第1321話 どエルフさんとすごく濃いのが出た

【前回のあらすじ】


 ○サトさんの特攻を受けいよいよデラえもんと戦うことを強いられた女エルフ。

 ジャイアントエルフを駆り、【性闘衣】を身に纏った彼女が逃げることを、仲間達は許さない。「戦え」「戦え」と呪詛のように響く仲間の声に、女エルフはまたしても自分の内側に閉じこもった。


「戦えモーラさん!!」


「戦うんだフェラリア!!」


「戦いましょうモーラさん!!」


「戦うんだぞモーラ!!」


「戦ってくださいお義姉さま!!」


「戦わないのならなんでジャイアントエルフに乗ってるんです!! マスター!!」


「うるさい……うるさいうるさいうるさいうるさい!! 黙ってよ!!」


 世界を拒絶する女エルフ。

 しかし、その耳に死んだはずのあの女の声が聞こえる――。


『○ンジくーん!! ダメよ、○ンジくーん!!』


「……まだなんか聞こえておる!!」


『○ンジくーん!! このままじゃ、悪霊退散健康マッサージを受けて、昇天しちゃうわ!! それじゃダメよー!!』


「悪霊退散健康マッサージて(※だから検索しないでください)」


『大丈夫。ほら、深呼吸して。ゆっくりと手を挙げて。それからこう言うのよ――』


 ○サトさんの幽霊(海母神マーチ)に付き添われて女エルフがその腕を上げる。

 指先をデラえもんに向けると、彼女たちは声を揃えてとある呪文を唱えた。


『「白色破壊光線ボンバー!!!!!!!!」』


 今、この戦いを決着させる、最後の光が放たれる――。


◇ ◇ ◇ ◇


【魔法 白色破壊光線ボンバー: スタンダードな無属性攻撃魔法。魔法のエネルギーをそのまま相手の胸にシュートする技。女エルフもちょいちょい使ったことがある。言い方を白色破壊光線ボンバーと変えただけである。しかし、たったその一言に力が宿るから魔法は不思議――】


『ぎええええ……!!!!』


 ジャイアントエルフの手から放たれた巨大な白色破壊光線ボンバーが、デラえもんの身体を包み込む。指先から出たはずのそれは、なぜか円錐状に広がり巨大なマザーコンピューターの身体を包み込んだのだ。


 それだけではない。


『な、なんてエネルギーだ!! こんなエネルギー喰らったことがない!!』


 デラえもんの身体に照射される破壊光線は従来の倍、いや3倍、10倍――とにかく比較にならないほどの出力だった。ハイメガ粒子砲を遙かに超える強力な光線。

 今までに出したことがないほど濃い破壊光線が、女エルフの指先からあふれ出ていた。それも怒濤の勢いで。


「こっ、これがまさかセンシティブパワー!!」


『そうですモーラさん!! 貴方の白色破壊光線はセンシティブパワーにより強化されました!! 今、ジャイアントエルフの指先を経由して照射されているのは、間違いなく貴方が放った魔法!!』


「そんな――こんな濃くて多い破壊光線はじめて!!」


『ナチュラルにセクハラっぽいこと言いましたね。良い感じにセンシティブパワーが溜まってきていますよ。その調子です』


 センシティブパワーとは?


