第1322話 どキングエルフさんとエルフナラティブ

【前回のあらすじ】


 破壊神ライダーンの巨砲が天を裂く。

 知恵の神アリスト・F・テレスの使徒デラえもんを倒して決着かと思われた本章。しかし、今回の章は破壊神にも挑む物語でもあった。


 まるで、ここまでのトンチキに「真面目にやらんか!」とツッコミを入れるように、空から落下してくる【MM砲】。既に、センシティブパワーを使い切った女エルフにはこれをどうすることもできない。


 このままコロ○ー落としを喰らって死ぬしかないのか。


「あぁ、誰かあのコロニーをどうにかできる奴はいないの!!」


「いるさ!! ここに一人な!!」


 その時、エルフが叫んだ。

 別に赤くもなんともない、なんだったら肌色の覆いエルフが叫んだ。

 手に持ったのは、かつて女エルフから渡された【ELFの銃】。そして、キッカイマンと合体する時に使った【サイコ銃】の二挺。


 その二つを天に掲げてキングエルフは落下してくる【MM砲】を見上げた。


「いるさ!! ここに一人な!!」


「いや、なんべん言うんだそのパロ!!」


◇ ◇ ◇ ◇


「「「「「「キングエルフ!!」」」」」」


「フェラリア!! ここは私に任せろ!!」


 叫ぶ男騎士パーティーにウィンクをして空に銃を向けるキングエルフ。その二つの銃口は落下してくる【MM砲】を捉えていた。


 ELFの中のELFが使うことができる【ELFの銃】。

 そして、キッカイマンことELFと合体するためのアイテム【サイコ銃】。

 二つの神秘の力を持った銃を天に向けて、キングエルフが静かに瞑想する。


「この世界を創りたもうし人の神よ。ここに神々の時代は終り、人の時代が訪れようとしている。我は人と共に歩むエルフなり。そして貴殿らの子のELFなり。人の代わりに、神の理から外れし私が、神の使徒たる身体で叫ぼう――」


「すごい!! 兄貴がまともなことを言っている!!」


「神よ、人にこの世界を譲る時が来たのだ!! 神堕の逆撃つ雷砲を受けよ――【ELFの銃】&【サイコ銃】のダブルシューティングだ!!」


 引き金にキングエルフが手を添えたその時、まるでその気迫に巻かれたように激しい風が辺りに吹きすさんだ。落下してくる【MM砲】の熱波に当てられた熱い風は、キングエルフの腰に巻いた白い褌を激しくたなびかせた。


 そして――。


「あぁん!! こんな大事な時に褌が!! エッチな風さん!!」


「「「「「「なにやってるんだキングエルフ!!」」」」」」


 キングエルフの下半身をかろうじて守っている布を取り去ってしまった。


 それはあまりにも突然で、そしてあまりにも爽やかな風の悪戯だった。

 チ○チラ。ぶるりたなびくキングエルフの立派なそれ。そこも鍛えているのかいと言いたくなるような、男らしい三本目の銃に女エルフたちは目を瞑った。


「この大事な局面になにやってんのよバカ兄貴!!」


「仕方ないだろう!! 風が急に吹いたんだから!! そういうのは大自然に言ってくれ!!」


「大自然の中に生きるエルフでしょ!! それくらいなんとかしなさいよ!!」


「……エルフだから、フル○ンでも恥ずかしくないもん!!」


「恥ずかしいわ!!」


 アホな会話でラストシューティングが頓挫する。

 ふんどしを巻こうにも、風に吹かれて彼の白い布はどこへやら。もはやどこにもその姿は見つからなかった。


 内股になりへっぴり腰で空に銃を向ける益荒男エルフ。

 しかし――そこにはいつもの勇壮さは微塵も感じられない。涙を浮かべて、もじもじとその立派な隠すに隠せない、第三の砲をぶら下げて彼は呟いた。


「くっ……殺せ!!」


「ここでくっころする意味あったか!!」


「待て、キングエルフ!! 諦めるにはまだ早いぜ!!」


 その時、彼を見守る群衆の中から飛び出した影が一つ。赤い鎧を纏った仮面の騎士がさっそうと、キングエルフの股間の前に立ち塞がったのだ。

 彼は身を挺してリーダーの股間を守った。


 思わず、キングエルフが涙を浮かべたまま仮面の騎士を見下ろす。


「すまないセイソ!!」


「なに良いってことよ!! 俺とお前の仲だろう!!」


「そう言ってくれるか……なら、もうちょっと密着してくれると助かるんだが」


「それはことわる」


「あと、今更だけれど乳首も丸出しなのが……」


「今まで丸出しだったじゃねえかよ……」


 今度はきゅっと肩幅を狭めて胸を隠そうとするキングエルフ。

 流石の仮面の騎士も、股間を隠しながら乳首を隠すような器用なことはできない。

 やはりここまでか。せっかくラストシューティングの準備が整ったというのに、褌を風に吹かれて失ったばかりに、人類は滅びてしまうのか。


 そんな人類滅亡嫌だなぁ、と誰もが思ったその時、またしてもその中から人影が飛び出した――。


「まったく!! 何をやっているんですか二人とも!!」


「「アレックス!!」」


 少年勇者だ。

 今度は少年勇者がキングエルフの前に飛び出した。

 彼はむき出しになったキングエルフの胸板を絡みつくように隠した。


 ○ンコと違って、こっちはまだなんとか密着できる余地のある部分だが――やはり少し身体は退いていた。

 そこはもう仕方なかった。

 

「僕が乳首を隠します!! ですからセイソさんはそのまま股間を!! キングエルフさんは、どうかコロニーを射撃してください!!」


「……すまない、君のような少年に乳首を隠させてしまって!!」


「……大丈夫ですよ。もう、馴れました」


 やつれた顔をする少年勇者。

 女エルフたちが「ちょっと見ないうちに、作品の色に染まっちまったなぁ……」と哀れみの視線を向ける。そんな視線を振り払って「早く撃ってください!!」と、彼はキングエルフを叱咤した。


 二人の部下の献身にキングエルフが男泣きする。そんな涙が零れぬよう、再び天を向いた彼は――。


「このポーズってなんかあれだな。ガンダム○Tみたいだな」


「「今はもうそのネタ擦るのはいいでしょ!!」」


 クライマックスとは思えないアホな感想を述べるのだった。


 まぁ、たしかにナラティブな格好だった。

 その前にセンシティブだけれど。


「嫌だわ。全裸の男が、その全裸を隠すために男に囲まれて、最後の一撃を放つとか。いったいどういう需要があるのよ」


「本当ですね……」


 呆れかえる女エルフと女修道士シスター

 その前で、キングエルフが高らかに叫んだ。


「もう一度言おう!! 神よ!! ついに地にその身を堕とす日が来たのだ!! 喰らうがいい――【ELFの銃】&【サイコ銃】のダブルシューティングだ!!」



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