第159話 再活

球体の開口部が広がり、何十本もの収束された糸



その集合物が連なり、1本の太い糸となりて…



クラスターと化す鋼糸の束が特異感染者目掛け発射された。



複合エネルギーが蓄積された糸



触れれば細胞など一瞬で焼き尽くすエントロピーの詰まった一撃必殺



まるで魔貫光殺砲の様な一点集中型のメガカノン砲が高速で目標へと放たれた。



小さな球体にどんだけ糸を収納するスペースがあるんですか?



とか…電気、熱、振動を生み出す装置がどうやったらそんな小さな球体に入るんですか?



そう質問されたら… それは野暮です



そうゆう事にしといて下さい的特殊武器



その球体から延びる一線の糸が見事に目標体の口を捕らえ、入り込み、貫いた。



まともに喰らった特異感染者



糸砲がそのまま後頭部を貫通して行く。



そして…



その直後 鎖骨部から上…



上部が跡形も無く消滅



首付け根から上が木っ端みじんに消除された特異者



首無しの特異感染者は後ろへと弾き飛ばされた。



一方… メインホールでは…



エレナに突き付けた拳銃



エレナもショットガンで理沙の顔面を狙っている。



1本の触手が銃を握り、もう1本の触手が引き金に添えられている。



更にもう1本の触手にリボルバーの撃鉄が押され、薬室が動いた。



いつでも放てる状態



そんな銃を突きつけられるが、エレナの表情は変わらない



瞬き1つせずに理沙を見据えていた。



撃つなら撃て…



あんたを連れてけるなら構わない…



エレナの眼から相討ちも辞さない、己の死さえ恐れない強固な覚悟が感じられた。



エレナと理沙の間に数秒の沈黙が流れ、互いに視線が交わされた。



牽制し合う両者



すると



理沙が押し当てる銃口をおもむろに上げた。



理沙「フフ… これから吟味すのにここ撃っちゃったら味が悪くなっちゃうじゃない」



エレナ「…」



理沙「それに凄い気迫ね… エレナ…あなたみたいな人間がいるなんて驚いた 死の恐怖が全く伝わってこないだもん ホント驚いちゃう」



エレナ「あんたを道連れに出来るなら安いだけ 私の命と引き換えに頭吹っ飛ばしてあげるわ それであんたも終わりよ… 理沙」



理沙「キャハハハハ 益々気に入ったぁ~ でも…頭吹き飛ばされちゃうと今後大好きなお肉が食べれなくなっちゃうのは困るなぁ~」



今後…?



エレナ「永遠にでしょ」



理沙「少しの時間だけよ もしかして頭吹き飛ばせば理沙が死ぬと思ってぇ?」



エレナ「えぇ」



理沙「確かに脳味噌潰されちゃうと命令が出来なくなっちって大半は動かせなくなっちゃうんだけどねぇ~でもねぇ~ 甘い甘い、稀~に あるんだよ…脳を介してないのに…まあ あれを見てみなよ」



理沙が2階通路へと顔を向け顎で差し示した。



エレナも視線を2階へと上げた。



そして…



エレナのその眼には…



芹沢「おい…おい…」



愕然とする芹沢の姿と



芹沢の視線の先に映る奴の姿…



長身なる特異感染者が立ち上がり、当たり前の如く仁王立ちしていた。



馬鹿な… とっておきの秘奥義を喰らった筈だぞ…



頭を吹き飛ばされたのに… どうして…?



最たる計略で見事に勝利を勝ち取ったのだが…



勝利の余韻に浸る間も無く



動き出す特異者に芹沢は混乱した。



首無しの特異者が普通に起き上がり、普通に復活を遂げているからだ



どうなってんだ…?



ダラリと垂れた触手等が一斉に再起動をおこし



ユラユラと揺らめき始める白い触手群



特異者が一歩を踏み出し、活動が再開された。



それを目視したエレナ、またハサウェイ、純や、由美、矢口も通路の首無し特異者を視野に入れた。



矢口「どうなってんです…あれ…?」



ハサウェイ「…」



純や「首が無いのに動いてるよ…」



不可思議な光景に一同驚愕した。



その時だ



ハサウェイにある記憶が蘇った。



数時間前に起こったあの記憶



渋谷組の襲撃を受け、エレナが攫われるちょっと前に目撃したあれを…



ハサウェイ「なぁ… 実は… 数時間前にあれと似た様な光景を目にした事がある…」



矢口がハサウェイへ目を向けると



ハサウェイ「あれよりも更に奇妙だったんだが… そいつは下半身だけで動いてたんだ」



矢口「え?」



ハサウェイ「信じられないだろうけど…腰から上が無かったよ その状態で歩いてた」



純や「どうゆう事?」



ハサウェイ「何かの見間違いだと思うだろうけど…この目で確かに見た それは死後の反射運動とは違う…しっかりした生き体の動き 下半身のみで歩いてたんだよ」



純や「頭が弱点の筈じゃないの?…違うの?いや…でもやっぱおかしい…現に今まで奴等の頭を潰して倒してきた訳だし…」



ハサウェイ「あぁ… おまえの言う通りだ 1体や2体の話しじゃない…俺達は今までに何百体もそれで狩ってきた… 今まで100%そんな復活などありえなかった」



純や「ならなんで…?あんなのアリっすか…」



由美「でも…それ…もしかするとありえるかもです…」



純や「え?」



由美「よしたかさんや羽月さんの例があります…あの時そうだった様に…脳を破壊しても動く事はあるんじゃないでしょうか…」



ハサウェイが由美へと振り返った。



矢口「頭を破壊したのに?」



由美「えぇ、よしたかさんの件で言うなら、ゾンビ化を食い止める為、苦渋の選択で葛藤さんが手を下した筈です…あの時…確実に額への銃穴が見られました…」



純や「そうだよ…よしたかくんは明らかに頭を吹き飛ばされてた、羽月さんだってナイフを突き刺されたままだった…なのにゾンビとして蘇った…」



ハサウェイが純やと由美へ交互に視線を向けた。



確かに確かだ…



2人の言う通り…よしたかは葛藤によって頭を撃たれて死んだ…



羽月さんて言う警備員さんにしろ深々とナイフが突き刺された状態で蘇生した…



どちらも脳に多大な損傷を受け、絶命した筈だ…



…にも関わらず、ゾンビとして復活を遂げた…



ハサウェイ「それも確かにだな…」



矢口「脳を壊しても動くんじゃ…じゃあ奴等は不死身だと?」



ハサウェイ「いや…それは無い!全部が全部そうじゃない事は明らかだよ」



矢口「なら…そうゆう奴もいるって事ですか…?」



頷くハサウェイ



ハサウェイ「もしくわ 変わった…」



矢口「え?」



純や「おいおい…奴等の寄生は一体どんなメカニズムになってんだよ…」

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