第24話 ―最高の手ほどき!?―

 天空の塔に着くまでの間、お嬢様は仲間と交流をしていった。


「ではあのカタナはコウゴウ、そなたがジャックに?」


「そうでござる。戦場で斬り合いになったあと、今度は仲間になったでござる!その時に、刀を一振り渡したでござるよ」


「なんと!命のやり取りをした相手にか?」


 お嬢様には今、目の前にいる槍使いと店主がやりあったことが嘘のように思った。


「あの時は、互いに大馬鹿でござったから、面白かったのでござるよ、命のやり取りが!結局、拙者が負け。それなので、止めを差せ!と言ったら、潔(いさぎよ)し!で、終わりだったでござるよ」


 槍使いは、その様子を思い出し、なにやら嬉しそうに言った。


『一度、敵になったのに、そう簡単に仲良くなれるものなのか!?』


 それは、お嬢様には理解できぬ事だった。


「その後、一緒に戦うようになって、命の礼に刀を渡したでござる。そして、貿易商人を紹介した今は、ジャックが刀や槍などを売ってるでござるよ」


『命を取り合ったのに?仲間とな?』


 敵なのか?仲間なのか?お嬢様の頭の中がグルグルした。そこに店主から声がかかった。


「そうだ、お嬢様!コウゴウに槍の手ほどきを受けろ」


『わらはは、剣を使っているのじゃぞ!?』


 お嬢様は意味が分からなかった。


「なぜじゃ?」


「色々と分かるからさ!」


 と、店主は言って、ニヤりとした。その店主を見て、槍使いは小さくうなずいていたが、お嬢様は気づいていなかった。


 さてさて槍使いはお嬢様に、手ほどきを始める事にした。


「まずは棍(こん)で、やるでござる!」


 従者から、背丈の倍以上ある棍をもらった。どうやら棍は、始めから用意されているようであった。二人とも棍持つと相手に構えた。


「行くでござる」


 お嬢様に向かって槍使いが棍で突いた。が、突く瞬間に!


カシンッ


 お嬢様が棍の先で、それをしのいだ。


「ほう!正中心をしっかりと押さえてるでござるな。では!」


 今度は、左右に払って来た!お嬢様はそれを、カシンッカシンッと上から押さえるように受けた。


「凄いでござる!では、これでは!!」


 素早く横に払った!すると、お嬢様も同じ動作をした!このままではお互いに相打ちだ。


 その瞬間!


パッ!


 当たる直前!互いに棍を止め、後ろに跳んだ。


『なるほど!これが先!?であったか!!』


 お嬢様は、店主との話を思い出し納得していた。棍は剣より長い分、予測がしやすかった。


「素晴らしいでござる!では、次まいるでござるよ」


 あきらかに、今までとは違う動きだった!


ヒュン!


カシンッ


 お嬢様の棍がはじかれ。


ビュン!


 棍の先が、お嬢様の喉元にあった。


「しなりを使って、はじいたでござるよ」


『そうか!木だからしなるのか!!』


 お嬢様は、しならない剣との違いに驚いていた。


「では、次でござる」


クルンッ


パンッ!


 次ぎは棍を巻きとられ、跳ね上げられてしまった。


『この技は!!』


 その時、以前に店主に剣を跳ね上げられたのを、お嬢様は思い出していた。


「棍は、外回し内回しの二つの『跳ね上げ』と『押さえ』そして最後の『突き』が基本でござる。まずはこれを、しっかりとやるでござるよ」


 それを聞いた、お嬢様は棍を構えると、外回し、内回し、そして突き!と、何度もやってみていた。


「なるほど!何にでも基本があるのじゃな」


 すぐに習得したような物言いに、槍使いは驚いていた。


「ところでコンゴウ、そなたの実際に使っている槍は短いのう?それに、先が十字じゃ!それはなぜじゃ?」


 お嬢様は、棍との違いに質問した。


「あれは、十文字鎌槍(じゅうもんじかまやり)でござる。短くしている分、攻めだけでなく守りもしやすい槍なのでござる。横に出ている刃で、止めたり、引っ掛けたりするでござるよ」


