第17話 ―最低な寝床!?―★

「水浴びてこいよ」


 お嬢様に向かって、店主は言った。三百回も鞘走りをしていたので、汗びっしょりだった。


「では、そうするのじゃ」


店の二階には浴室もあってそこで、水浴びが出来た。


 その間に、女戦士が夕御飯を作った。細長いパンを斜めに切り、それを焼いたものと、塩茹での肉、サラダ、そしてシチューを並べていた。飲み物は、水とワインだった。


「すっきりしたのじゃ!」


 水浴びをしたお嬢様は、頭にタオルを巻いて現れた。服も着替えていて、綿の薄緑で、丸首の長袖を着ていた。ズボンは深緑だった。


「出来たわ」


 さてさて、みんなで夕食の時間となった。でも老執事は、食べずに立っていた。店主が誘ってみたのだが、老執事はきっぱりと言った。


「あとで頂きますので」


 さすがは『執事』が本業だ!?


 女戦士は布製の生成りのカッターシャツに着替えていた。下は、すぐに戦えるような薄茶のズボンだった。


 上は生地の厚いYシャツを着ていたが、第二ボタンまで開けられた胸元から、大きな胸の谷間が見えた。


『むーーー!』


 お嬢様は自分の胸と見比べた。悔しかった。


「では、いただきまーす!!」


 店主は言うと皆、食べ始めた。


 しばらく雑談をしながら食べた所で、お嬢様が質問した。


「所で二人は、付き合っておるのか?」


 お嬢様の突然の抜刀!鞘走りだ!!


「ブフーッ!!」


 これには店主も受け切れなかったようで、深く入ったようだ。


 その様子を女戦士は、ジッと見ていた。老執事はそんな三人を見て、ニコニコしていた。


「一緒に戦った仲間。大切な」


 店主の代わりに女戦士が答えたが、意味深なニュアンスだった。その言葉に店主が無頓着に答えた。


「ああ、一緒に色んな所へ行ったなあ。冒険したり傭兵やったり」


 店主は、きわめて明るく楽しそうに言う。


『男は、みんなこうなのか?』


 お嬢様はジッ観察した。


「初めて、背中を任せられる相手だと思った」


 女戦士のつぶやくような言葉。


「俺だってそうさ!」


 と、すかさず答える店主。


『めちゃくちゃ悔しいのじゃ!!』


 と、思ったお嬢様。「なんかつまらん!」と、お嬢様は言いそうになったが負けた気になるので、グッとこらえた。だが、かわりにこう言った。


「冷めると美味しくないから、早く食べるのじゃ」


 それに店主が答えた。


「それもそうだ!せっかくリリーが作ってくれたんだしな」


『むーーー!』


 どうも面白くない。「そうではないじゃろー!」と、お嬢様は叫びたかった。が、気づくと夕食が終わっていた。


 夕御飯の片づけが終わった。


「えっと泊まる部屋だけど、部屋は二つしかないから、お嬢様は」


 店主が言った。


ギロッ!


「お嬢様じゃと?」


 お嬢様はにらんだ。あわてて店主は言い直した。


「いや、ロニーはリリーと一緒な!俺は老執事さんと」


 と、いう所で老執事は言った。


「わたくしめは馬車で寝ますから、お気になさらずに」


「なら、ロニーが部屋を使っていいわ」


「ではリリーは、どこで寝るのじゃ?」


 お嬢様が聞くと、女戦士は言った。


「ジャックの部屋の床で」


『ジャックの部屋じゃと~!?』


 お嬢様は、頭がクラクラしそうだった。


『というかジャックだ?店主はジャックというのか!いや、呼び捨てが気に入らん!いや、問題はそこではないのじゃ!同じ部屋とは……何なんじゃ!!』


 女戦士が店主の名前を呼ぶ事!さらには、同じ部屋!という事に、お嬢様は目を見開き……




 キレた!