 なんにしても指先から飛び出した破壊光線の威力に女エルフは驚愕した。

 そして、それをまともに正面から喰らってしまったデラえもんは――。


『まっ、まさか!! この僕がこんな単純な破壊光線に押し負けるなんて!!』


「単純な破壊光線で悪かったわね!! 魔法は火力!! いつだって、どんな時だって、魔力のステータスが高い方が与ダメージは高いのよ!!」


『くそっ、そんなTRPGの理屈でトドメを刺すな!!』


「滅びろこの南の大陸を支配し続けた邪悪な叡智よ!! ここに悪しき夢は潰える!! 人類にこの世界を完全に明け渡す時が来たのだ!!」


『エルフの身でそれをほざくか――!!』


 最後の悪あがきとばかりにデラえもんが破壊光線を浴びながら前進する。

 バラバラに剥がれる装甲で近づいてくる彼。それを迎えうつジャイアントエルフ。


「くっ、このままじゃ競り負ける……!!」


『安心してくださいモーラさん。まだ、大丈夫。貴方には余力があります』


「……マーチさま!?」


 もはや海母神だということをおくびにも隠さなくなった○サトさんの偽物。

 そんな彼女のシルエットが女エルフに再び重なる。


 親子かめは○波よろしくの――。


『「三倍甲王拳レッツゴー陰陽師!! 白色破壊光線ボンバー!!」』


 海母神&エルフのダブル白色破壊光線ボンバー!! さらに、そこに界王拳で底上げされたエネルギーがデラえもんを貫く。

 より太く、より膨大な、そして濃い魔力の奔流にさらされて――ついにデラえもんの巨体がその場で静止した。


 白目を剥いて、きゅうと舌を出して、コミカルな感じで。


『そんな、ごめんよアリスト・F・テレス。僕じゃやっぱり、新人類を想像することはできなかったよ……』


 最後はこてんと倒れたデラえもん。女エルフが大量に出した白色破壊光線によって、ついに南の大陸を覆う巨悪は倒されたのだった。


 そして――。


「倒したはいいけれど、これ、二度と使いたくない技よね」


『そんな!! 神の力を借りて放つ、キメ技なのに!!』


「せめて名前をもっとこうマイルドに言えないかしら?」


『したらばウーメンズビームとか?』


「まだ白色破壊光線ボンバーの方がマシだわ」


 数年(実時間)にわたって彼女達を苦しめ続けた敵との最終決着だというのに、技の名前のダサさについてケチをつける女エルフなのだった。


 流石だなどエルフさん、さすがだ。


『待てお前達!! 勝利を確信するのはまだ早い!! 上空に巨大なエネルギー反応が確認された!!』


『だおだお!! 熱帯密林都市ア・マゾ・ンに向かって、高速接近!!』


『なんということだ――まさか、破壊光線に呼応したか!!』


『「え、えぇっ!?」』


 すっかり決着と思って油断していた女エルフと海母神マーチ。限界まで稼働した、ジャイアントエルフが空を見上げれば――青色のそこに落下してくる透明の筒。

 あれはそう、かつて女エルフ達が登った施設。


 全ての欺瞞を曝く光を放つ巨大な光学兵器。

 イーグル市上空に浮かぶ破壊神の残した神造遺物。


 空飛ぶ巨砲【MM砲】だった。


 大気圏突入の摩擦で赤く燃え上がる【MM砲】。元ネタよろしく、人が居住できるほどの大きさのそれが、大地に落下すればひとたまりもないことになるのは必至。

 どうしてこのタイミングで落ちて来たのか――。


『まさか、デラえもんがアリスト・F・テレスの試練だとしたら、この【MM砲】落としは破壊神の試練だというのか……!!』


『なんにしても、このままじゃまずいんだお!!』


『ジャイアントエルフで受け止められるか? いや、とてもじゃないが、その装備じゃ無理か……』


「そんな!!」


『なんということ!! こんな最後の最後で、まさかライダーンが介入してくるだなんて!! まさか私がモーラさんに手を貸したから!! もうっ、本当に融通が利かないんだから!!』


「そんなのいいからどうにかなんないの――あぁ、誰かあのコロニーをどうにかできる奴はいないの!!」


「いるさ!! ここに一人な!!」


 その時、エルフが叫んだ。

 別に赤くもなんともない、なんだったら肌色の多いエルフが叫んだ。

 手に持ったのは、かつて女エルフから渡された【ELFの銃】。そして、キッカイマンと合体する時に使った【サイコ銃】の二挺。


 その二つを天に掲げてキングエルフは落下してくる【MM砲】を見上げた。


「いるさ!! ここに一人な!!」


「いや、なんべん言うんだそのパロ!!」


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