第163話 嘲笑

烈戦を制した芹沢



床に落ちた肉片を踏み潰し、手すりに腕をもたれた。



ゾンビや感染者を見下ろし



薄気味悪いその景観を眺めながらゆっくり唾をたれ落とす



エントランスホールを一望する芹沢が悪虐に満ちた視線を2人へと向け、中指が立てられた。



芹沢「フフフフフ」



ファック ユーのハンドジェスチャーをエレナ、理沙へと送った。



長身なる特異者を鮮やかに葬った芹沢



その一部始終を目にしたエレナが芹沢と目を合わせた。



入口付近ではハサウェイ達も2階通路を見上げている。



また…同様にそれを見届けた理沙



忠実なしもべが目の前で八つ裂きにされるも平然と見上げていた。



理沙「へぇ~」



ただ…理沙から笑顔は消えていた…



あまりに特殊な戦闘シーンを観戦させられたハサウェイ



ただでさえ変哲な糸の武器…



銃よりも厄介で脅威を感じるあの特殊な鋼糸に…



更なる脅威を抱かずにはいられなかった。



前見た時は一本しか放出出来なかった…



なのに…今はどうだ…同時に何本も放ってやがる…



隠してたのか…?



パワーアップしてやがる…



ハサウェイは芹沢の鋼糸に多大な脅威を感じた…



理沙と同じで…



奴も…やはり野放しには出来ない相手…



あいつもここから外へ出してはならない…



俺達でけり(決着)をつけなければならない相手だ…



ハサウェイは拳を強く握り締めた。



理沙「やったねぇ~ よっくも理沙の可愛い使いっぱしりの臣僕を」



芹沢「いくらでも殺ってやるよ… テメェーの追い詰められた顔を拝めるならな そのあとはおまえだ」



すると球体をゾンビ、感染者の群れに差し向け



唐突に鋼糸を発射させた。



無差別に放たれた複数の糸が、網の様に群れに被さり



同時に糸へ接触した奴等の5体が触れた瞬間切り離され、床へと転がった。



スパッスパッと面白い程に手足が切り落とされ解体された感染者やゾンビ達



芹沢「ひゃーはっはっ」



瞬時に糸が戻される。



それを目にした理沙が左手を上げるや。



理沙から右側にいる兵隊さん達はそのまま待機…



理沙から左側にいる兵隊さん達は…



あの上にいるお調子者を…



食べてしまいなさい…



理沙から信号が伝達され、命令が下された。



途端に伝潘された感染者やゾンビ共が芹沢を見上げ、一斉に動き始めた。



エレナ、ハサウェイ達には見向きもせず、統率された死者の兵が芹沢目掛け、階段へと押し寄せた。



純や「なんだ…急に…」



由美「きゃ」



いきなり動き出した奴等にハサウェイ達一同は驚いた。



矢口「どうなってる…」



動揺した表情で辺りへARを振り構える矢口



ハサウェイも険しい表情で奴等の動向を目にし、左手をあげる理沙を目にした。



まさか…



ハサウェイ「みんな… いつでも逃げる準備しとけ…」



矢口「え?」



突然、大挙して階段を駆け上がるゾンビ等が我先に身体をぶつけ合い、ひしめき合いながら芹沢へと迫る



焼けただれ、黒こげた感染者やゾンビ共の接近、勢焔で凄味ある加速を見せた。



「うがぁぁあああああ」



「今日オフ会あるんで定定時には帰りますかかかからで」



「に…西島さんすでぎぃぃかかのじょいどぅの~かなぁ~」



「おぉおい!渡りさんた宅の月末の集金どうなっでるぅの…」



大人しかった奴等が忽地に豹変し、喚きながら2階通路へと雪崩込んだ



50~70体もの喰屍が猛烈なダッシュで芹沢目指し、通路を駆け抜ける。



向かって来るゾンビの集団へ目を向けた芹沢



血眼で急接近する奴等を見ながら、目を瞑り、ほくそ笑むや、次第にすすり笑いの声をこぼした。



互いに身体を接触させながら先頭を走る2体の感染者



その2体の感染者が芹沢の7~8メートル手前に差し掛かった時だ



突如 身体が小間切れにされた。



2体が一瞬にしてお手頃サイズなサイコロ肉へと寸断され、肉片がボタボタ散らばった。



後続も次々とキレイに細断され肉片が転がる



そう…通路にはいつの間にやら…



いつの間にか切れ味抜群なあの糸が張られている…



蜘蛛の巣の様に…



通路には糸の壁が張り巡らされていた。



舌なめずりする芹沢



奴等を埋伏していた。



そうとも知らずに…無能過ぎる…



やっぱ…馬鹿だこいつら…



芹沢「ププ…くくく」



突っ込み、勝手に切断されてゆく奴等に笑いが込み上げ



我慢出来ずに芹沢は腹を抱えて笑い出した。



芹沢「ハァーハッハハハハハ、馬鹿だぁ~ハハハハハ…馬鹿過ぎる…ヒャーハハハハハハ…学習なさ過ぎる…ハハハハ…ギャーハッハッハッ!腹いて…腹いた…やべぇ…ハハハハハハハハハハハハハハハハ…傷口に触れてイテテ…くくハッハハハハハ…なんで…?前の奴見て…ハハハハハハハハ…わっかんねぇーの?ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ…あったま悪過ぎ…くくく…ハッハハハハハ…ウケる…ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ…まだ来る?…自滅とか阿呆過ぎる…ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ腹痛ぇ~ハハハハもう笑わすなやハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ…ミンチ製造機やん!ハッハハハハハくくハッハハハハハ、くくふふ…スーパーの店頭に出せちゃうやん…ハッハハハハハくくハッハハハハハ腹痛いって…笑かすなぁ…ハハハハハハハハ苦しいわぁ…くくく、ゲホォアッハハハハハハハハハハハハハハハ笑い死ぬぅぅ…はぁはぁはあ…くくくハハハハハハハハ止まらん…イテイテ…ヤバい…ハハハハハハハハ…タンマタンマ…面白過ぎるよ~」



大粒の涙を流す程大声を張り上げ爆笑する芹沢



その手前では奴等が勝手に突っ込み、一瞬にしてバラされて行く



自動的に肉片と化し、死んで行く感染者やゾンビに



芹沢はその光景に笑いが止まらずにいた。



気づけばものの2、3分で肉塊の山が出来上がり、向かって来る最後の一匹が分塊された。



後に残るは70体近い奴等の山積されたサイコロ肉と…



ゲラゲラ笑う芹沢の笑い声のみが響き渡る…



下品な嘲笑を目にするエレナ



芹沢が目に浮かべる涙を拭いながら再び手すりへともたれ



エレナと理沙を見下ろした。



そして…どうだと言わんばかりに理沙に向け両手を広げる芹沢



理沙「カチーン うっとおしい人間達め…」



理沙が左手を再びあげた。

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