第35話 ―最大の贈答!?―
店主たちと、天空の塔から帰ってすぐの翌日。
「早(はよ)うなのじゃ!」
お嬢様は、以前のように店に来ていた。店には店主と女戦士が居た。
「昨日の今日で来なくても!」
驚く店主。
「ロニー、おはよう」
淡々と言う女戦士。
「体がなまるから来たのじゃ!」
お嬢様は、女戦士をジロリと見た。
屋敷には、槍使い、弓使い、魔法使いに僧侶が泊まっていた。後日、帝国より謝恩会が開かれるからだ。
お嬢様も、店主の店に泊まる!と、思う反面、父親の事が気になるので屋敷で、ひとまず過ごしたのだ。
『リリーが泊まっているのに、わらはもオチオチしておられんのじゃ!』
そうして、今日も稽古を行った。
「リリー!行くのじゃ!!」
「いいわ」
と、言うが早いか、お嬢様と女戦士は抜刀した。
――シャンッ!シャシャシャシャ!!
―シャキンッ!!!
火花が飛びそうな勢いで打ち合っていた。でも、激しくこすれる音しかしていなかった。
『本当の剣の戦いは見たことあるのか?』
お嬢様は、店主の言葉を思い出す。今、まさに本当の剣の戦いをしている自分に気づいた。
天空の塔での経験。それは、お嬢様にとって濃縮された時間と体験であった。
『凄いものだな!!』
店主は、お嬢様と女戦士の打ち合いを見ていて正直、驚いていた。今のお嬢様は、魔剣無しの女戦士と互角だったからだ。
『本当に素晴らしい!日々、成長をするロニーを、ずっと見ていたい気持ちになる』
店主は目を細め、大切な何かを見ような目で、お嬢様をすっと見ていた。
『この気持ち……もはや、いつわりない俺の気持ちなのか?』
店主は自問自答し、結論を出した。
『やはり今が、時期なのかもしれない……』
店主は、強い決意をしたのだった。
昼の稽古が終わり、昼食後の事だった。
「ロニー!ちょっと渡したい物があるから、先に裏庭に行っててくれ」
「えっ!」
『ちょっと渡したい物?』
お嬢様は何だろうと思った。
「いったい何なのじゃ?」
すると店主が言った。
「お前の一生を決める物だ」
その瞬間、お嬢様の頭から、湯気が出たのだった。
「一生を決める!って言い方!!それはもしかして……』
お嬢様の期待が高まった!
『期待していいのか?いいのか!?』
お嬢様は、大きな期待を抱き、大急ぎで二階のお泊り部屋に行くと着替えをした。
『これは、これはそういう意味よじゃな?と、言うか、それ以外になのじゃな!わらははついに、ジャックと!!期待してしまうぞ!つまりは……
プロポーズじゃな!!』
そして、凄いテンションのお嬢様が、裏庭へ登場した!
「えっ!?」
ドレスアップしたその姿に店主は驚いた。店主は大きな袋を持っていた。
『あんなたいそうな袋に入れなくともよかろうに!』
と、お嬢様は思った。
『さては、小さな箱だから、ポケットではバレると思うたか?それとも、そのまま出すのが恥ずかしいのであろうか?』
お嬢様は、左手の薬指を無意識に触った。
「目をつぶってくれ!驚かしたい」
店主がそんな事を言った!これは期待できる!!と、お嬢様。
「分かった!期待しておるぞ!!」
お嬢様は、ワクワクドキドキだった。
「両手を出してくれ」
「こうか?」
お嬢様は両手を重ね、頂戴!のポーズをした。
「いや、もっと手は離して広げて」
「???」
『離す?なぜ、広げるのじゃ?ネックレスだったのか?』
「では、渡すぞ!」
――ズシン!!
その重みに、お嬢様は腕が落ちそうになった。
「なんじゃ!?」
お嬢様が目を開けると、そこには!!
