第20話 ―最大の屋敷!?―

「ちょっと待て!」


 店主は、馬車の前に飛び出した!今まさに、店の前から馬車が出ようとしていた。


 御者が慌てて馬を止める。すると、お嬢様が窓を下げ店主に言った。


「なんじゃ?」


「話がある、店に戻れ!」


「分かったのじゃ」


 その言葉に、お嬢様は素直に馬車から降りて店に戻った。店のテーブルに、四人が集まった。


「わらはは、自分で助けに行く」


 お嬢様の決意は固い。そこで、店主も決意をもって言った。


「なあ、俺が行くと言ったらどうする?」


 店主が言うとパアッと、お嬢様の目が輝いた!女戦士も表情に出さないが、ピクッと動いた。


「ジャック!それは本当なのか!?」


「ただし俺が行くなら、お嬢様はお留守番だ」


 その言葉に、お嬢様は反発した!


「いやじゃ!わらはも行くのじゃ!!」


 さてさて、どうしたもんか?と、考えていると、老執事が口を開いた。


「では、わたくしめが警護に付きましょう」


「本当か!?本当に行ってもいいのか?」


 お嬢様は老執事に、これでもかと確認した。


「ただし!リリー殿、店主殿以外にも、精鋭が参加するならです」


 老執事が言うと、お嬢様はがっかりした。


「それでは、やはり行けぬではないか!!」


 お嬢様のつぶやきに、女戦士は老執事に目配せをし言った。


「執事殿、今こそ屋敷へ」


 その言葉に、老執事はうなずいた。


◇◇◇


「マジか!ロニーの屋敷って本当に、ここなのか!?」


 お嬢様の馬車に乗って向かった先は、店主でも知っている場所だった。


「しかし、マジでデケーな!ロニーの屋敷って!いやここまだ敷地か!!」


 門を通ってから、かれこれ半刻が経つ。やっと屋敷が見えてきた。


「いや、これ屋敷じゃなくて、城だろ!?」


 屋敷に入ってからが、また驚いた。


「「「お帰りなさいませ!!!」」」


 お嬢様のお世話をするのであろう何十人という、執事と使用人が並んでいた。


「そういう事だったのか」


 店主の納得する姿に、老執事が答えた。


「そうです。もういまさらかと思いますが改めてお話します。お嬢様のお父上様は、公爵様でございます」


 帝国国王の実弟、アインアルバート公爵。


「その娘だったのか」


「さよう、ロニー・シュタイン・アインアルバート。それが姫君の名前で、あらせられます」


 握った左手を胸に当て、軽く会釈し店主に言った。


「確か、国王様のご子息は二人だったな」


「その通りです。兄と妹の、お二人にございます」


「と、いう事は……」


 王妃、息子、娘。弟王、弟王妃……娘のロニー!?


「王位継承権、第6位じゃないか!?」


 店主が驚いていうと、老執事は目を見開いて言った。


「ですから、祭りには反対したのでございます」


『そりゃ、反対するわな!!何かあったら、どれだけの首が飛ぶんだ!?』


 と、店主は思ったがお嬢様の手前、口にはしなかった。


 その後、応接室に通された。シャンデリアがあり、くつろげるようにと、低いテーブルと長椅子が置かれていた。


 店主は長椅子をみた。


「さすがだな!」


 つい、声が出た。その長椅子が一脚で、馬が買える値段だったからだ。


「しかしこれで、どうして明かせないかの理由が分かった」


 店主が言うと、老執事が深くうなずいた。


「そしてロニー、いや、お嬢様、いや、お姫様が最強の剣を求めたか分かったよ」


 店主が言い換えた事に、お嬢様は言った。


「ジャック!今まで通り、お嬢様でもかまわんぞ。いやむしろ、ろっ、ロニーほうが……///」


「そうはいかねーだろ!!……あっ!いや、そうはいきませぬ」


 店主はうやうやしく言った。


「これ!口調も今までどおりじゃ!これは王命に順ずる、わらはの命令じゃぞ!拝命せぬのか!?」


 お嬢様は本気で怒っていた。


「分かったよ!分かった!!今まで通りに行こう。なっ!ロニー!!」


「それでいいのじゃ!!」


 お嬢様は、これ以上ない笑顔でニッコリと笑った。


「でもなぜ、俺の店に最強の剣を求めた?それに、リリーと老執事は知り合いだったのか?」


「その事ですが……」


 老執事は言いにくそうだった。


「その事は、私から話す。私は情報屋を通して、天空の塔へ話を聞いた。だから執事殿は、私の名前は知ってても顔は知らなかった」

 

