第23話 ―最初の野営!?―

 結局、出発当日は、弓使いとの話があった為、あまり先に進めなかった。なので、早めに野営する事にし、次の朝早くに出発する事にした。


 老執事は、従者たちに指示をしていた。それなりの数を率いているので、ちゃんとした統率が必要なためだ。


「よし!用意するでござる!!」


 みんなは手馴れた様子で、野営の用意をしていく。槍使い、弓使いは、テントを建て始めた。


 それを見て老執事が言った。


「我々が用意をしますによって」


 すると、店主が言った。


「いや、みんなでやった方が早い!それに、お嬢様も一緒に何かしたら、みんなと自然に交流できるしな」


「ご配慮ありがとうございます」


 店主に言われ老執事は頭を下げた。安全の為、店主たちのテントを囲むようにして、陣営が作られていく。従者たちも手早かった。


 店主と女戦士は、火を起こした。魔法使いと僧侶、お嬢様は食事の支度だ。


「ふふふん♪」


 お嬢様は、とても楽しそうだった。それもそのはず、野営など生まれて初めてだったからだ!


『おっ!良かった』


 お嬢様の様子を店主は遠くから見て、ホッとしていた。お父上様への心配も半分、忘れているようだったからだ。でも、それはひとえに、店主への信頼からでもあった。


 食事の用意では、まずは、お嬢様の手際を見た二人だったが……


「うん!分かったわぁ。お姫様はぁ、野菜を洗ってぇ」


 と、失敗しない事を頼むことにした。


「分かったのじゃ!」 


 食事のほとんどを、テキパキと僧侶と魔法使いが進めていった。


「所で、聞きたいのじゃが、僧侶殿は、ええと、その……」


 お嬢様は、我慢が出来ず僧侶に聞いてみた。


「あたしがぁ、男かって事?」


 僧侶は察しがいい。


「ああ、その事なのじゃが……」


 自分から聞いておいて、お嬢様は困っていた。魔法使いが助け舟をだす。


「ブレイストは本当に男よ」


「そうなのか!」


 僧侶の長いまつげに、お嬢様の目が行く。目が合うと、僧侶はニコッと笑った。魔法使いは話を続けた。


「それでね元々、寺院にいたのだけれど。あまりにも美しいから、修行の男の子たちが色めき立ってしまったのよ」


「ほうほう」


 お嬢様は興味深々だ!


「それで、周りが修行にならないから、ブレイストだけ一人で、別に修行する事になったのだけど」


「そこからはぁ、あたしが話すわぁ。みんなから離れてぇ、一人で修行していたらぁ、今度はお師匠様の一人がぁ、あたしにメロメロになっちゃったのよぉ~。もう、こまっちゃうぅ!!」


 そして、は~ん!と、変な声を出す僧侶。


「ほう!」


 さらにテンションの上がる、お嬢様!


「で、お師匠様が襲いかかって来たのだけどぉ……」


「襲われたのか!!」


 お嬢様が驚いていると、僧侶はチラリと魔法使いを見た。魔法使いは言った。


「そうそう、ブレイストは寺院でも創設以来快挙なほどの優秀な僧侶なのよ。祈祷でも、そしてそれ以外でも、それはそれは強くて……」


「でもぉ、お師匠様はタイプじゃなかったのよぉぉぉ!だから……コテンパンに、のしちゃった!!」


 僧侶は、テヘペロした。つまりは、素手でもそうとう強いらしい!!


