第85話

 簡単に全体を見るため歩いてみる。


 どうやら各階で行っているギャンブルは変わらないが上の階に行くほどレートが跳ね上がるようだ。


 今いる一階は今の手持ちなら気軽に一日遊んでいられるくらいだが、二階は駆け引きを真剣にしていかないとあっという間にスッカラカンということも有り得る、そして三階は本当の高レート一発当てたら大きいが外した時も大きい。

 ディーラーも上の階に行くほど手練なのだろう。真剣さや雰囲気が上に行くほどに凄みを帯びている。



「まあ今日だけってわけでもないし、一階でギャンブルってどんな感じか掴むか」


 俺はユウヤに提案するとユウヤも同意する。



 ん?先程までそこら辺にいた女性陣がいないぞ?



 辺りを見渡す。



 するとレッドカーペットを軽やかに上がって三階に向かうバカ二人を見つけた。


 俺は全力で止めにいく。


「ちょ〜っと待った!カジノは今日だけじゃない!三階には行くな。せめて二階までにしてくれ」


「真さん、ギャンブルって殺るか殺られるかなんです。そんな遊び半分でやるギャンブルなんてギャンブルじゃないんですよ!」


「お兄さん、言いたいことは分かりました。ただ女には負けちゃダメな戦いだってあるんです」



 頭が痛い。会話が成り立っていない。


 先程上のレートを覗いたら今の手持ちだと出来て一ゲームだ。まだ来たばかりなのに頭おかしいんじゃないか!?いや頭はおかしかったか。


「何言ってるかわからないわ。ならせめていまのチップを倍にしてから挑戦してくれ」


 とりあえずそこまで儲けるのは難しいはずだ。今日中には無理だろう。レートはどうあれギャンブルしてれば、この頭のおかしい二人も考えが落ち着くだろう。



 渋々といった感じでミラとセツナが二階へ戻っていく。




 ふぅ〜。さあってやっと俺も楽しめるな。



 先程いたところに戻り改めてユウヤと一階のトランプを使ったゲームに挑戦することにした。



 .....。





「やった!何とかイーブンに戻せた」


 ユウヤがガッツポーズをしながら夢中で遊んでいる。子供で賭事はどうかとも思ったが保護者として俺もいるし、ここの世界に年齢制限はないので楽しめているならいいだろう。


「お兄ちゃんは、本当になんでもできるね!」


 そう俺はというとかなりの儲けを得ることができている。

 ゲーム自体はポーカーのようなものだったので役さえ覚えればいいだけだったのもある。

 なによりこの世界に来てから、素早さ全振りの速度での戦闘になれてきたお陰か、動体視力が凄いことになっているみたいでカードをシャッフルする際俺は全ての手札を見てから張ることが出来たからだ。

 インチキのような気もするがイカサマをしているわけでもないので勝たせて貰っているわけだ。



 すると後ろから声を掛けられる。


「お二人も楽しんでいるようですね」


 セツナが笑みを浮かべて話しかけてくると


「真さんこれなら文句ないですよね?」


 ドサッとチップの入った袋を前に見せられる。



 元の三倍以上は稼いだのだろう。パンパンに膨れ上がったチップ袋をドヤ顔で見せびらかしてくる。



 ギャンブルの才能ないと思ってたが、意外だったな。言っても無一文で泣きついてくると思っていた。



「凄いじゃないか。なんだかんだいい時間だし、みんな楽しめたようだし、今日は帰ろうか」


 俺はそう言って席を立つ.....っと。



 ミラとセツナはもっっっっっのすごい顔でずり寄ってくる。


「「いまからです!何言ってるんですか?頭おかしいんですか」」


「頭おかしいのは君達だからね」


 即答して答える。せっかく大勝しているのにさらにリスクを冒す必要がどこにある!?


 すると──



(アイシクルプリズンver2.2)


 ボソッとなにかが聞こえた気がした。


 さ、寒い、凍える。


 身体が動かない。


 俺は何があったのか分からないでいるとセツナが俺の懐をまさぐり、チップ袋を持っていく。


「お兄さん!私がこのチップ何倍にもしてあげますね」


 ものすごい笑顔でとんでもないことを語る変態。


「ちょっ、ちょっ」


 唇が悴んで上手く喋れない。



 ユウヤは何があったのかまったく分かっていないようだ。



「止めないってことはOKってことですよね。さあセツナさんいざ参りましょう。ギャンブルの女王に私達はなる!」



 どこかでなんとなく聞いたようなセリフを吐き意気揚々とレッドカーペットを登っていく二人を目で追う。


(あいつら後で覚えておけよ)

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役立たずの最強治癒(?)使い 焼き肉 @loyal

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