第1320話 どエルフさんと白確破壊光線

【前回のあらすじ】


 ○サトさん暁に死す。


 デストロイモードで【性闘衣】をまとったことにより、センシティブが高まりすぎて行動不能になってしまった女エルフ。一歩でも動いてしまえば、見えてはいけないものが見えてしまいそうなその格好では、確かに迂闊に動けない。


 そんな彼女に発破をかけるべく、○サトはシーマ村船長操る宇宙戦艦で、デラえもんに対して特攻をしかけた。


 あの曲を口ずさみながら――。


「神話になれ!! どうして神話にならないの○ンジくーん!!」


「うるさい!! そんな細かいネタいちいち拾ってくるな!! やっぱり偽物じゃねえか!!」


 ○サトさんじゃなかった、よく似た船長だったんだワ。

 ニッチなネタで最後まで女エルフを攻め抜いた海母神マーチ。はたして彼女の献身は、女エルフの心に響いたのか。起動することができるのか。


 ついに今週も半ば。残すところあと二話。

 どエルフさんVSデラえもん最終決着と言っておきながら、主人公がまさかの戦闘放棄という異常事態にどうなるどエルフさん。


 いったいいつまでこの部を続けるつもりなんだ――。


「まじで、書籍化で完全にこの話の書き方が変わっちゃったわよね」


 書籍化もいいことばかりじゃないですね。

 引き延ばすようなスタイルになってしまったのは、本当によくなかったなと思っております。あるいは、大長編の体力がついたとでも言っておけばいいのかもしれませんが――。


◇ ◇ ◇ ◇


「○サトさんが死んでしまった。私は、いったいどうしたらいいんだ」


 デラえもんに弾き飛ばされ大破した宇宙戦艦。

 先に特攻をしかけ、割と善戦していた宇宙戦艦オーカマと共に、紅のリリー・マルレーンは、熱帯密林都市ア・マゾ・ンの大地に眠った。


『ふふふ、変身したみたいだけれど、操縦者の心が折れてたらどうしようもないね。これはもう買ったも同然』


『お義姉さま!! どうか立ち上がってお義姉さま!! ここで貴方が戦わなかったら、世界は終ってしまいます!!』


 勝利を確信してほくそ笑むデラえもん。

 傷を負いながらもジャイアントエルフ二号機で善戦する新女王。


 炎に包まれる密林都市。死と破壊が蔓延る未来都市を前に、「あぁ、あぁ……」と力なく声を上げる女エルフ。まさか彼女を救うために持って来たはずの【性闘衣】が仇になるとは。


「戦うんだモーラさん!! その服はそのためのものだろう!!」


「立てフェラリア!! 全エルフの威厳が、今お前の肩に掛かっているんだぞ!!」


 男騎士とキングエルフが戦えと女エルフに発破をかける。


「だぞ!! モーラ!! ここで退いたらダメなんだぞ!!」


「モーラさん、恥ずかしいかも知れませんが大丈夫!! 巨乳は怖くない!! おっぱいは友達です!! その身体を使うことをどうか恐れないで!!」


 無事に破壊工作を終えて、攻カク○頭隊の基地に避難したワンコ教授と女修道士シスターもその応援の声に加わる。


「マスター!! そんなに私が編んだ【性闘衣】が嫌なんですか!! ティトさんにアドバイスをもらってせっかく編み直したというのに!! 私のこのやりきれない想いを、どうしてくれるんですか!!」


「やはりあの野郎の仕業か!!」


 ダブルエントリーしているELF娘の発破もかかる。これはちょっと、女エルフの心を動かした。だがしかし、依然として立ち上がるだけの力にはならなかった。


 どうすれば女エルフは戦うのか。

 デストロイモード+【性闘衣】という、ほぼ『動けば勝ち確』という状態にもかかわらず、沈黙を続けなければいけないのか。


「いい加減にしろ!! こちとらそろそろ女装ネタもきつくなってんだぞ!!」


「真面目に世界を救ってください!! モーラさん!!」


 仮面の騎士と少年勇者も交じって罵声を浴びせる。


 いつしか、女エルフの周りの人間は「彼女が戦わないことに憤りの感情」をぶつけはじめた。


 どうして強大な力を持っているのに戦わないのか。

 世界を救える才能があるのにそれを使わないのか。

 逃げてしまうのか。


 女エルフの心の弱さを誰もが無遠慮に罵った――。


「戦えモーラさん!!」


「戦うんだフェラリア!!」


「戦いましょうモーラさん!!」


「戦うんだぞモーラ!!」


「戦ってくださいお義姉さま!!」


「戦わないのならなんでジャイアントエルフに乗ってるんです!! マスター!!」


「うるさい……うるさいうるさいうるさいうるさい!! 黙ってよ!!」


 またしても、なんか○バーっぽい展開になってきた。

 世界を拒絶する女エルフ。


 やはり、彼女の手に人類の未来を握らせるだなんてまずかったのだ。

 デストロイモードの負荷が高すぎたのだ。

 【性闘衣】のサイズは小さすぎたのだ。


 後悔しても、もはや手遅れ。


『きゃああああっ!! お義姉さまぁあああっ!!』


「え、エリィ!!」


 ジャイアントエルフ二号機を放り投げるデラえもん。勝利を確信した起き上がりこぼしが、満を持して女エルフの方へと向かってくる。


『くくく、次は君の番だ。大丈夫、僕がすぐに天国に送ってあげるよ』


 そう言って、彼はその丸い手を回転させる。

 きっとドリルのつもりなんだろうが、卑猥なアレにしか見えなかった。


 デラえもんの魔手が女エルフが乗るジャイアントエルフに伸びる。

 このまま、そのウワキツコスチューのまま、それを当ててしまうのか。


 その時、女エルフの耳にあの懐かしい声が聞こえた――。


『○ンジくーん!! ダメよ、○ンジくーん!!』


「……まだなんか聞こえておる!!」


 ○サトさんの声だった。

 死んだはずの彼女の声が彼女には届いていた。


 いや、そもそも神だから死んでいなかった。

 アレはなんというか、壮大な海母神マーチの自作自演だった。

 そういう所までなにかと芸が細かかった。


『○ンジくーん!! このままじゃ、悪霊退散健康マッサージを受けて、昇天しちゃうわ!! それじゃダメよー!!』


「悪霊退散健康マッサージて(※検索しないでください)」


『自分を信じて!! やり返すの!! 貴方にはその力がある!!』


「けど、どうやったらいいんだよ!! 分からないよ○サトさん!!」


『大丈夫。ほら、深呼吸して。ゆっくりと手を挙げて。それからこう言うのよ――』


 まるで女エルフのすぐ隣に海母神がいるような心地だった。

 彼女に誘われるように女エルフは構えをとる。腕を上げ、その指先をデラえもんへと向けた女エルフ。海母神の魂を背中に感じながら、女エルフは呟いた――。


 海母神の言葉に合わせて。


『「白色破壊光線ボンバー!!!!!!!!」』


 青白い破壊光線がジャイアントエルフの指先から照射される。

 それは力強い本当に力強い光だった。


 邪悪なものを全て吹き飛ばす、純粋な魔力の光だった――。

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