「そしたら、破門よぉ!失礼しちゃうわよねぇ」


 と、言う僧侶に魔法使いは言った。


「まあ、そのおかげで、ブレイストに出会う事が出来ましたわ」


 魔法使いはニコニコした。


「どうゆう意味じゃ?」


 魔法使いは、お嬢様に説明した。


「通常、僧侶が仲間に入る事は、まれなのです。戒律がありますからね。だからもし、仲間になるには、派遣されたか。自分から寺院を出るか。破門になったか。」


 なるほど、なるほど!と、お嬢様は理解した。


「所で姫君こそ、ジャックとは?」


 と、お嬢様に向かい魔法使いは言って、ニマーとした。


「ブフッー!!なにっ?何を聞いておるのじゃ!?」


 お嬢様は大慌てだ。


「ジャックって自分の事となると、ウトいから気をつけるのよ」


「そうそうぉ!変にぃ、優しい所あるからぁ、勘違いしちゃうぅ~!?」


 お嬢様は、魔法使いと僧侶に言われてドキッとした。


「もしかしてぇ……







 もう、勘違いしちゃったぁ!?」


 美しくも意地悪く、僧侶が言った。


「なっ!何を申すか!?」


 顔を真っ赤にするお嬢様。


「早くしないと、取られてしまうわよ?」


 魔法使いの視線は、女戦士を見ていた。お嬢様もその視線を追った。 


 離れた場所で、店主と女戦士は火を起こしていた。




「熱っ」


「リリー大丈夫か?」


「大丈夫だ」


「ちょっと見せろ。お前は、すぐ隠そうとするからな」


 そんな会話を、女戦士と店主はしていたが、お嬢様たちには離れていたので聞こえていなかった。




「ほら、手をつないじゃったわよぉー!」


 僧侶が、嬉しそうに煽(あお)る。


「なんと!?」


 焦る、お嬢様!


 はたから見ていると、店主が片膝をついて、女戦士に求愛しているかのように見えた!


「ああもう、遅いかも?」


 魔法使いも煽る!お嬢様は慌てて二人の所へ行った。




「そっ、そなたたちは、その……火を起こせたのか?」


 そして、二人の間に入った!


「ああ、そしたらリリーが火傷(やけど)しちまって」


 店主の言葉に、お嬢様はホッとした。


「そうであったか!それは、難儀であったな」


 店主は女戦士の手を持って、タオルで冷やしていた。


『自分でさせればいいいのじゃ!』


 と、お嬢様は思ったが、店主に嫌われるのは嫌なので、黙って我慢した。


「そっちはどうだ?下準備は出来たか?」


 店主が様子を聞いた。お嬢様は胸を張って答えた。もちろん、ほとんどは魔法使いと僧侶が、やってたのだが。


「もっ、もちろんなのじゃ!わらはも手伝ったのじゃ!!」


 その瞬間、店主と女戦士は物凄く心配そうな顔をした。


◇◇◇


 食事が終わった。


『良かった、食べられて……』


 店主と女戦士、そして老執事は思っていた。食べられる食事ほど、嬉しいものはない。食事の後は火を囲み、寝るまでの間、少しの団欒(だんらん)ができた。


「そうなのよぉ!そしたらねっぇ……」


 その時だった。


「アルベルト、話がある」


 ふいに店主が弓使いに話かけた。みんなに緊張が走った。


「ジャック……」


 弓使いの顔が緊張する。


 すると店主が言った。


「随伴(ずいはん)を許可する」


 その言葉に、弓使いの顔がほころび笑顔が出た。


「やったぁ!さすがジェイちぅあーんっ!!」


「ありがとうジャック」


 僧侶と魔法使いが身を乗り出し、そして目を合わせてハイタッチする!


「ジャック!かたじけないでござる」


「ジャック殿!」


 槍使いに老執事も嬉しそうだ。


 女戦士は、黙ってうなずいた。お嬢様は、そんなみんなが、うらやましく思った。


『みな、戦場の仲間であるか……老執事も嬉しそうだ』


 自分にその経験がない事に、悔しくもなった。


「ただし!弓の使用は禁止だ」


 店主の言葉に、お嬢様は耳を疑った。


「それでは、付いていく意味がないであろう?」


 お嬢様に疑問が沸いた。でも、お嬢様をのぞいた一同が、うなずき納得していた。


 弓使いも、うなずいていた。


『なんなのじゃ!これは!?』


 そう、お嬢様が思っていると店主が言った。


「が、そう言ったって、お前の事だ!どうせ使うんだろう?だから、お嬢様に危険があった時のみ、弓を使うのを許可する」


 弓使いはもちろん、みんな笑みを浮かべた!


『凄いのじゃ!!やはり、何か通じるものがあるのだな。仲間とはよいものじゃのう……』


 はぜる炎を見ながら、そう、お嬢様は思ったのだった。


【ステータス】


☆お嬢様

・黄色のパンツ


★女戦士

・新しい黒の下着上下


☆魔法使い

・パンツ秘密!!←もはや記述、必要ない!?


つづく


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