第2話 戦慄
暗闇の中、穴から一匹の鼠が姿を現した。
辺りをくまなく徘徊している最中、気配を察知したのか…鼠は急いで穴へと隠れ消えた。
その数秒後
暗闇の中から一つの明かりが現れ、その先に照らされた電車のレールが映し出された。
真っ暗な地下鉄の線路をエレナと三人の男達そして一匹の犬が歩んでいた。
エレナ「あの…これから何処へ行くんですか…?」
ハサウェイが小声で答えた
ハサウェイ「ここを通って 家だよ… 地上はもう奴等でウジャウジャしているから」
そして急にライトの明かりがエレナの顔を照らし、バットを手にした男が驚かす口調で口にした。
純や「バァ! っとそこから奴等が飛び出してくるかもしれないから油断は禁物だよ 気を付けてね」
エレナの驚く表情を目にしながら
純や「自己紹介申し遅れました。俺は純やです。 よろしくね」
エレナは明かりの眩しさに眼を細めながら会釈した。
エレナ「エレナです 宜しく…お願いします…」
そう口にした。
また隣で両手に刃物を握り締める男が純やを注意した。
「ねえ 純や君! ちょっと声でかいよ… 大声出すとまた駅員やら作業員やらのあいつらが来ちゃうからもうちょっとトーン落としてよ… まあ少数ぐらいなら来たら来たで殺るからいいんだけどさ…」
エレナ「…」
ハサウェイ「そうだぞ 純や!江藤の言う通りだ 5日前の浅野さん達みたいにこんな暗闇の中で囲まれて全滅なんて御免だからな 俺みたいに小声で話せよ」
純や「あ~ はいはいはい すいませんでした。分かりましたよ ところでエレナさんは何故あんな所に?」
エレナ「え? あ~ 偶然です あいつらからただ闇雲に逃げ回ってて… 気付いたらこの新宿に辿り着いてたんです… それで…あそこでガソリンが無くなってしまって…立ち往生してしまって」
純や「ふ~んなるほど そっか それで奴等に襲われそうになってた所を偶然居合わせた俺等に救われたって訳だね」
エレナ「その通りです ホントありがとうございました」
江藤「エレナさんは奴等の事どれくらいまで把握してるの?」
エレナ「え? 全然です ほとんど分かりません… しいて言うなら噛まれるとゾンビになっちゃう事ぐらいかな… あ! それと前にラジオで聞いたんですが ウイルスの専門家みたいな人が噛まれてから約6時間以内にゾンビになるから気をつけろとかどうとかって言ってた気がします」
純や「6時間ねぇ~ 実際そんなにもたないなぁ~」
エレナ「え?」
ハサウェイ「当然個人差はあるけど実際はもっと早くて1時間から2時間が限度って所だな」
江藤「そうですね 噛まれてから2~3分って人もいますし」
エレナ「そんなに早いんですか…」
純や「変化の時間は噛まれた箇所によっても変わるし、へたしたらさっき江藤が言ってたように噛まれてものの数分で変化する場合もあるからね… 非常に厄介だよ」
エレナ「何で…?どうして噛まれただけであんな姿になってしまうんです? 原因は何なんですか?」
ハサウェイ「う~ん 分からない…実はまだ全てが不明なんだ… 一応厚生労働省の発表では未知のウイルスが原因なんじゃないかと言われてるんだけど公式発表で無いんでね…国内の医療、研究機関が全て壊滅したと言われてて未だ原因究明されて無いのが現状だよ」
ハサウェイ「だから… 一概には言えないんだけど噛まれた時その傷口からウイルスが体内に侵入するとかしないとか…そんな噂があるね」
エレナ「…」
ハサウェイ「これはあくまで感染者の例で死体が蘇る事については皆目見当がつかない… まあどちらにせよウイルスの仕業だと俺は思ってる」
エレナ「ウイルスですか…」