「ジュウモンジ・カマヤリという名か!」


「広い場所で、離れた相手には長いやりで戦い。狭い所では短い槍、しかも相手の動きが抑え安い、鎌槍が良いでござるよ。それに十文字の形が拙者っぽいのでござるよ!!」


「コンゴウっぽい?バッテンの形がか!?」


お嬢様は首をかしげた。イメージとしたら、短い槍の十文字鎌槍よりも、もっと長い槍の方がコンゴウに似合っているのに!と、お嬢様は思った。


「バッテンでござるか!!あははは!なんでもないでござる、好みの問題でござるよ」


槍使いは大笑いした。


「ちなみに槍は、東洋の大陸ではリーショブンが上手いよ。東洋の島国ではインシュンが上手く、この十文字鎌槍はその時にもらったでござるよ!」


「コウゴウは東洋の生まれじゃったな!では、大陸なのか?それとも島国?」


「拙者は島国の生まれで、それから大陸に渡ったでござるよ」


そう槍使いは言うと、棍を外回し、内回し、そして突き!と、何度もやってみていた。


「そうであった!話の途中であったな。とにかく戦い方と武器は状況に合わせた使い分けが大事でござる!!」


 槍使いは棍を置いた。


「使い分けか?」


「そうでござる。戦いでは距離、間合いにおいて、戦い方や武器が違うでござる。遠くからはまずは弓、次に槍、最後に刀や素手でござるよ」


 その辺にあった、枝を使って地面に絵を描きながら、槍使いは説明した。


「ほう!戦い方も色々なのじゃ」


 お嬢様は聞いていて、面白くなった。


 そこに店主がやって来た。


「どうだ?だいぶ、しごかれてるか?」


「姫君は」


 その時、槍使いの言葉をお嬢様がさえぎった。


「そっ、そなたより丁寧じゃ!」


「それは良かった!しっかりと覚えろよ!!あと、弓についてはアルベルトに頼んであるからな」


 お嬢様は、つい当てつけがましく言ってしまったが、店主はそんな事も気にせず、普通に返していた。


「次ぎは弓なのか?」


「ああ、色々と分かるから」


 そう店主は、また言ってニヤリとした。


 そのあとは、アルベルトに弓の手ほどきを受けた。


「では、借りた弓を使ってお教えします」


「ああ、頼むのじゃ」


「弓は初めてですか?」


「そうなのじゃ」 


 弓使いはとても丁寧で紳士的だった。


「ではまずは、弓だけで引いてみましょう!実は、すぐに引けるものではないのです。いくら力があっても引けないのが弓なんですよ」


 お嬢様は、弓を左手に持つと弦(げん)を引いてみた。


「えっ!!」


 弓使いの驚きをよそに、お嬢様は弦を左の肩、いっぱいまで引いていた。


「凄い!初めてなのに、弓と両肩が一直線に引けています!!上手に全体の中心で引く事が出来ていますね!!」


『正中心だ!』


 そんな店主の声が、お嬢様に聞こえた気がした。


 そして、まさかこんな所に、店主に言われた事がつながるとは!と、驚いていた。お嬢様は知らず知らずに、身体の正しい使い方が身に付いていたのを感じた。


『色々と分かる』


 そう店主が言っていたのを思い出した。


『だから、わらはにやらせたのか?』


 お嬢様は納得した。


「引き方は大丈夫です。では実際に矢を射(い)ってみましょう!」


 お嬢様は右手に矢を持った。


「矢のつがえ方は、流派や人様々です」


「そうなのか!では、適当でよいのか!?」


 お嬢様は驚いた!


「そうですね!ようは当たれば良いのです。でも基本的に、素早く正確に、矢をつがえるやり方を教えます」


「分かったのじゃ!」


 お嬢様は期待した。


「では、左手で持った弓の上を右に傾けて下さい。そのまま斜めに。そして、上から矢を置いて下さい」


「こうか?」


「そうです。弓と人差し指の根元に、矢を乗せましたね。次に右手平を上した状態で、人差し指と中指で矢をはさみ。矢のお尻を弦に引っ掛けて下さい」


「はさんだぞ」


「そして、そのまま弓を縦にしつつ、顎(あご)まで引き絞って下さい。まずは安定しやすい顎合わせでやりましょう。では、目の前の木に射ってみましょう!」


 五歩ほど先の木を的にした。


「射って下さい!」


 お嬢様は、その声に指を離した。


シュン!




カツン!!


 小気味良い音とともに、矢が命中した。


「凄い!上手ですよ。このつがえ方は馬に乗った時に、とても有効です。手綱を持ったまま弓を斜めにしただけで、つがえられますから」


 それから、少しずつ遠くの木を狙っていった。

 

 そんな風にして、天空の塔に着くまでの休憩や野営の合間に、お嬢様は槍使いや弓使いに、武器の使い方を習ったのだった。


「姫君は、本当に飲み込みが早いでござるな!」


「本当ですとも!素質があります!!」


 とにかく習得の早さに驚く二人。お嬢様は槍使いと弓使いに誉められて照れていた。でも……


『ああ、これが……だったらなのじゃ』







 ふと気づくと、店主の顔が浮かんでしまうのであった。


【ステータス】


☆お嬢様

・真紅のパンツ


(★)女戦士

・たまには気分を変えて、紫の下着上下


つづく

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る