第101話 父親

カンカンカンカンカンカン



遮断機の降りた踏切で電車の通過を待つ



チロリン すると道の携帯にあらたなlineが入ってきた。



ポケットから携帯を取り出し目にするとそれは玲奈から



(今、自分の部屋にいる お父さんが訳分からない事言いながら怒鳴っててドアを壊そうとしてる お母さん大丈夫かな 怖い 怖い 早くきて )



チロリン するともう一通



(お父さん絶対おかしい…庭の物置から上がって来て)



道は携帯を仕舞うと、少し苛立ちながら電車の通過を待った。



玲奈の家は、この踏切を越え200メートル先にある郵便局を右折した閑静な住宅街の中にある



カンカンカンカンカンカン



飲んだ帰りなのか…携帯をいじる女子大生らしき女性が1人



また自転車に跨がるおじさん



そして、同じく自転車に跨がり通過を待つ道の3人のみが踏切で待機していた。



カンカンカンカンカンカン



早くしろ…



上下線共に電車がやってきて踏切を通過



lineの文字のみで十二分に脅えた玲奈の様子が伺える。



でも…お父さんがおかしいって…



どうゆう事だ…?



そして、電車が通過し遮断機があがった。



道は他の待機する2人よりも素早くスタートダッシュで自転車を走らせ踏切を通過



もうちょっとしたら日付が変わる深更に、静まり返る道路をライトも点けずに自転車を走らせた。



猛進する自転車が目印となる郵便局へ差し掛かるや、ブレーキもかけずに右折、玲奈の家の前で急ブレーキをかけ停止させた。



道はそのまま自転車を乗り捨て、既に開かれた門をダッシュ、玄関前でピタリと足を止めた。



お父さんが意味不明な言葉で怒鳴っている…



玲奈から送られてきたlineの内容で普通じゃない事は分かる…



玄関に耳を付け、聞き耳をたてて中の様子を探った。



内容までは聞き取れないが…



微かだが 確かに2階から聞こえてくるお父さんらしき男性の怒鳴り声がする



この怒鳴り声が… 玲奈の父親のものか…



道は恐る恐る玄関のドアノブを握り、捻ってみるや…



鍵は掛かっておらず、玄関の扉が開いた。



そしてそぉーと扉を開けた。



開いた扉からゆっくり中へ入り、耳を澄ますとたちまち2階から…



確かな怒鳴り声が聞こえてきた。



「こんな夜遅くまで何処へ行ってたんだ? またあの男と…ピーピーーーしまくりやがってたのか…? 税率が上がる事をどう思ってるんだ?朝までどこにいた? タバコ税で20円上がる事をユーはどうシンクしてるんだ?こんな夜遅くまで…」



木製のドアをバンバン叩きながら、何度も何度も繰り返し怒鳴り散らす父親の声



本当におかしいと感じられる言動…



聞く限り確かに普通じゃない…



このまま階段を上がれば父親と接触する



やはり外から



道は静かに扉を閉め、庭へ廻ると鉢植えの並んだ棚を伝い物置の屋根へと上がり始めた。



何だ今の… 絶対にマトモじゃないぞ…



物置の屋根から玲奈の部屋のベランダへは容易に跳び移れる。



道は物置の屋根に上がるや、助走をつけ、心の中で数えた。



1……2……の3



そしてベランダへと飛び移った道が素早く手すりを飛び越え、玲奈の部屋の窓を開けた。



窓を開けた途端、涙を流し、怯える玲奈がいた?