ハサウェイ「こんな事が…どうやら世界各国同時多発したらしく、どこぞの組織による細菌テロって噂もあるし、これは自然発生したんじゃないかって噂もある… いかんせん同時多発でこの感染スピードの早さだ 政府がジタバタこまねいてる間に、対策を練る間も与えぬ爆発的感染力、全てが後手後手に回って今ではこの救いようの無い有り様だよ」
純や「これはホントかどうかわからんけど 食物連鎖の頂点にいながら人の数が増え過ぎてるから摂理やバランスを直す為に自然界が調整に入ったとか それで数を減らす為に新種のウイルスを送り込んできたんじゃないかって噂が流れてるんだ」
江藤「それは非現実的すぎるよ」
純や「まぁ そうゆう説もあるって事だ」
ハサウェイ「確かに純やの言った通りそれも一理ある エレナさん!それともう一つ知っておいて欲しい事があるんだけど、奴等は俺達 人間を見つけると狂った様に追いかけてくる… だけど なら餌となる人がいない間はどうしてると思う?」
エレナ「どうしてるって… う~ん そのへんウロウロさまよってるだげなんじゃないかな あても無くただ歩き回ってるとか」
ハサウェイ「勿論それもある、だけど実は少し違うんだ 奴等は獲物がいない間は生前行っていた生活習慣行動やら思い入れの強い行動を繰り返し行い始めるんだ」
エレナ「生活習慣行動ってどうゆう事ですか?」
ハサウェイ「例えば毎朝6時に起きて1時間のジョギングを行ってた奴がいるとしよう そいつは毎日決まった時間に決まったコースを走り出す つまり身体に染み付いた反復行動を行い始めるんだ それは打ち込んでたスポーツだったり趣味だったり、仕事だったり… さまざまだよ 人間だった時の習慣的な疑似行動を繰り返し行い始める… 身体に擦り込まれてるからなのか? 本能で行っているのか?そこまでは分からないけど」
純や「奴等は夜になれば寝たりもするしね いびきだってかくし 集団でアホ面の雁首揃えてボォーと突っ立ってたりするし、知能はからっきし無いけど人間らしさは少しでも保ちたいようだね」
ハサウェイ「地下鉄の線路なんて普通一般人は入らないでしょ だから上がヤバい場合徒歩で移動するなら地上よりこちらの方が断然安全なんだ ただし点検作業員のゾンビとか駅職員ゾンビに出くわす事もあるから油断は出来ないけどね それに駅のホームは危険だ」
純や「そういえば今何時?」
江藤が腕時計に明かりを灯しながら
江藤「9時ちょい過ぎ… まずいね…」
純や「ハサウェイさんそろそろ駅のホームに到着しますよ 今… 朝の通勤ラッシュ真っ只中の時間帯ですね どうします? 深夜になるまでここに待機ですか?」
ハサウェイ「ちなみに今日何曜日だ?」
純や「確か日曜日です」
ハサウェイ「一応休日か… エレナさんもいるしこんな所でいつまでも待てない… これから江藤と2人で様子を見て来るから2人はここでちょっと待っててくれ」
純や「まじ今回はエレナさんもいるし、後一駅分距離もありますから絶対気付かれないようお願いしますよ」
ハサウェイは軽く頷き、肩に掛けられたアーチェリー競技用の折り畳み式コンパウンドボウ(洋弓)を広げ手に取った。
そして江藤と2人ライト無しの真っ暗闇の中を歩行
すると50メートル先のホームに取り付けられた非常灯の微かな光が見えてきた。
2人は足音を殺しながら慎重に近づいて行く
緊張が走りハサウェイの心臓の鼓動も速まる中
2人は駅ホームの先端へと到着
身を屈めながらハサウェイがゆっくりと陰からホームの様子を伺った。
次いで江藤もゆっくりと顔を覗かせた。
その瞬間
辺りを見渡す2人の瞳孔が大きく見開き、2人は戦慄した。
なぜなら
非常灯のわずかな灯りに照らされ映し出されていたのは大量に存在するあの死者達の姿だったのだから
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