第39話 ―最強の王!?―

 ここは謁見(えっけん)の間。天井が高く、白を基調とした室内で、幾つものシャンデリアがあった。


 その奥に、周辺諸国最強の王、かつては傭兵だった事から呼ばれた、傭兵王!が、玉座にいた。


 傭兵王は、玉座からはみ出すぐらいに太っていて、王冠の下は白髪、そして顔には白いヒゲを蓄え、いじっていた。


 その玉座の前に、横並びに店主一同、槍使い、女戦士、魔法使い、僧侶、弓使いがいた。お嬢様もいて、側にお付の者として老執事も居た。


 一同を左右から挟むのは、王の側近や護衛の騎士たちだった。


「本当に、拙者が来て良かったでござるか?」


 槍使いが小声で心配した。店主と他の仲間だけでいいだろうと思っていたからだった。


「ああ、きっと親父も会いたいと思ってな。それにコウゴウがいないと……な!」


 店主の目が、お嬢様と女戦士、そして特に僧侶に向かう。


 お嬢様と女戦士へのフォローは分かるが、なぜ!僧侶!?と、槍使いは首をかしげた。


 傭兵王を目の前にして、お嬢様がこれまた小声で店主に聞く。


「本当に、ジャックのお父様なのか?」


 いまだに、信じられらいようだ。いや、本当に信じたいから、聞いているのかもしれない。だって本当なら、王子様にお姫様だからだ。


「お父様か!親父に対してその言い方は、なんか嫌だなあ!」


 と、店主は普通の声で冗談を言う。すると傭兵王は言った。


「そうか?なんならパパと呼んでも良いぞ!息子よ?それにロニー姫もな!」


 店主とお嬢様の話に、ニヤニヤしながら言う傭兵王。お嬢様の目がキラキラした。ふと、傭兵王は視線を感じ、そっちにも言った。


「戦士リリーもな!」


 女戦士の目もキラキラした。


 本来なら、国王の側近なりの挨拶から始まり、国王か謁見者のどちらかから会話が始まるのだが、そんな感じもなく、ただなんとなくダラダラした感じで謁見が始まった。


「勘弁しろよ!デブヒゲ親父!!」


「じゃ、ジャックそんな言い方はないのじゃ!!」


 店主が言った言葉に、お嬢様はビックリした!


