第7話 第四夜 彼らとの違い
カトマンズから一端西に走ると、ムグリンって町でだいたい昼飯になる。
カトマンズは巨大な盆地だから、市外に出ようとなると、盆の淵を超えねばならない。淵に向かう登りはまだ良い。単に自転車とバイクとリキシャと自動車が入り乱れて走っているだけだ。
車間距離なにそれ、ウィンカー?目視とミラーで確認しろよ、事故りたくない奴が。大型のバスやトラックの方が偉いのさ。偶にランクルとか見ると金持ってそうで、これはこれでやばいよね。
下りが酷い。舗装はされているけどひたすらつづら折れが続く。
そこをブレーキ効くの?っていう過積載ダンプが煙出しながら下って行く。
けど淵を超えたら、空気が美味くなるのよね。
ムグリンはハイウェイが分岐する所だ。西に向かえばポカラ アンナプルナ山群が見られる。かつてのヒッピーの聖地。いまでもこの国屈指の観光地。南に下りれば最終的にはインドに繋がる平原になる。
こういう町は大体街道に沿って長距離バスの旅客やトラックの運転手を相手にする食堂街と、ガソリンスタンドと車の整備工場などが並んでいることが多い。
昼前にその町に着いた私は、片側がオープンテラスになっている手近な食堂の一軒に飛び込んだ。いつものネパール定食(ダルバートと言う)を食べ追えてプラッスチック製の椅子に腰掛け町の様子を見ていた。
引っ切り無しに長距離バスが出入りする。それぞれのバスは決まった店が有るかのように、適当にばらけていろんな食堂の前に駐車する。中から大勢のお客が降りてきて、ぞろぞろと食堂に入って食事や買い物などをしている。中には西洋人らしきバックパッカーもちらほらと混じっていた。
「ヘイ。ミスター」
呼ばれて私は振り返る。そこにはチョコやスナックを入れた籠を持った男の子が二人立っていた。 兄弟だろうか。声をかけて来た方が6~7歳位、その後ろに3歳位の子が立っていた。
彼は籠をこっちに寄せて「チョコ、スナック、タバコあるよ」って言ってきた。
籠の中には地元のタバコが幾つかと、チョコバーとスナック菓子の小袋が綺麗に並んでいた。
幾らだ?って聞くと、割と妥当な値段だったのでチョコバーを一つ買った。
煙草をふかしながら考える。
別に善人ぶるつもりはない。
時々旅していてちょっと困った気分になる。今回もそうだ。
ここの男の子達日本の子供たちと、何が違うっていうのだろう?
年は大して変わらない。
けどかたや、昼間から大人相手に働いて、こなた3歳くらいから保育園、幼稚園。6歳に成ればまず小学校に行ける。
この両者にどんな違いがある?
生まれた国がって言うのは簡単だけど。
それに対して私は何も出来ない。 チョコバー一個買ってやるだけだ。
したり顔や同情心を持つなんて、おこがましい。
ただ許されるのは、何も感想を持たないで通り過ぎる事だけなのだ。
Hypericum
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