第18話 ―最凶の料理!?―
「今夜は、わらはが作るのじゃ!!」
「「えっ!?」」
お嬢様のその言葉に、店主と女戦士の声がハモった。
お嬢様は二日目も泊まる事になった。いやだぶん、このままだと……女戦士と共に泊まっていくだろうと、店主は思っていた。まあ、それはよい。今は、目の前の脅威対象についてだ。
『きっとヤバイものが出来る』
『食べ物が作れるのかしら……』
今まで、過酷な戦闘状況を生き残ってきた、店主と女戦士の野生のカンが、そう言っていた。
二人は自然に目を合わていた。命に関わる事だと、共通認識していた。
その様子を見て、お嬢様は思った。
『なんじゃ!二人仲良く!?どういうつもりの、えっ!?なのじゃ!!』
二人の声を聞いて色んな意味で、お嬢様は、ムッとした。そうそう昨日と同じく、お嬢様は水浴びをして着替えていた。
そして、昨日の女戦士に負けじと、なんと!ノースリーブの少し胸元のあいた丸首の黄色いワンピースを着ていた。ちょっとは女の子らしさをアピールしてみたのだ!
「てか、ロニーは料理出来るのか?」
店主は、普通にロニーと呼んでいた。
ピコンッ!
と、金髪ツインテールの赤いリボンが跳ねた!
店主は分かってないが、お嬢様はとても嬉しそうだ。
「大丈夫なのじゃ!」
と、お嬢様が、ちっぱい胸を叩くと、金髪ツインテールのリボンも踊った。
「一応、聞くけど料理ってのは、食べられる物を作るんだぞ!その辺、分かってるのか!?」
マジで心配する店主。店主は、チラッと老執事の方を見る!
サッ
『なに!?』
老執事に目をそらされた!!
『ヤバイ!これ、マジでヤバイだろ!!』
店主が思ったその瞬間。
「本当に大丈夫じゃぞ!!」
お嬢様は、ちっぱい胸を張った!絶対に大丈夫じゃない!!と、店主は思った。
「本当か?ところで誰に教わった!?」
店主の頭には、とにかく命の心配しかなかった。
「屋敷の料理長よ!絶対に失敗しない料理の仕方を習って来たわ!!」
お嬢様はとにかく、自信たっぷりだ。
『『絶対に失敗しない料理?』』
その言葉で、さらに心配になる店主と女戦士。本人が絶対!と、言う時点でもはやこれまで!と思っていた。
「まあ、見てるのじゃ!!」
お嬢様はそう言うと、店主から『わざわざ』借りたブカブカのエプロンをした。
「ぶふっ!」
店主が反応した。
お嬢様はノースリーブで、さらにはエプロン丈がスカートより少し長いので、一瞬、下を着てないように見えた。つまり、裸エプロンだ!!
そんな店主に、お嬢様は気づくことなく、リビング奥の調理場へ消えて行った。
――コホン
店主の隣で、女戦士が咳払いをした。
「そういうのがいいのか?なら、明日は……///」
女戦士が聞いた。
『黒髪ロングストレートの、超綺麗な女戦士が、裸エプロンかあ!!』
これにはマジで賛成だが、してくれ!!とは、さすがに言えないので、店主は断った。
「いや」
「そうか」
その時、悲鳴がした。
「キャー!!」
――ガチャガチャンッ!
お嬢様の悲鳴と共に、何かが盛大に割れる音がした。
「あっ、なんか割ったな。それも沢山……」
店主は物凄く、ガックシしていた。そして見に行くと案の定、皿がたくさん割れてた。
「さっ、皿を取ろうと思って背伸びしたら……すっ、すまないのじゃ!!」
その割れた皿を見てアワアワしている、お嬢様。
『多分、片付け方なんて分からんよな』
店主はそう思って言った。
「俺がやっとく」
そして店主が、さっさと割れた皿を片付けた。
「本当に、すまぬのじゃ」
お嬢様は肩をすくめていた。そのままやめてくれるかな!と、店主は思ったが、お嬢様は決意を新たにし言った。
「では!美味しい料理をつくるぞよ!!」
そして半刻後、テーブルに料理『らしき』物が並んだ。それを見て、女戦士と店主がつぶやいた。
「いったいどうやったら」
「失敗……出来るんだ!?」
目が点の女戦士と店主。リビング兼ダイニングのテーブルの上には、粉々になったサラダと、色のすごいスープ、ボコボコに切られたパンがあった。
「きっと、もっと火を使う料理だったら、今頃この店、大火事になっていたわ」
女戦士が淡々と言った。
「リリー!怖いこと言うなよ!!」
女戦士の言葉に、お嬢様はキッとにらんだ。
「仕方ないであろう!食べやすくしようと思っておったら、サラダは粉々になるし、パンは切りにくくて、ボコボコになってしまったのじゃ!!」
お嬢様は腰に両手をやり、非常に横柄な態度で言っていた。
逆ギレだ!
