第16話 ―最狂の女!?―

 今日からは、正式に習えるとあって、とにもかくにも嬉しそうな、嬢様が裏庭にいた。


「お師匠!」


 お嬢様は、キラッキラの目で言った。うわー!恥ずかしい!!と、思った店主は言った。


「店主でいい!」


 そういうと 今度は上目遣いで、お嬢様は言った。


「では、先生殿~!」


『どこでこういう言い方を覚えてきたんだ!?』


 店主は、一瞬たじろいだが言い返す。


「だから店主!!」


 しかし、お嬢様に負けない。


「わらはは、そういう事をしっかりしておきたいのじゃ!」


 お嬢様は、初めて店に来た時のように、腰に両手をやり店主に言った。


『なんで、今度は高圧的なんだよ!!』


 なのでまた店主も言い返した。


「じゃあ、もう破門だ!!!」


 店主は迷惑そうな顔をした。


「えー!それはないじゃろう!?」


 はたから見たら、とても楽しそうな二人の姿があった。


 その時だった。


「こんにちは」


 お嬢様の知らない女の声がした。お嬢様が見るとそこには、真っ直で長い黒髪の、赤いマントがひるがえる、息を呑むような綺麗な女戦士が居た。


『す、凄く綺麗なのじゃ!!』


 お嬢様は、そんな人間を初めて見た。歩くだけで、その場から華が咲くような。彼女が息をするだけで、空気が甘くなってしまいそうな。そんな大人の女性だった。


「おっ!久しぶり」


 店主が軽く挨拶をする。


『ムッ!!この感じ』


 お嬢様は店主の挨拶を見て、裏庭に来た来客に対し直感的に不機嫌になった。自分にも特定であるが、八方眼がある気がした。


『もしや……抜刀準備か?』


 お嬢様は、心の剣に手をかけた。


「こんにちは」


 お嬢様に向かい、女戦士は淡々と挨拶した。さっきも淡々としていたが、そのニュアンスの違いに、お嬢様は気づいていた。


「お初にお目にかかる」


 お嬢様は高飛車になった。


「貴女は?」


 女戦士は、気にも留める様子もない。


「後から来たのだから、まずはご自分の名前から名乗ってはどうじゃ?」


 軽く、水面下の鞘当て。女戦士は少し考えてから、お嬢様に言った。


「そうですね、ごめんなさい。私の名前はリリー」


『勝った!』


 お嬢様は、心の中でガッツポーズをした。そこに老執事が入って来た。


「まさか!あのリリーさんですか!?」


 女戦士の名前を聞いて、老執事が目を丸くして驚いていた。


『ゲッ!何かやばそうなのじゃ』


 お嬢様は警戒した。


「そう、疲れ果てるまで戦う、狂戦士(きょうせんし)の……リリーです」


 そう言うと、女戦士は苦笑いした。老執事は慌てて口に手をあてた。


「これは大変な失礼を致しました!」


 老執事は深く深く頭を下げ、うっかりした事を言ったと謝罪した。


「じゃあ、リリーの剣の調子を見ようか?」


 店主はいつもの事のように、女戦士に言った。店主が女戦士の名前を呼んだ時の、その言い方に、お嬢様はピクンッとした。


『リリーじゃと?』


 お嬢様は随分と親しい匂いを感じた。


「いいの?」


 お嬢様は女戦士の言葉に、またまたピクンッとする。


『こやつ!感情を表さないタイプらしいが……絶対に出てるのじゃ!!』


「わっ、わらはは?」


 お嬢様は店主と女戦士の間に入った!どうにか、この雰囲気を変えたかった。


「えっと、じゃあ。お嬢様は鞘走り百回な!」


 お嬢様を、店主のつれない返事が刺す!


「むーーー!!」


 お嬢様は二人の感じに、異常に不機嫌になった。


「じゃあ、リリー。調子を見る為に手合わせするぞ。いいか?」


「いいわ」


 と、言うが早いか、店主と女戦士は抜刀した。


―シャンッ!シャシャシャシャ!!


――シャキンッ!!!


 火花が飛びそうな勢いで打ち合っていた。でも、激しくこすれる音しかしていなかった。


『本当の剣の戦いは見たことあるのか?』


 お嬢様の頭の中で、店主の声が聞こえた。老執事との戦いとは違う、本当の剣の戦い方だった。


『凄いのじゃ!』


 その様子に圧倒され、お嬢様の手が止まる。


『本当に刃は、ぶつからんのじゃな!削っておる。互いの剣が削りあっておる!!』


――シャンッ!シャシャシャシャ!!