玲奈は震える身体で道に抱きついてきた。



道「玲奈 大丈夫か?それより…何が…あれは一体…?」



ドンドンドンドン



「…タバコ税が20円上がる事…youはどうthinkしてるんだ…?」



玲奈「分からない… 家着いてただいまって言った途端 突然訳分からない事言い出して…キチガイみたいに詰め寄ってきたから自分の部屋に逃げ込んだの… お父さん絶対変だよ…どうしたらいいの?」



道「お母さんは?」



玲奈「わかんない どうしよう…」



道「とりあえず…警察に電話しよう」



道が携帯を取り出し110番した。



するとドン っと大きな音と共に木製ドアの何かが壊れる音がした。



ギョッとする2人



道の腕にしがみつき怯える玲奈と、ドアを目にしながらコール音を待つ道



ドン ドン ドン



ドアを叩く力が徐々に強まっている。



焦りを強める道に…



玲奈「絶対そこにいるの私のお父さんじゃない…」



誰がどう見ても普通じゃないのは分かる…



じつの父親とはいえ この扉の先にいる者は確実に危険な存在



玲奈に危害をくわえる恐れがあった。



「はい こちら警視庁110番です。どうされましたか?事件ですか?事故ですか?」



繋がった…



道「事件? そうです事件です。今襲われそうなんだ すぐに…すぐに助けに来て下さい」



「事件ですね それはいつですか?場所はどちらですか?」



道「今です… 今この場でです…住所は文京区目白台… 玲奈 ここの番地は?」



玲奈「3の22の10」



ドンドン ドンドン



道「目白台3ー22ー10です とりあえず… とりあえず早く来てくれ」



「落ち着いて下さい 正確な情報を教えて下さいますか 犯人らしき人物は今そこにいますか?」



道「います 今扉の先にいる」



ドンドン ドンドン



「犯人に刃物及び凶器の所持はありますか?」



道「分からない… 多分凶器は無いと思います… でもドアをぶち破ろうとしている…」



「分かりました 怪我人はいらっしゃいますか?」



道「今の所いない でも早く… 早く早く とりあえず至急来て下さい」



「分かりました 至急 付近巡回の警察官をそちらへ向かわせますので 落ち着いてその場で待機してて下さい」



道は携帯を切った。



道「すぐに警察が来る」



ドンドン ドンドン ドンドン



道は玲奈の部屋を見渡した。



何か武器になる物は無いか…



見渡す限り何も無い…



道「玲奈 何か武器になる物はないか?」



玲奈は何か無いか探すと押し入れから1本のつっかえ棒を取り出してきた。



玲奈「道くん…これしかない…」



つっかえ棒…?



まぁ… 何もないよりはましかぁ



道はつっかえ棒を手にし構えた。



ドンドン ドンドン バキッ



木製のドアが軋み、一筋の亀裂が生じはじめた。



ヤバい… じき破られる…



早く来てくれ… 早く早く早く…



玲奈「お父さんどうしちゃったの…? 怖いよ…」



道の身体に震えながらしがみつき涙を流す玲奈



道「…」



玲奈のじつの父親が今… キチガイになってこの部屋へ侵入しようと暴れている状況



玲奈に投げ掛ける言葉など見つからなかった…



それどころか自分も今、恐怖で足が竦んでいる。



ドンドンドンドンドンドン



また新たな亀裂が生じた。



そして、突如 ドアの一部がブチ破られ、父親の拳が部屋へと現れた。



玲奈「キァアアア」



玲奈の悲鳴があがった。



道は驚きと恐怖でパニックになり部屋を後退した。



どうする…?



警察が来る前にこのドアが破られる…



こいつで戦う…?



玲奈を連れて今すぐこの窓から逃げるべきか…?



それともドアを押さえて警察の到着を待つか…?



軽い錯乱状態で3つの選択肢を迫られるハサウェイがふと窓へ視線を向けた時だ



パトカーの警光灯の明かりが見えてきた。



道「玲奈 見ろパトカーだ」



道と玲奈は窓に張り付き外を見るや



1台のパトカーがやってきた。



助かった…



一瞬、安心した道がドアへ視線を向けるや、もう1発ドアがブチ抜かれ拳が飛び出してきた。



バコン 



玲奈「いやぁぁぁ」



道「うわぁぁぁあ」



そして…その飛び出してきた手がドアノブに伸び、鍵が開けられた。


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