」



志水「ジジ 第2防衛線へ到達する前に… 何かを起こす前に…その追っ手の戦車を迎え撃ち、速やかに撃破してくれ 到達する前に貴官等で侵攻を阻止するんだ ジジ」



「ジィー 了解です そのガンシップ到着までは? ジジ」



志水「ジジジジ ガンシップの到着は約20分後だ…ジジ」



「ジジ ならガンシップのヘルピングはいらないでしょ 5対1だぜ 来る前に終わってる ジジジジ 」



志水「ジジ 凄まじいロケット弾の砲撃が予想される…軽視は命取りになる 決してあなどるな ジジ」



「ジジ りょーかい ヒトマル隊 ジジ ジ……さぁ 上からの直令だぁ 全車輌ストップしろ ジジ」



南「クッソー ふざけんなよ」



及川「…」



キィィィィー



そしてバック走行する5輌が急停止された。



「ジジ 本隊はこれより追走する1輌の戦車を迎え撃つ いいな ジィ」



東名ではこれからタンク戦が始まる

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