『それに劇みたいな鈍い音ではない。もっと高い音なんじゃな!』


―シャキンッ!!!


「おい!余所見すんな!!あと百回追加な!!!」


『なんと!!打ち合いながら、こっちを見る余裕があるのか!?』


 と、お嬢様は思った。とはいえ、言葉が突き刺さる!


「むーーー!!!」


 お嬢様は八つ当たりのように……


――ブン


―カチン


――ブン


―カチン


――ブンッ!


 とにかく、鞘から剣を抜いては戻していた。


「手を抜くな!振り回すな!鞘を走らせたら、剣をしっかり返し、引け!!」


「むむむむーーーー!!!」


 マジ涙目のお嬢様。そんな事は気にせず、店主は女戦士に向き合っている。


「リリー、剣の材質を変えてみるか?多分、もっと硬くてもいいかもな」


「それで頼む」


――カチン


 と、女戦士は剣を鞘にしまった。それを感じるお嬢様も、別の意味で女戦士にカチンだった。


「じゃあ、あとは二階で休んでろ」


 店主は女戦士にから剣をもらいながらそう言った。すると、女戦士は当たり前のように言った。


「分かった。夕御飯は何がいい?」


『なんなのじゃ!その生活を一緒にしている風な言い方は!?』


 そう、お嬢様は思った瞬間、思いを声に出していた。


「なにっ!夕御飯とは!?」


 お嬢様に、店主は言った。


「手を止めるな!」


 お嬢様の質問に女戦士が答えた。


「泊めてもらうお礼に、いつも作ってる」


 見えない戦いが続く。


「なんとっ!泊まってる!?」


「時々、ここに来るから、二階に私の部屋があって荷物も置いてある」


 この一言に、お嬢様の動きが完全に止まった!


「動きが止まってるから、あと百回追加!!都合、三百回な!!!」


「なら!何百回でもやろうではないか!!」


 お嬢様は、叫んだ!そして涙目で、鞘走りを続けた。


 日も暮れた頃、店の中で剣を作り直している店主の所に、お嬢様が来た。


「終わったか」


「わらはも……」


「なんだ?」


 店主は頭を上げて、お嬢様を見た。お嬢様は、しぼり出すような声で言った。


「わらはも食べるし、泊まってくのじゃ!」


 でも、店主は軽くあしらう。


「お嬢様は自分の屋敷に帰って!食って!!寝ろ!!!」


 店主は冷たく言った。


「いやじゃ!それに、わらはの名前は、お嬢様ではない!ロニーと言う名じゃ!!」


 店主は、面倒臭そうに頭をかいた。


「じゃあ、分かった!ロニー……屋敷に帰れ!!」


「そっ、そうじゃないもんっ!」


「急に子どもになって泣くなよ!!」


 お嬢様の目に大粒の涙が浮かんでいた。


「あーーーーーん」


『はあ、面倒臭い!大泣きかよ!!』


 あきれる店主。ふと目を上げると、お嬢様の後ろで本気で申し訳なさそうに、老執事が深々と頭を下げていた。


「あーーーーー、もう分かったよ!お前も夕飯食べてけ!」


「とっ、泊まるのは?」


 涙目の上目遣いで言う、お嬢様。もはや反則だ!


「分かった!泊まってけ!!」


 店主が大きなため息をついていると、お嬢様が跳びかかってきた。


「うわっ!」


「やったのじゃ!!」


 もう、泣いてなかった。


「だから、いちいち抱き付くな!!」


 店主は思った。







『これってなんか、だまされた感じ!?』


【ステータス】


☆お嬢様

・現在、最高の両手持ち剣(重心柄、重さ中、柄太め、刃小幅、肉中厚)

・リボンは、細い紫色

・動きやすい服装(浅黄色のすそが少し長めの丸首、綿の長袖。ズボンも同じく浅黄色。肌着はピンクのボタン止めのノースリーブ)

・茶色の軽めのブーツ

・『正中心』『突き』『受け返し』『抜刀・縦横』『鞘走り』

・なんかモヤモヤした気持ちと、ピンクのリボン付きパンティ。


★女戦士

・真っ直で長い黒髪

・皮製の服

・ミスリル製の『鎖かたびら』『ブーツ』『腰当て』『胸肩鎧』『腕当て』

・赤いマント

・最高の剣(詳細不明)

・黒の下着上下


※次回予告!

  応援してくれたみんな!!お待たせしました!!!


  次回!お楽しみに!?(特に、き○み○ど○いさん!!)


つづく



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