途中休憩 その一

第14話 壊れた人形が動き出す瞬間

 ノックの音がする。何度も何度も。

 僕は明かりをつけていない部屋の中で、ドアを見ていた。

ビリビリと震えている。

 一頻りドアは連打されると、静かになった。

彼(彼女?)は去っていったのだろう。

 今夜は明りを燈けられない。押入れの一番奥に置いた

テレビをヘッドホンで見よう。


 昼が来ていた。

何もする事が無い、今日も。

 うつらうつらと想像している、そうでなかった過去。

どんなに失敗したような選択でも、奇跡的に結末は上手くいく現実。

「そうやったんよ。実はね」

 明るい日差しの中、遅い昼飯を食べにいく。誰も僕を見ていない。その日最初の、おそらく最後の歩行。


 終わりは唐突にやって来た。

目の前で学生課に内線電話をする教授。

「学生に就職が決まりましたので、退学の手続きを・・」

 事をそんなに迅速に運びたいんやなぁ。

まあ、そりゃそうだろうね。


 少し早く仕事が終った今日の夕方、GPZ900Rで近くの峠を流した。

昔の事を思い出しながら。


 あの日も、僕はこの道を走っていた。

働く事が決まった日、白いGPz250で。

In a blue knife,moonlight gather up (月明かりを集めた、蒼白いナイフ)

The cross that mirrors you who lost the way(十字架は道を失った君を映している)

Now go get on a journey with a carved dream(きざまれた夢と共に、今は旅に出ないか?)


誰も覚えていない歌を、つぶやきながら、妙な安堵感につつまれて。


 壊れた人形は動き出した。

そいつは人になったかな?


元ネタは・・・

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