出会い

 二人は一生懸命に走った。何時間走っただろうか。

 足も震えていた。まだあの哀しみは、忘れられない。



 それほどあの出来事はおおきかった。

 心の穴がぽっかりと空いたようだった。それほど父親の存在はおおきかったのだろうか。

 いつも必要最低限のことしか喋らないのに。心の奥底では大事に思っていたのだろうか…

 それでも走り続けた。生きる為に。父の「死」を無駄にしないために…





  すると大きな物体から光線らしきものが発射された。

 その光線は、地面に吸い込まれるように勢いよく当たった。


  当たったところは一瞬にしてドロドロに溶けた。まるでマグマみたいだ。

 そして地面にあった瓦礫や岩などの物がつぎつぎに浮かび、横の部分にくっついっていった。くっついたところは次第に変化していき地面みたいに一体化した。


 その後も次第に大きくなり以前の1.5倍ほどの大きさになった。




 これは、なんだ。ただの殺戮兵器じゃないか。地獄のようだった。

 そんな地獄から逃げるように走った。でもそんな現実を受け入れなければならない。

 必死に走った。




 地面には瓦礫などは、残っておらずきれいになっていた。

 ただ、人の死体ばかりがそこら中に転がっていた。


 伶奈はこんなの耐えられない、と思ったのか目を瞑り拓真の手を握った。

 伶奈の手は冷たかった。体力的にも限界が近づいてきているのだろうか。

 ただひたすらに走った。もう考えることはできず、ただ走ることしかできなかった。















 何時間走っただろうか。辺りは薄暗く静まり返っていた。

 もう自分達以外に人影は見当たらない。



 上空にあったおおきな物体はまだあった。


 何時間も走ったのにもかかわらずまだいる。

 このままだと他の地域の人々に被害が出る。しかし自分達に何ができる?

 何もできない自分に腹を立てた。

 でも今は生きなければならない。

 もう一度辺りを見渡していると楕円形の建物があった。

 見るからに頑丈そうでここなら匿ってくれるかもしれない。

 そう思い行った。



 入り口付近に人は立っておらずシーンとしていた。

 こんな状況でも雀の鳴き声は聞こえていた。しかし今はそんなことも嬉しい。

 自分達以外にもいる。たとえそれが雀でも…



 中に入ってみてみると、受付のような場所に来た。

 人影は見当たらない。



「…あの、誰かいませんか…」



 か細い声だった。それでも誰かいる。希望のようなものを抱いた。


 待っていると奥から人が出て来た。



「生きてたのねうふふふ。何か用かい? 私は武田英治だ。おぉ君達はいったい…・:*+.\(( °ω° ))/.:+」


「僕のほうは高城拓真でこっちは、妹の伶奈です」


 伶奈はぺこりと頭を下げた。


「あのそれよりも何か食べるものをいただけませんか

  実はずっと何も食べてなくてお腹が空いているんです。」


「そうか、そうかいいぞ。もちのロンだよ。君達以外にここに来たひとはいないんだからね

  今から食堂に案内するからついて来て(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾」


 案内された場所は広くたくさんの人で賑わっていた。


 席に座ると久しぶりの食をとった。

 いつも何げに食べているごはんも粒一つ一つが甘く美味しかった。

 無我夢中で食べた。美味しい。美味しい。

 久しぶりのごはんのせいかいつもより美味しく感じられた。


「あの、ありがとうございます。食べさせてくれて。とっても美味しかったです。」


「いや、感謝されるようなことは何もしてないよ。君達がお腹を空かせていたから食べさせた。

  ただそれだけのことだよ。人として当たり前のことをしたまでさ!o(`ω´ )o」


 よかった。本当に良かった。



「もう疲れているから。早く寝なさい。部屋は準備してあるから。( ´ ▽ ` )」








 用意された部屋は生活ができる設備はととのっていたが風景は地味だ。


 家のと比較して見るとやはり殺風景だ。

 生活できる設備といったが「冷蔵庫」、「風呂」、「テレビ」しかない。

 電子レンジもないので少し不便だ。

 しかし食べ物に寝る部屋も用意しているので贅沢は言えない。


 テレビをつけてみると各局で空に浮かぶ物体のことで持ちきりだった。

 NhKでもニュースをやっておりニュース以外はドキュメンタリーしかなかった。

 どれでも同じようなので適当なものをつけてみた。



「速報です。山形県、村上市、村上町に数時間前から空に巨大な 物体が浮かんでいる、

  との情報が入りました。 ある大学のH・K教授はこれは何らかの新種の生物だと言うことですがどう思いますか上田さん」


「そうですか。その可能性もありますね。私はあの物体を〈街〉だと思うんですよ。あそこには何人もの人が住んでいて生活を送っていると思うんです。」


「街ですか、それじゃあ発射されたあのレーザー光線はいったいなんなのでしょうね。」


「それじゃあ中継が繋がっている神岡さん。そちらの状況を伝えてください。そちらは今どうなっています

  か」


 画面が切り替わり拓真達が住んでいた村上町が映し出される。

 その有様は散々なものだった。

 建物は崩れ川は反乱を起こしていた。


「……はい。こちら村上町にいる神岡です。ご覧ください。状況は悲惨なものになっています。

 建物は崩れ、洪水が起こっています。被害は死者687名 負傷者は1000人以上に上っていると情報がきましたー」


「ありがとうございました。人々の悲しみが胸にきます。

  では次のコーナー《ナニコレ》です」。

 避難所には何人もの人がいるという。

 次のコーナーに切り替わったところでテレビを消して眠りについた。


 目が覚めるとまだ深夜の一時だった。伶奈をみてみるとぐっすり眠っていた。しかし目元は赤くはれていて悲しさが伝わってくる。

 今日のことを思い出してみると本当に現実なのかそう思いたくなる。こんな現実があっていいのか。


 明日起きてみるとあの家でいつも通りの日常に戻れるんじゃないか。そう思いたくなる日だ。

 あの大きな物体はなんなんだ。絶対突き止めやる。そう思いながらもじぶんには何もできない。

 無力だと思う自分がいる。このまま過ごしていっても何も変わらないんじゃないか。


 そんなことを考えているうちに眠ってしまった。
















  (あーこの子達を私のところに招待しよう。面白いことになるか)


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