1 空の街

  20XX年。5月24日。その日はいつも通り。朝起きると朝の日課であるジョギングをしに妹の伶奈と一緒に外にでていった。いつものコースである近所の公園走っていた。緑道はいつ走っても涼しい。しかしその日は、いつもより少し肌寒かった。肌に鳥肌が立つ。

 もう5月だというのに朝はまだ寒い。今日は風が冷たくふいている。


「今日はいつもと何かが違うな」


 と呟いた。伶奈も違和感を感じたのか


「ええ何かが違うわ。でも一体何かしら」


 と首を傾げた。

 すると、だんだん雲行きが怪しくなってきた。雲が集まって行き早朝なのにも関わらず太陽が隠れていった。

 しかし、ことは突然に起こる。


  その時、空から何かが現れた。


「きゃー。なにあれー。UFO?でもそれだとデカすぎる。えーなにあれ!」


 と慌てている伶奈をよそに拓馬は、全く動じていない。


「いやあれUFOじゃねえだろ。あんなでっけえものがあったら街ぐらいじゃね( ;´Д`)」


 もしやあの予感はあたっているのかもしれない。すこし焦っていたがそのことは表情には出さず落ち着きを払った。


「ええ、何でそんなに冷静でいられるのよ、目の前にでっかい何かがあるっていうのに!」


 玲奈はそう言っているが内心すごく焦っている。あの事件をまだひきづっているのだ。

 お母さんが亡くなった、あの事件のせいで…

  ~1年前~

  あの時拓馬と伶奈は、学校にいた。そのとき、拓馬と伶奈は授業を受けていた。その日もいつもと変わらない様子だった。窓から見える海の景色は太陽から差し込む陽で美しく煌めいていた。


「えーこれは¥&@&¥@&&@¥&&@¥で@¥&&@¥&&@@¥&@¥ですねー」


 今は、古典の授業でじぃ先生が意味のわからない言葉をいっていた。


  その時母さんは、バッグからジャガイモを落として追いかけていた。

 じゃがいもが道路で止まったので拾おうとしたときに横からきていたトラックにはねられ学校に連絡が入った。2人は現場に行った。しかしその時には母さんは息絶えていた。トラックに頭から当たり即死だったという。

 その現場を見た瞬間伶奈は、泣き叫んだ。周りの人も悲しそうにしていた。

 この瞬間「死」というものを身近に感じた。

 ただ拓馬だけは、ただ1人泣かず、気持ちを押し殺しているようだった。こんなにあっけなく人の命は散ってしまうのか。あまりにも理不尽な世界だ。

  家に帰っても玲奈は自分の部屋でずっと泣いていた。拓馬は、自分の部屋にこもってずっと考えていた。拓馬は、母が亡くなる前日、母と大喧嘩をした。些細なことで起こったことなのに。いつもなら明日になれば仲直りできたのに。すぐ謝って仲直りできたのに。

  でも、もうその明日は来ない。もう過去には戻れないのだ。そしてその日から拓馬は、人が変わったように泣かずにいた。 どんな恐怖があってもその日以来泣くことはなかった。その母が亡くなった時に泣いてもう泣くことはなかった。

 その日を境に感情を表さなくなった。いや、出せなくなってしまった。

 本当は誰よりも繊細で少しのことで傷ついてしまうのに…

 










 そして今。街ほどの大きさのある物体が、目の前にある。家に急いで帰ってみるとテレビではもうニュースになっていた。


「今現在、山形県 村上市で謎の浮遊物体。通称UFOがいる模様です。いまからそちらにいる相模さんに聞いてみたいと思います。相模さん。そちらの状況はどうなっていますか?」


「はい。こちら村上市の状況を説明いたします。ー」


 とテレビでも大々的にやっていた。

 父が


「これ観たか。この付近にいるそうだ。早く逃げるぞ!」


 と父は急いで支度をしていた。


「早く逃げないと死ぬぞ!」


 と完全にパニック状態だった。こういうときこそ父が中心になり落ち着かせるのに全く頼りない父だ。


「大丈夫だから。まだここに落ちるってまだ決まってないから。でも準備くらいはしといた方がいいと思うよ、落ちるって時にね。」


 自分でもこの状況でこんなに冷静でいられるとは、思いもしなかった。そして3人は、逃げる準備を始めた。数日分の水、食料などを背負った。いざというときに常備しといて良かった。

 ニュースではこの地域全体に避難命令がだされていたがもうテレビがついていなかったので三人は、それに気づかなかった。

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