第25話 ―最悪の塔!?―

「この先は、行き止まりと水晶に出ています」


 魔法使いが言った。


 とうとう、天空の塔に着いた。まずは入り口から、地図を『作りながら』入って行った。なぜなら、公爵の居る階までの地図がないからだ。とはいえ、こちらには魔法使いが居る。


「では、こちらは×と。はあー!エリーシャさんの探知の魔法は凄いですな!!」


 老執事は、驚きのため息をつく。今まで、魔法使いの探知は見てきたが、その探知の広さ、精度とも今まで見た事もなかったからだ。なので、どんどん地図が出来上がっていく。


 「しかし、ジトジトする所じゃの!」


 お嬢様が不満をもらす。塔の中は、ツタが沢山はっていた。そして、とてもジメジメしていた。


「乾いているよりかはいいぞ!」


 お嬢様は店主の言葉に、みんながうなずいているのが分かった。


「そうなのか!?」


 でも、何故いいのかは分からなかった。


「あっ!」


 お嬢様は、質問をしようと思っていたが、差し込む強い光に、気が行ってしまった。


 時々、窓らしきものや、壁が崩れて外が見える場所があった。


「綺麗じゃな」


 外には、どこまでもどこまでも青い空が続いていた。全く初めて見るもの、初めての体験の連続に、とても興奮していたのだ。


「よし!来たぞ」


 店主が剣を構えた!お嬢様もいつでも戦えるよう柄を握った。


◇◇◇


 塔に入って、出てきた怪物はマウスマンと、時々コボルトが、ほとんどだった。マウスマンは人間と同じ背丈で強力な爪で攻撃して来た。


 しかし怪物は、ほとんど店主が倒してしまっていた。


「拙者の槍での介護など、出る幕もなかったでござるな!」


 槍使いが冗談で愚痴る。


 前衛は、店主と女戦士。すぐ後ろに槍使い。真ん中にお嬢様。お嬢様を挟んで魔法使いと僧侶。その後ろに弓使い。殿(しんがり=一番後ろ)を老執事が務めた。


「ちょとぉ、ジャックぅ、私たちにも少しは残して置いてよぉ」


 と、僧侶が冗談を言うほど、みんなやることが無かった。


「すまん!ちょっと腕慣らしさせてくれ」


 実は、久しぶりという事もあり、色んな斬り方を、店主はおさらいしていたのだった。


 店主の剣は、狭いダンジョン内という事で、普通の長さの最強に硬い剣、両手ブロードソード(幅の広い剣)を使っていた。


「と、言いつつ、前よりも速くなっている」


 淡々という女戦士。とはいえ、たまに店主は、お嬢様に対して……


「よし!ロニー行ったぞ。やれ!!」


 と、言ってかなり弱らせた、コボルトと戦わせた。


――シュン!


―バタン


「もっと柄をぶつける気持ちで、引きつけてから斬れ!」


「分かったのじゃ」


 お嬢様は時々来るコボルトに、常に気を張っていた。


 なぜなら、常に装備が違うからだ。たまにマウスマンも来るが、爪での攻撃、しかも剣だと間合いが取れるの簡単だったが、コボルトは違った。


 剣も普通の剣から短剣にナイフ。盾を持っているのもいた。戦い方もそれぞれに違っていて、素手か?と思ったらナイフを逆手に隠して持っての攻撃もあった。


「もはや、ふたりだけでいいのでは?」


 お姉さん応援しちゃうぞ!ってな感じで、魔法使いはニコリとした。


 その途端。


――ズバン!


―ザァン!


 と、女戦士が怪物を斬り倒していった。


「さすがリリー!見事だな」


「それほどでもない///」


 店主以外、あきらかに照れていたのが分かった。


「本当に凄いですな店主殿!これほどの腕前とは!!」


 実際に見た店主の戦いっぷりに、老執事は関心した。


「だって、世界最強だもの」


「だからリリーそれ、やめろって!執事さん、たまたまだ。たまたま今回のモンスターの分布が良かっただけだ。さらに上に登っていったら、どんなモンスターがいるかなんて、誰にも分からない」