「かっ、カタナとは!?」
「どうだ?喜んでくれたか?これを、お嬢様にやろう!!」
「あっ、うん、非常に、嬉しく思うぞ」
お嬢様は、引きつった笑いしか出来なかった。
『期待して、物凄く損したのじゃ!!』
でも……
「俺からの誕生プレゼントだ!今のお前なら、使いこなせるだろう!!」
と、店主が満面の笑みで言うから……
『でも、そなたはわらはを、認めてくれたのじゃな』
「ありがとうなのじゃ!!」
お嬢様は、嬉しくて笑顔で応えたのだった。
「さてと、では振ってみてくれ!重心バランスの調整をしたいから!!」
「いっ、今なのか!?」
「えっ!今だろ?午後は、もっとカタナの調整にかかりたいから、早く着替えてこいよ!!」
その様子に……
「ぷっ!」
女戦士が、ニヤニヤ笑っていた。
◇◇◇
天空の塔から戻った三日後の昼間に、帝国国王からの謝恩会が開かれた。
「我が弟を、よくぞ救い出してくれた!礼を言うぞ、大儀であった!!」
威厳をたたえる帝国国王。それに引けも取らず店主は返礼した。
「いえいえ、帝国のご支援があったればこそ。一介の冒険者たちだけでは、到底及びもつきません」
上下白の燕尾服の店主の姿は、どこかの王子のようであった。
「さて……長い挨拶は嫌いでな!では伝わす!褒美をもって来い!!」
そして……帝国国王からは全員に、向こう10年は生活が生困らない額の褒賞金が与えられた。
「私、本当に良かった。生活、辛かった」
涙ぐむ女戦士。
「これで皆、生活に困らないな!」
店主の言葉に大きくうなずく女戦士。実は人一倍、気を使っていた女戦士だったのだ。
会では会食の間、ダンスも行っていた。沢山の人が踊る中、お嬢様の姿もあった。お嬢様は、王子と踊っていた。
『こうして見ると、本当にお姫様なんだな。まるで違う人だな』
店主が見ているとお嬢様と目があった。お嬢様は、ニコッと笑った。
「おっ!」
可愛くてドキッとなった!!
踊りが終わった。すると、お嬢様が店主の所にやって来た。
「わらはと踊ってはまいらぬか?ダンスは、わらはがリードするのじゃ」
そっと店主に、手を差し出した。
「断るなど出来ぬでござるよ、ジャック!姫君に恥はかかせられぬでござるからな」
槍使いが観念しろ!とばかりに、イシシシ!と笑いを浮かべた。
「ああ……そうだな」
店主は珍しく素直に受けた。
お嬢様はリードしようと、店主の背に手をかけた。さて、曲が始まろうかという時だった。
「もう、こんな機会は最後かも知れないからな」
そう、呟くと店主は手をいれかえ、お嬢様の背をしっかりと抱いた。お嬢様は驚いて店主を見た。
ドキッ
と、した。見た事もない、優しい店主の顔が目の前にあった。お嬢様の目が潤んだ。
「……」
女戦士は壁にもたれ黙って見ていた。
店主とお嬢様の二人のダンスは素晴らしかった。踊りながら、お嬢様は店主に囁いた。
「なぜじゃ?なぜ、そなたは踊れるのじゃ!? 」
「ロニー姫よ」
店主の気品のある声。そして店主は、お嬢様にキラキラとした満面の笑みを送って言った。
「今だけは二人、ダンスを楽しみましょう」
その店主の上品な言い方に、お嬢様はつい……
「はい///」
と、答えてしまった。
その日、一番のダンスを二人は踊っていた。お嬢様は、それはそれは夢のような時間をすごした。こうして昼から開かれた謝恩会は夕方には幕を下ろしたのだった。
【まとめて全員ステータス!】
店主(ジャック)
・上下白の燕尾服
お嬢様(ロニー・シュタイン・アインアルバート)
・金髪ツインテール、髪留めは細い青のリボン
・豪華なティアラ
・プリンセスラインドレス(シャンパン・オフホワイト)
・ドレスと同じ色の、ヒール3㌢
・ちっぱい
・白のタイツ
・ヒモ付き白パンツ(赤いリボン付き)
女戦士(リリー)
・黒髪ロングストレート
・真紅のドレスで、超綺麗で美人がさらに!
・真紅のヒール7㌢
・胸元ボリューミー!(谷間あり)
・黒ガーターストッキング
・ヒモ付き黒パンツ
老執事
・黒に金襟の燕尾服
槍使い(コンゴウ)
・紋付袴(もんつきはかま)紋は『○金』
・鉢巻には『天晴れ』の文字
盾弓使い(アルベルト)
・ブルーの燕尾服
魔法使い(エリーシャ)
・実は、バ○さんに見えない超美人の黒ドレス姿
・普通にボイン!(谷間あり)
・パンツ履いてない
僧侶(ブレイスト)
・男とは思えない超美人のドレス姿!(胸はパット)
・パンツ履いてない(だから、ブラブラしてる!)
つづく
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