 

「ちょっと!それはないのではないか!?」


『言ってしまった!!わらはの、ばかばかばかばかbんあかかk』


 その時だった。


「だよな!一応、リリーも女だし、俺が床で寝るから、リリーがベッドで寝ろよ。お前の方が疲れてるんだからさ」


「わっ!わらはだって、鞘走り三百回で疲れておるわ!というか、なんで二人一緒の部屋なのじゃ!!」


 女戦士が言った。


「ロニー独りの方が、ゆっくり寝られるかと思って」


 お嬢様の頭の中ではひたすら、ジャックと言う呼び方と、同じ部屋で寝ることが、とにかくグルグルしていた。


「でも、ロニーがジャックと一緒の部屋になりたいなら、私が独りで寝る」


「ちょちょちょっと!それは!?///」


 お嬢様は嬉しさを隠しながら、チラチラと店主を見た。


「ところで、ジャックはどう思うのじゃ?」


 お嬢様は恐る恐る、ジャックと呼んでみた。


『ジャックと呼んでしまったのじゃ!!』


 が、店主はそんな事は気にしてないようで、淡々とこう言った。


「よし分かった!俺は一階のカウンターで寝る!……それじゃあ、解散!!」


 そう店主は言うと、二階のダイニングから一階の店のカウンターに行ってしまったのだった。


「では、わたくしめも失礼します。お休みなさい」


 老執事は馬車へ向かった。お嬢様と女戦士は、部屋に向かった。


 一階の店のカウンターの上で、毛布をかけ横になる店主。


『てか、なんで俺は、カウンターで寝るハメになってんだ!?最低~!!』


 店主は、そう思いつつカウンターの上で眠った。


 それから、しばらくしてだった。




――ギシッ


 店主は気配に目を覚ました。店主は、その気配の方を見て驚いた。


「なっ!なんて格好してんだよ、お嬢様!?」


 驚いた店主は、カウンターの上で体を起こした。


 月明かりの中、金髪を下ろし、薄ピンクのネグリジェ姿になったお嬢様がそこに居た。


『後ろからの光で、透けて見えてるって!!てか、気づいてないのか!?』 


 ネグリジェからは、お嬢様の体が少し透けて見えていた。ピンクのパンツと、ツンと上向きのピンクのつぼみが見えた。が、その事を店主は、言うにいえなかったのだ。


「お嬢様ではない、ロニーなのじゃ!仕方なかろう。この格好でなければ寝られんのじゃ。というか、さすがに恥ずかしいから、あんまりジロジロ見るでない!」

 

 やはり、透けている事に気づいていない。お嬢様は、寝具を見られた事に恥ずかしがっていた。店主は、仕方がないから目をそらしながら言った。


「じゃあ、せめてなんか上に着てから来いよ!……ロニー」


 店主は、なんとかお嬢様を名前で呼んだ。


「そうなのじゃが……」


『お気に入りの可愛いネグリジェなのじゃが……』


 複雑な気持ちの、お嬢様のようだった。


 でもずっと、こうしていても仕方がないので、店主は自分のカッターシャツを脱ぎ、お嬢様の肩にかけた。


「ほら!」


「ありがたいのじゃ、ジャック。あと部屋の事は、すまぬ事をした」


 お嬢様は、なんか塩らしくなっていた。


「あれから、リリーと話をしたのじゃ」


 お嬢様は大きなシャツの襟すそを両手でつかむと、無意識に店主の服の匂いを、大きく息を吸っていた。


『ああ、もうわらはのバカ!』


 お嬢様は、自分で気づいて顔を真っ赤にしていた。


 結局、お嬢様と女戦士が話し合い、一緒の部屋、一緒のベッドに寝る事になり、店主は自分の部屋で寝る事になった。


 自分の部屋に戻った店主。


「あー!今日はなんだか疲れたー。なんかマジ、訳分かんね!!」


 そう言ってウォッカを煽り、すぐに眠りについたのだった。


【ステータス】


☆お嬢様

・ちょっと透けてた!薄ピンクのネグリジェ

・なんかモヤモヤした気持ち

・なんか取られたくない気持ち

・ジャックと呼べる事が嬉しい気持ち

・あの女とは戦争だ!!


★女戦士

・寝る時用の大き目のYシャツ

・お嬢様の知らない店主の過去

・やっぱり黒の下着上下。網タイツも持っている

・もちろん、ガーストもっていりゅ!

・小娘は眼中にない


※応援してくれたみんな!お待たせしました!特に、き○み○ど○いさん!!どうすか!?


つづく

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