第160話 熾烈

中央自動車道



「てぇ~~~」



数々の01式擲弾が撃ち込まれ、爆発を起こした。



防壁に群れ、ゾンビの大群が壁に手を伸ばし足掻いている。



「マルヒト、ヒトロク、ヒトナナ各小銃班 前へ」



すると小銃を持った隊員等が前へ出て、擲弾班と迅速に入れ替わった。



「撃ち方ぁ~ よ~い」



指揮官の合図で40名程の隊員等が小銃を構え



「始めぇぇぇぇ」



フルオートされた小銃



タタタタタ タタタタタタタタタタ



ゾンビの群れへ乱れ撃ちされた。



タタタタ タタタタタ タタタタタ



「撃ち方 やめぇ~~」



「次ぃ~ 投擲用意」



すると今度は発砲する隊員等の隣りへ手榴弾を握しめた隊員等が現れ、小銃班は後方に下がり、弾薬補充に入る



速やかに安全ピンが抜かれるや



「投擲始めぇぇーい」



指揮官の号令により一斉に手榴弾が投げられた。



軍勢に40個もの手榴弾が散りばめられ、人混みに消えると



各所から時間差で爆発、たちまち人形の様にゾンビの身体が浮かび上がった。



現在小銃班、手榴弾班、擲弾班の3グループに分かれ、それらを交互に繰り返しながら迎撃が行われている。



そんな順序良く、効率良く 入れ代わり立ち代わりで防衛が行われているさなか



ある兵器が到着、運ばれてきた。



「山口1尉 中MAT(87式対戦車誘導弾)一式、計10機只今到着致しました」



山口一等陸尉「よし 東本部からは既に使用の許可がおりてる すぐに運び込め」



隊員が敬礼するや、箱から取り出され、組み立てられた兵器が次々に運び込まれてきた。



2種類の脚のついた物



通称タンクバスター(87式対戦車用誘導弾)なる兵器だ



その2脚架のレーザー照射機が10機運び込まれ、定位置に置かれ



また、その横には3脚架の実射機が運び込まれ配置されて行く。



そして数名の隊員等が迅速に作動させ、照射機や実射機の設定に取りかかった。



ホーミング(飛行機や車両の熱や電波を探知、追尾する自己誘導)の設定入力から…



光波射出チェック、誘導シーカー検知チェック



電波反射入力や反射波放射源の設定、IFFの設定入力などが速やかに行われ



照射手が機器を覗きながら光波レーザーを軍勢へと照射した。



「距離55メートル、光波反射シグナル検知、照射準備完了しました」



「距離36メートルでロック完了、こちらも出力、照射共に完了しました、SALH(セミアクティブレーザーホーミング)システムの設定もオーケーです」



「距離22 こちらもMMAT発射準備完了」



「距離25メートル 照射固定 こっちもスタンバイオッケーです」



各射手もタンクバスター実射機の発射準備を整えた。



「準備完了 撃てます」



「こっちも撃てます」



「放てます」



「こっちも発射可能です」



「こちらもオッケーです いつでも撃てます」



全ての発射準備が整った。



山口「よし やれ」



山口からのゴーサインにより10機のMMATミサイル発射



「誘導弾 発射する」



「ATMー3ミサイル しゃ~~」



「87ATM  砲火開始」



道路を埋め尽くし、押し合いへし合いする仰山な群れに、それぞれ実射台からミサイルが発射され黒煙のコントレイルを描いた。



ドォン ドカァァァ ドカァンン



そして、複数の爆発音が反響



道路へ着弾すると共にアスファルトが広範囲に剥がれて舞い、感染者、ゾンビのししむらが乱離骨灰した。



山口「次弾 装填よーい」



そして新たな誘導弾が交換、各実射機の筒へと装填されていく



煙りや粉塵が遍満する高速道の事変に



山口「次砲 発射 よーい!……てぇー」



バシュュュ バシュュュ バシュュュ



一斉にMMATから2発目が発射された。



感染者の体熱と光波レーザーに導かれ、再度ミサイルが地表へと突き刺さる



そして各所で新たな爆発が巻き起こった。



ドカァァァ ドカァァァ ドカァンン



山口「マルヒト ヒトロク ヒトナナ小銃班 前へ 撃ち方用意後 待機」



濃霧に似た濃い煙りに覆われ視界が遮られる中



一間の静寂に山口が辺りを見渡し視察するや



バタバタバタバタバタバタ



遠くから羽音が聞こえてきた。



幾つも聞こえるヘリローターの音



山口を含む周りの隊員等が上空を見上げた。



「なんだ?」



「ヘリの音…?応援か…?」



すると1人の隊員が山口の元へと駆け寄ってきた。



「一尉 只今本部からの伝令で、ブラックホーク4機がやって来ます」



山口「ブラックホーク?」



「はい これより航空援護態勢に入るとの事です それと本部、ブラックホークからの作戦の連絡が入ってきました」



「これからブラックホークが積むコンポジション3を使い、奴等の行進中央にC3を投下 奴等の戦力を分断させるとの事です」 



山口「分断?どうやって?」



「はい… ここから約1100メートル先に小さな高架橋があるそうです…その箇所を破壊し、後続の進路を遮断する事が出来るみたいです… そこを破壊すれば大幅に数が減らせます」



山口「橋を破壊するか… いくつになる?」



「成功すればおよそ6000~7000です そこを分断させ、空陸連携で一気に奴等を叩けとの事です」



数秒間の間を空けた後



山口「分かった… 了解したと本部に伝えろ」



「ハッ」



徐々に濃煙が晴れ、視界がひらけてきた



山口が隊員等にこれから行われる作戦の概要を説明する。



この防壁を下り



4機のブラックホークと地上部隊による殲滅作戦が行われる。



これからこの中央自動車道でゾンビ狩りの電撃戦が始まる…



山口「…以上だ 不足は命取りになる、マガジン、手榴弾、擲弾は各自必要以上に装備しとけ」



そして、煙りが薄れ山口が前方へ目を向けた時だ



山口の目にある光景が映った。



山口「…」



他の隊員等も目撃する光景…



手足は勿論の事…



タンクバスターの砲撃を受けた群れに…



頭部の無い感染者やゾンビ共が動き、ノソノソとこちらへ歩む光景だった



「おい… 首が無いのに…どうして?」



目を疑うその光景に…



「まじかよ…?何かの間違いだろ…」



「頭部が弱点じゃないのかよ?話しが違ぇーぞ…」



動揺する前線の隊員達



当然動かない死体もあるが



動き出す死体もあった



クレーターから手首の無い腕が見られ、這い上がる死体は胸部から上が欠損していた。



にも関わらずそんな状態でも活動する奴等…



それを目の当たりにした山口の顔は青ざめた。



そんな中…



最悪な情報が舞い込んで来た



1人の隊員が慌てて山口の元へ近寄り



「隊長 今さっき東本部から連絡が入りまして… 東名自動車道及び関越自動車道の第1防衛ラインが…」



「奴等に突破されました…」

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