第一四章『終章』

【第一四章『終章』】


〈1月2日 13:30 オルカ号甲板〉


 昼食を食べ終わり、甲板で休むウォーレンはメディアの電子版に目を通していた。


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2018年1月2日付 ワシントン・ジャーナル

『中国の海洋拠点、永興島で謎の爆発』


 中国現地時間で1月1日午後10時、アメリカ東部標準時間で午前9時ごろ、西沙諸島にある永興島で大きな爆発が発生した。中国の政府広報は今朝、詳細は調査中であるが港のガソリンスタンドが何らかの原因で爆発したものと思われ、死者を含む負傷者の人数は不明だと発表した。

 この島は中国が進める海洋進出の南シナ海における拠点として数年前から開発と軍事基地化が進み、実質的にはこの海域の中国による実効支配が行われていた。さらに中国がこの島に核装備の潜水艦を配備した場合、米国本土がその射程圏内に入る可能性があるとして注目を集めてきた場所でもあった。

 島の住民への本紙独自インタビューによればガソリンスタンドの爆発があった後、基地の方から銃声や爆発音が立て続けに聞こえ、最終的に島の半分である基地側が下から突き上げられるような形で爆発したとの証言もあり、今後の事実究明と政府の発表が注目される。

 

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 記事を読んで思わず笑みが溢れるウォーレンだったが、それもつかの間だった。アンドレがやってくると筋トレを始めたからだ。しかし今後は文句が言えなくなるだろう。なにしろ今回の仕事では彼の筋肉が大いに役立ったのだから。

「レニー、一つだけ聞いてもいいか?」

「なんだ?構わないぞ」

「どうして作戦名が『聖杯』だったんだ?」

「あぁ、その事か。気にするな、大した理由は無いよ」

「それでも理由がなにかあるんだろ?」

「気にするなって。別に成功したからいいじゃないか。それに今回に限ったことじゃないだろ」

「じゃあ、なにか?今までの作戦名もテキトーに付けたのがあるってのか?」

「そういう事になるな。」

何やらブツブツ言いながらアンドレは向こうへと筋トレをしに行ってしまった。



 一国の軍隊と一線を交えた元日が明けた今日、世間ではまだ新年到来の熱が冷めない中、オルカ号はいつも通り太平洋上を航行しているのだった。

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