 店主は慎重だ。


「とはいえジャックの腕は、前より冴えているでござるよ!」


 槍使いの言葉に、以前を知っている仲間は皆うなずいた。


「そう言ってくれるのは嬉しいが、だがここにはミノタウルスや、それ以上の怪物も居る。それが低層階に現れない保障はない。我々にとって『最悪の塔』になる事も……」


 いつになく慎重な店主。それは、お嬢様いや、帝国国王としての王位継承権、第6位の位(くらい)を持つ姫を、護衛しながら探索であることを皆に認識させるものだった。


 途中、宝物(ほうもつ)や装飾品があったと思われる場所があった。でも、痕跡があっただけだった。


「お宝は、先に来た連中が持ってったな。たぶん、ミノタウルスが居るという階まではそんな感じだろう」


 と、店主は言った。


 大広間に出た。広間の真ん中に上に続く階段があった。そこに一団が近づいていくと、急に店主に緊張が走った!


――ザザッ!!


 何も言わなくても、お嬢様を囲む陣形が作られた!その時、お嬢様は自分の背を守る弓使いに驚いていた。


 何かが光ったと思い振り返ると、弓を構えた弓使いの前に無数の矢が、鏃(やじり)を中心に円を作り、まるで盾のように現れたのだ。弓使いは、その盾の中から一本、矢を取った。


「すごいのじゃ!」


 無意識にお嬢様はつぶやいていた。


「これが魔法矢の盾にござるよ。絶対必中の矢に、最強の盾でござる」


「まさか!これほどとは。これなら近接も出来るのでは?」


 老執事は驚きを隠せない。弓を使う場合、攻撃される側として考えると、自分を守る事が必須となる。必ず安全を確保してから射らなければならない。


「だから、最強の弓使い」


 魔法使いは、少し悲しそうに言った。店主は弓使いに言った。


「アルベルト分かっているな?」


「姫君に危険がある時のみ!!」


 店主と弓使いは意思確認をした。


「来るぞ!!」


 店主の声とともに四方八方から、マウスマンとコボルトが多数現れた!


「覚悟するでござる!」


 槍が攻撃を制しつつ、数匹まとめて押し返した!これで怪物は、近づけない。魔法使いが杖から小さな雷(いかずち)を放ちやっつける!!老執事も負けじと、続けて斬り倒した!!!


 前衛では店主と女戦士が、あっと言う間に倒してしまっていた。


「あたしたちぃ、本当に出番が無いわよねぇ。まあ特にぃ、あたしの出番がある時はぁ、ヤバイ時なんだけどぉ!!」


 僧侶は、キラキラと光る笑顔で杖メイスを振り振り、お嬢様に言った。


『こなたは、ホントに男なのであろうか?」


 柄を握ったまま、お嬢様はそう思った。


「さて!上に登るぞ!」


 店主に続き階段を登る。


 そんな感じで店主率いる先陣部隊は、1階での捜索を終え2階に登ったのだった。


【まとめて全員ステータス!】


☆店主(ジャック)

・最強に硬い剣、両手ブロードソード(幅の広い剣、普通の長さ)

・プレートメイル


☆お嬢様(ロニー・シュタイン・アインアルバート)

・金髪ツインテール、髪留めは細いリボン

・最高の両手剣

・鎖からびら、鉄の胸当て、革の腕当て、革のブーツ

・ちっぱい

・白のパンツ(赤いリボン付き)


★女戦士(リリー)

・最高の剣(詳細不明)

・ミスリス鎧一式

・赤マント

・超綺麗で美人!

・ボリューミー!(なにが!!)

・やっぱり安定の黒下着上下


☆老執事

・片手ブロードソード、盾

・黄金のプレートメイル


☆魔法使い(エリーシャ)

・実は、老執事と年齢が同じ!?な、超美人。  

・肩ソバージュ茶

・杖

・水晶球

・黒のマント

・黒のワンピース

・パンツ秘密!


☆僧侶(ブレイスト)

・杖がわりの、トゲなしメイス

・緑のローブ

・杖がわりの、トゲなしメイス

・生成りのワンピース

・これまた、パンツ秘密!!


☆槍使い(コンゴウ)

・槍(十文字鎌槍)小太刀、手裏剣、 

・胴鎧、革の腕や足当て、革のブーツ。頭に鉢巻

・男は黙って褌(ふんどし)!でござる


☆盾弓使い(アルベルト)

・魔法の弓(思念追尾、極大射程)

・胴鎧、革の腕や足当て。革のブーツ

・超イケメンだ!


つづく


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る