気づくと遠くで、老執事が頭をペコペコ下げ続けていた。きっと、練習台になったに違いないと、店主と女戦士は直感した。
「まあ、サラダとパンならドレッシングとか、なんか塗れば食べられるけど……問題はスープだな」
店主はそう言って、恐る恐るスプーンを口に運んだ。
――ゴクンッ
その瞬間、動きが止まった。
はて?と、お嬢様は思った。
続いて女戦士も口に入れると、そのまま二人して、またまた目を点にして止まっていた。
「何じゃ!そんなに不味い訳があるはず……」
お嬢様も口に入れた。
止まった。
「きゃー!すまぬ、皆すまぬ!!わらはは塩コショウと、なにかを間違えたみたいじゃ!?」
「何と間違えれば、こんな味が出せんだよ!?」
『そんなに色々、調味料はないぞ!!』
と、店主は言おうと思ったが、さすがに言いすぎか!と、思ってやめた。
その時、店主と女戦士の二人の視線が、「味見して!」と、ばかりに老執事に行ったが、老執事は勘弁してくれとばかりに、首を横にブンブン振った。
本当にもう、助けてください!!と、言わんばかりの姿から思うに、もうすでに、そうとうな被害者なのだろうと、二人には予測された。
「なあ、てかこれそもそも、出汁(だし)入れてないだろ?」
店主はスプーンですくってタラタラとさらにこぼした。
「なんと、ダシじゃと?」
お嬢様は、なんのこっちゃ!と、いう顔をした。が、思い出したようだ。
「あっーーー!……出汁を!!忘れておったーーーーー!!!」
叫ぶお嬢様。はあ~!と、頭をかかえる店主。女戦士はあきれ顔だ。老執事はペコペコバッタだった。
「仕方がない。でも、もったいないから、もう一度温めて、作り直すけどいいか?」
店主は女戦士に聞いた。女戦士は言った。
「ジャックが作るなら」
店主は、お嬢様の意見は聞かず、みんなのスープを回収した。そして調理場に持って行くと、もう一度鍋に入れ水増しし薪(まき)に火を点け沸騰させた。
煮沸した所で、薪を取り出し火を弱め、そして、粉状の簡易出汁を入れた。それからさらに残り全部の薪を取り出し、火を止めたあとで塩コショウをした。
「もう、ちょいかな?」
最後に酒を入れ、味を調整した。
「多分、これで大丈夫だ!」
さてさて、リビング兼ダイニングのテーブルの上に、スープが運ばれた。まず、お嬢様の前にスープを置くと、お嬢様は口に運んだ。みんなの視線が、お嬢様に集まった!
「おっ、美味しいぞよ!!」
お嬢様は、ビックリした顔になった。それを見て、女戦士は安心した。
「では、私も食べる。私、お腹すいた」
こうしてやっと食事に、ありつけたのだった。
【ステータス】
☆お嬢様
・料理中は、ノースリーブの少し胸元のあいた丸首の黄色いワンピース!エプロンは店主の物(ダンガリー)
・負けるな!攻めるぞ!!食事中は、ピンクのフワフワのパーティドレス!(ググれ!裏地は最高級だ。店主が手直し中に着替えた!!)
・頑張りました!靴はピンクのパンプス3㌢
・パンツは、紐パンピンクだお!!
・もちろん、リボンも細ピンクだ!!!
★女戦士
・第二ボタンまで開けた白のカッターシャツ(すそは出して、腕まくりしてる)
・黒のミニスカート
・ガーター+網タイツ→略して、ガー網タイ!!(全部黒だよ!)
・靴は赤いパンプス、なんと7㌢!(で、店主とキスしやすい感じ!?)
・とにかく黒の下着上下!
・小娘なんか、相手にしてない!!
つづく
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