 女戦士が答えた。


「それで執事さんは、驚いてたのか!」


 店主は裏庭での事を思い出していた。


「あとその時、情報屋に聞かれた。「所で、最強の剣が手に入る所はあるか?」と」


「それで?」


 店主は、はは~ん!と、思った。


「私は、最強な剣が手に入るならと、教えた。『自分にとって』と言う意味だったが。誰かが言い間違えたのか?聞き間違えたのか?」


 すると、お嬢様が気まずそうにしていた。老執事はお嬢様をジロッと見た。


「つまりは、無理やりつかんだ情報に、乗ったって訳か!」


 店主は、お嬢様を見てちょっとイジワルそうに言った。


「さて、このあとはどうするんだ?これから他のメンバーを集める相談か?」


 店主は話をかえた。


「店主殿は、以前、メンバーについて話されましたな」


 老執事と話した事を店主は思い出していた。


「ああ、選りすぐりの。最低でも戦士は2名、それに魔法使いか、近接も出来る槍使い、あと必ず僧侶だなと言ったが」


「もしそれが、そろうとしたら?」


 老執事は店主に確認した。


「もし、それが俺の知っているメンバーなら……明日にでも出発だな!!」


 店主は確信をもって言った。


その時だった。老執事は声を上げた!


「お聞きでしょうか、皆様!!店主殿は、こう申されましたぞ!!」


 すると隣の部屋へ続く、両開きの扉が開かれた!!


「待っておりましたよ」


 扉から、見慣れた杖と水晶玉を片手に、美しい魔法使いが入ってきた。


「エリーシャ!」


 店主は驚きの声を上げた。


「ジェイちゃ~ん?まさか本当にぃ、貴方が来るとはぁ!神もご存知ないでわょ~ん!!」


 懐かしいローブと、普段は杖がわりのメイスを持つ、お色気ムンムンの、これまた美しい僧侶もいた。


「お主が来るなら拙者、この依頼を受けよう!」


 そして最後に、ムキムキの大きな体にスキンヘッド!口の周りにはドロボウ髭!!頭に鉢巻(はちまき)を巻き、そして、十字の槍と腰に小太刀を持った槍使いの男も入ってきた。


「ブレイストに!コンゴウもか!!」


 店主の驚きは止まらない。


 ある時は敵として、またある時は仲間として。幾多の戦地で知り合った奴らが、目の前にいた。

 

「ジャックには、貸しがありますから!!」


「ジェイちゃんにはぁ、貸しがぁ、あるわぁ!!」


「お主には、貸しがあるでござる!!」


 きっと、打ち合わせていたのだろう台詞(せりふ)を言い、それぞれが店主へ、大きくうなずき、恩義を返しに来たのを告げた。


「バカやろう!」


 店主は目頭が熱くなった。


 が、グッとこらえた。お嬢様は、すでに泣いていた。


「これでしたら、どうでしょうか?」


 老執事が店主に確認する。


「もちろん……







 出発だ!」


「それでしたら!!」


 老執事は大いに安心した。


「ああ!でもその前に、なあ、ロニー」


「なんじゃ?」


「あの日に聞いた覚悟は……大丈夫か?」


 お嬢様に店主は、最後の確認をした。すると、お嬢様は笑って言った。


「そんなの、ジャックと野犬狩りに行く前に……







 とっくにしておるのじゃ!!」


 その覚悟に店主は苦笑いし、自分を恥じたのだった。


【ステータス】


☆お嬢様

・現在、最高の両手持ち剣(重心柄、重さ中、柄太め、刃小幅、肉中厚)

・細い紫色のリボン

・動きやすい服装(浅黄色のすそが少し長めの丸首、綿の長袖。ズボンも同じく浅黄色。肌はピンクのボタン止めのノースリーブ)

・堅い革ブーツ

・白のパンツ

・固い決意


★女戦士

・黒髪ロングストレート

・最高の剣(詳細不明)

・超綺麗!!

・皮製の服

・革のブーツ

・黒の下着上下

・中途半端な気持ち


☆魔法使い

・肩ソバージュ茶

・杖

・水晶球

・黒のマント

・黒のワンピース

・美女である!!

・パンツ秘密!


☆僧侶

・前髪ぱっつん!セミロング

・ローブ

・杖がわりの、トゲなしメイス

・生成りのワンピース

・美しい!!

・これまた、パンツ秘密!!


つづく

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