 そもそも傭兵王相手にこんな口を聞けるなど、世界広しといえども、店主だけだった。その様子を、若い側近や護衛の騎士がヒヤヒヤして見ていた。


 でも、昔からの側近たちと、老執事はニヤニヤしながら見ていた。槍使いなどの仲間は、それとなく王との関係を聞いていたので、黙って見ていた。


 そんな毒ずく店主を、ニコニコと見ながら、傭兵王は改めて口をひらいた。


「さて、コンゴウ殿!なんとも息子の右腕だと聞く。この息子の事だ大変、世話になっている事であろう。礼を申すぞ、大儀である」


 それを聞いて槍使いは、うやうやしく頭を下げた。


「稀代の魔法使いの弟子のエリーシャ。久しぶりだのう。いや、しかし幾つになっても美しい!!」


「いやですわ!王様」


 魔法使いは照れていた。 


「それに……大きくなったな、アルベルト。二人の成長に、亡くなった稀代の魔法使いも浮かばれよう」


 傭兵王は、自分の子どもを見るかのように、慈(いつく)しそうに言った。魔法使いも弓使いも頭を下げた。


「さすれば、未来の大僧侶もいるではないか!噂はかねがね聞いておる。今のうちに仲良くしておこうぞ!!」


「おい!デブヒゲ親父!ちっとは大人しくしろ!!」


「バカ言え!これも政治だ!!その僧侶はいずれ、本当に大僧侶になるぞ!ワシの目に狂いはない!!」


「いえいえぇ、そんな事はぁ」


 僧侶も頭を下げた。


「そしてエルフの娘にして、エルフ王の孫、女戦士リリー……は、まあ娘みたいなものだから、挨拶は抜きにして……」


 女戦士は頭を下げて、赤くなっていた。


「そうそう、久しぶりだなシュトラウス」


 傭兵王は老執事に向かって名前で言った。


「久しぶりですな」


 老執事は淡々と言った。お嬢様は、知り合いじゃったのか!と、老執事を見る。


 傭兵王は、再び老執事に言った。


「いや……元帝国最強騎士、シュトラウス万騎長(ばんきちょう)!!」


「ばっ、万騎長?この執事さんが?なるほど!!」


 店主はうなった!そして今までの事を思い出していた。確かに、ただの執事ではなかったからだ。


 帝国の万騎長といえば、国軍全てを束ねる役職だ。そしてそんな人物が、お嬢様の護衛兼執事となっているのは納得だった。


「遥か昔の事ですよ、店主殿」


 老執事は店主に向かって謙遜(けんそん)して言った。それはきっと本心だろうと、店主は思った。


「その剣撃は焔(ほむら)を起こし、ほとんどの敵が恐れたものだ!全盛期ではワシと互角……いや少し劣ったか?ふふっ」


 老執事を挑発するように言った。傭兵王にそう言われると、老執事の目付きが変わった。


「なら今……決着をつけるか?」


 老執事は、焔の剣豪シュトラウスへと目の色を変えた。


「なあ……傭兵王よぉ!!!」


「老兵が、出来るのか?シュトラウス!?」


 そして、空気が変わった!!


ビクンッ!


「えっ!?」


 その瞬間、お嬢様は泣き出しそうなほどビックリした。


――ジャキン!ジャキンジャキン!!


 護衛の騎士たちが剣を抜いた。その判断は正しい。老執事は剣を抜いてはいないが、もう、すでに抜いているのと同じなのだから。


―サッ!


 傭兵王は片手を上げ護衛たちを制して言った。


「余興じゃ、余興!」


 お嬢様の様子に気づく老執事。


「もっ!申し訳ありませんお姫様!!」


 老執事は、すぐに殺気を押さえた。


「うぐっ、もう……もうしないでっ……欲しいのじゃ」


 涙をこぼしそうなお嬢様に、老執事はすぐに近づくと、しゃがみこみ、コクコクとうなずいていた。その様子を見て、ヒゲをいじりながら、さすがに申し訳なさそうに傭兵王は言った。


「済まなかったなシュトラウス。そしてロニー姫よ」


 傭兵王は目をつむり、やや頭(こうべ)をたれた。


「ったく、デブヒゲ親父は冗談が過ぎんだよ!!親父が勝てる訳ないだろ!?昔は最強でも今は、ただのデブヒゲなんだから!!!」


 店主の声が響く。


「アハハハ!そうだな。今のワシなら一瞬で、真っ二つの焼き豚だな!!」


 傭兵王の笑いと、空気を読んだのか読んでないのか、店主の軽口のお陰で、その場がなごんだ。


――ぐ~!


「リリー!」


「ごめん、お腹へった」


「「「ガハハハ!!」」」


 これには傭兵王以下、みんなが大いに笑った。女戦士は苦笑いした。そんな女戦士を優しく見つめる店主の姿を、お嬢様は見つめていた。


 店主は、かつてない気持ちを感じていた。


『ここにあの人が居たら……』







 と、思うと、城を出るきっかけとなった出来事を、思い出していたのだった。


【まとめて全員ステータス!】


☆店主

・最強に硬い剣、両手ブロードソード(幅の広い剣)

・プレートメイル


☆お嬢様

・金髪ツインテール、髪留めは細い金のリボン

・ティアラ

・プリンセスラインドレス(シャンパン・ゴールド)

・ドレスと同じ色の、ヒール3㌢

・ちっぱい

・白のタイツ

・紐黄パンツ


★女戦士

・魔剣

・赤マント

・ミスリス鎧一式

・紐黒パンツ


☆槍使い(コンゴウ)

・槍(十文字鎌槍)小太刀、手裏剣、 

・胴鎧、革の腕や足当て、革のブーツ。

・紋付袴(もんつきはかま)紋は『○金』

・鉢巻には『一期一会』の文字

・男は黙って褌(ふんどし)!でござる


☆盾弓使い(アルベルト)

・魔法の弓

・胴鎧、革の腕や足当て。革のブーツ


☆老執事(シュトラウス)

・片手ブロードソード、盾

・黄金のプレートメイル


☆魔法使い(エリーシャ)

・杖、水晶球

・黒マント

・黒のワンピース

・生成りの普通パンツ(←今日ぐらいは、いいかな!って思って)


☆僧侶(ブレイスト)

・杖がわりの、トゲなしメイス

・緑のローブ

・生成りのワンピース

・パンツ履いてない


つづく

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