第4話 掃射
時計回りに高速回転した矢が先頭を走る感染者の口内へと突き刺さった。
後頭部から黒ずんだ血液と共に矢の先端が飛び出し、感染者の体はスピードと衝撃で後方に飛ばされ…倒れた。
そしてピクリとも動かぬ屍と化した。
ハサウェイは次いでお手製の筒から3本同時に矢を抜き取った。
筒の中には純正の弓矢の他、木製の棒に刃物を取り付けた手作りの矢がぎっしり詰められており
手慣れた手つきでそれをセット、片目を瞑り、標的へとロックオン
そして第2矢を放射した。
空を切り裂く一筋の弓矢が瞬速で目標体へ到達
ニ体目感染者の右眉毛付近に突き刺さった。
大袈裟と思える程体を捻らせ、感染者は回転しながら後方に吹き飛んで行く
そのニ体目も白眼を剥き動きを止めていた…
ハサウェイは、親指と人差し指に挟む矢を瞬きする間に装填すると、次の目標体に狙いを定めた。
20メートル先から2体の感染者が並行して迫って来る…
まずは右方標的体へ矢を解き放った。
発射された矢は、感染者の左肩へ被射、走行する右方感染者は転倒する。
ハサウェイは口にくわえた矢をセットし、次いで左方感染者に向け矢を発射、見事眉間を捕らえ、見事に動きを封じた。
先程転倒した感染者を追い抜き、また一体が迫り来る。
倒れた感染者も理解不能な言葉を発しながら立ち上がり、再び走り始めた…
エレナが照らすライトの光は30メートル先まで届いている…
その光の中に… 一体… また一体…また一体と姿が照らし出される…
荒げた狂人の叫び声が地下トンネル内に響き渡り、血肉を求めながらこちらへ向かって襲いかかってくる。
エレナは襲いかかって来る屍鬼の集団に恐怖で足がすくんだ。
自分はその場で立ちすくみ…
ただライトを正面に向ける事しか出来ない…
体が震え何もする事が出来ない…この場から逃げる事も…奴等と戦う事も…
ただこの場でこの人達に命運を託す他なかった…
愛犬がエレナの足元で怯える様に奴等を威嚇していた。
純やも迫り来る感染者へ何度も視線を送りながら力強い強打で必死に破壊活動を行っている。
洋弓から繰り出された矢が感染者の額へねじ込まれ、突き刺さった身体が崩れ落ち、倒れる。
肩に矢が刺さる感染者が差し迫ってきた…
ハサウェイはこんな局面にも関わらず落ち着いた表情で手際良く矢をセットアップするや、冷静に狙いを定め、放出した。
解き放たれた矢が額目指し飛んで行く中…
感染者が的中寸前に一瞬首を横にズラし…
矢が外れた…
ハサウェイは一瞬目を疑った。
避けた…? まさかな…
暗がりだし眼の錯覚だろう…
奴等に避けるなどの芸当…
出来る筈が無いんだ…
きっと手元が狂い外しただけだろう…
そう思い込んだのだが
やはり、避けた様に見えた。
一瞬の動揺を隠せぬハサウェイは、矢のセッティングが遅れてしまう
すると この一瞬の遅れで瞬く間に感染者が間を詰めわずか5メートルまで接近してきた。
肩に矢の刺さった感染者が大きく口を開き食らいつこうと飛びかかってきた
その時
側面から感染者の喉元にアーミーナイフが食い込み、次に包丁が頬へと突き刺された。
ブシャー
そのまま2つの刃が振り抜かれ喉と頬が切り裂かれる
深くえぐられ裂かれた首から大量の血液が出ると同時に感染者の胸部に強烈な足蹴が入れられた。
感染者は地面に倒れ込み身体をピクピク反応を示すがもう行動不能のようだ
江藤「危ない… どうしたんです?どんどん撃ち落として下さい」
ハサウェイはすぐに平常心を取り戻し次々と矢を放っていった…
一体… もう一体と射抜かれし感染者の屍が増えていくが…
引き換えに次から次へと暗闇の中から奴等は現れてくる…
ハサウェイ「まだ来るか… やっぱキリないな…」
暗闇の中から複数の声や足音が近づいて来る。
そして8体同時に感染者が姿を現し、全速力でこちらに向かって来た。
傷付いてない綺麗な身体の女感染者、腐りかけの感染者、両腕が欠損する感染者、片足が無くピョンピョン跳ねながら向かって来る感染者、頭部4分の1が欠落する感染者
様々な状態の感染者達が一斉に4人の瞳に映された。
ハサウェイは引き続きアーチェリー弓を構えながら口にする。
ハサウェイ「純や!まだか?」
ガン ガンガンガン
純や「もうちょいです」
渾身の打撃でそろそろドアノブが壊れそうだ
その間ハサウェイは再び掃射した。
照らされてるにしてもかなり暗がりな地下中
そんな視界の悪い場所でこの早業な手つき
しかも的確に的へと的中させ奴等の行動力は完璧に無力化されている
エレナがふと辺りを見渡すや10メートル付近でほぼ奴等を撃ち落としてる事に気づいた。
こんな一斉に襲い来る奴等を…
こんなの見た事無い…
凄過ぎる…
その時 ドアノブの外れる音がした。
純や「よし 壊れた」
ハサウェイ「江藤 おまえライターとか持ってるか?電気が点くか分からない… 純やと一緒に行ってハシゴを探してきてくれ その間ここは俺が食い止めとくから 速攻で頼む」
純や「ライターなら俺が持ってる!行くぞ江藤」
江藤は頷き純やと共に中へ入って行った。
ハサウェイは会話しながらも8体目を射抜き終え、筒からもう2~3本抜き取った。
ハサウェイ「エレナさん 怖いだろうけどライト頼むね」
エレナは頷きライトを照らし続けた。
恐怖心ですぐにでもここから離れたい…
だが 同時にそして同等にハサウェイによる洋弓のハイレベルなスキル
またハサウェイが見せる冷静な表情
それを見せつけられ…
この人がいれば絶対助かる!
そんな微かな安心感が湧き上がり、それに包まれていた。
眉間にグサリと刺さり射抜かれた感染者が目を開けたまま地面に倒された。
かれこれ25体以上は倒しただろう…
ついに走る者の存在が潰えたのか?
向かって来る恐ろしいランナーの姿がいなくなった。
だが… 代わりに…
今度は暗闇の中からぎこちなく、ヨロヨロとゆっくりした足取りで歩行する大量のゾンビ共が姿を現しはじめた。
遅れてやってきたゾンビの大群は少なく見積もっても軽く50体以上はいると思われる…
ハサウェイ「今度はノロノロのお出ましかぁ… まあ あの数がランナーじゃないだけましかだなぁ」
低い声でうなりながらゆっくり近づいて来るゾンビを目に
ハサウェイ「あんなトロ臭い奴等相手にするだけ矢の無駄だから俺達も行こう」
エレナは頷いた。
そして愛犬を連れ2人は純や等の後を追い、中へと入って行った。
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