第1314話 どELF娘と完全版【性闘衣】

【前回のあらすじ】


「お前、そんな格好で俺に勝って本当にいいのか!!」


「なに!!」


「エルフリアン柔術は弱きエルフのための武術!! なのに貴様、その格好はいったいなんだ!! エルフだったら――全裸で来い!!」


「うむ!! まったくもってその通り!! キングエルフ裸で参る!!」


 という間抜け極まりない展開を見せた男騎士VSキングエルフ。

 迫り来る敵に「全裸でなくていいのか?」と尋ねる男騎士もやばいが、それに「その通りだ!」と応じるキングエルフもヤバい。久しぶりにこのどエルフさんに出てくる主要キャラクターたちの闇を感じさせる展開だった。


 まぁ、一番ヤバいのは、こんな小説を延々書き続けている私なんですがね。


「どうした? なんか調子悪いの? お姉ちゃんが話し聞こうか?(大阪のノリ)」


 久しぶりに徹夜でゲームして手が震える状態で書いています。(ガチ)

 いい歳なので原因不明の身体のしびれや頭の痛みとか怖いですよね。


 健康なウチにデビューして、もっといろいろ書きたかった。


「まぁ、仕方ないわよ。人生なんだもの。これからは、自分の好きなことのためだけに人生使いなさいな」


 いや、割と使ってこれだから絶望しているのよ……。

 もっと売れてえ……。


「OH……」


 クライマックスなのに作者のメンタルが死!! こんな状態ではたして書き切れるのか!! どエルフさん、もう半年くらいやってるクライマックス編――そろそろ本当に終ります!!


◇ ◇ ◇ ◇


「どうしたことだろう、まるで心の重荷が全て取れたようだ。こんなにすがすがしい気持ちになったのは久しぶりだ。これがELFとの融合」


「俺もよく分からないまま勧めてみたが、気に入ってくれたようで何よりだ」


「今なら武術家として、そしてエルフとして、一皮剥けられそうな気がする」


「おいおい、もう剥くような服は持っていないだろう?」


 どわっはっはっはと笑い合う男騎士とキングエルフ。

 失われた友情はたった一枚、服を脱ぐだけで修復された。もともと、人の精神に感応して狂化させる効能がある【ダブルオーの衣】。それを着ていたのが間違い。

 脱いでしまえばすっぱり元通り、優しく度量に溢れるキングエルフに戻った。


 そう、いつだって大切なのは相手との冷静な対話なのだ――。


「こんなんで【性闘衣】を取り戻したって言ったら、マスター怒るだろうなぁ」


 ELF娘は納得していなかったが。


「すまなかったリリエルどの。私が勝手に作りかけの【性闘衣】を着てしまったばっかりにこんな騒動を引き起こしてしまって」


「そして、冷静になると普通に紳士な対応なのがまた腹が立つ。マスターが蛇蝎の如く嫌っているのも納得ですね」


「いや、フェラリあのあれは照れ隠しだよ。年の離れた兄妹。それも、つい最近までその存在を知らなかったのだ――無理もないさ」


「ほんと絶妙に腹が立つ」


 正気に戻ったキングエルフ。ついでに姿格好も、合体前のキングエルフに戻っていた。ELFとの融合ということで、どうなることかと思ったが――外見的な変化は特にない様子。


 D○の神とマ○ュニアの合体みたいなモノだったのだろう。

 エネルギー的な部分だけ合体したということらしい。


 あふれ出る内なるパワーにポージングを決めるキングエルフ。それを眺めて、ほうほうと分かってるのか分かってないのか頷く男騎士。


 こいつらに関わっていては話が進まない。


 さっさとELF娘は【性闘衣】の完成のための作業を始めた。


「さぁ、それでははじめましょうか。神より与えられた、神を殺すための宝具。人間の可能性を引き出すための可能性の鍵。内なる宇宙を燃やして輝く、これは人を人たらしめる奇跡の衣」


 作りかけの【性闘衣】が分解されて糸へと戻る。

 まるでその繊維のひとつひとつが意思ある生命体のように蠢いたかと思えば、ELF娘の頭上で丸い球体を形成する。

 さらにELF娘は残りの【ダブルオーの衣】を取り出す。


 その細い身体が真っ二つに開いたかと思えば、幾つもの腕と手が【ダブルオーの衣】へと伸びる。【性闘衣】を編むための糸へとそれを還元するべく、彼女の身体から伸びる腕は【ダブルオーの衣】を裁断し、解き、そしてよりあわせた。

 そうして糸へと還元された神造遺物が再び赤い球体となって彼女の頭上に揺れる。


「破壊神ライダーン。七つの柱のどの神よりも慈悲深く、どの神よりも実直で、地に満ちる人の子達の為にその荒ぶる力を封じた大神よ。その片鱗をここにお借りする。ここに顕現せよ【性闘衣】。破壊神よりその守護者を命じられた、リリエルの名においてここにその封印を解く」


 宙に浮かぶ赤い糸の玉がぎゅっと収縮したかと思うと次の瞬間には衣に変わる。

 神造遺物【性闘衣】。蓋を開けてみればそれは、絢爛豪華な真紅のバトルドレス。ファンタジー小説の女ヒーローが着ているようなものだった。


「……ほう、これが【性闘衣】か。破壊神が残したアイテムにしては、なんだかその風格を感じないな」


「まぁ、これから着る相手のためにチューンナップしてありますから。【性闘衣】は、基本的に身に付ける者の身体に合わせてその形状を変えます」


 食いついてきたのは男騎士。

 破壊神陣営が有事に備えて用意していたアイテム。その存在は知っていたが、こういうものとは――としげしげと完成した【性闘衣】を見つめた。


 急に彼が首をかしげる。


「待ってくれ。これは本当にモーラさん用なのか?」


「はい、マスターの今の体型に合わせてチューンナップしているはずです」


「いやそんなはずはない!! 俺の知っているモーラさんの身体はこんなんじゃなかった!! もっとこう、胸の辺りとかが薄くて!!」


「それは……今、センシティブ効果でちょっと増量中で」


「あと、腰の辺りもこんなにくびれてない!! だらしない系エルフのモーラさんには、こんなメリハリの利いた衣装は着られない!!」


「貴方、一応マスターのパートナーなんですよね!!」


 パートナーだからこそ分かる相手の些細な肉体のディティール。

 細かい所にツッコミを入れる男騎士。まさか自分が長年連れ添ったエルフが、ボインボインの爆乳センシティブエルフになっているとは露ほども思わないだろう。


「とにかく!! この衣装ではモーラさんが着ることができない!! やり直してくれ!!」


「……えぇ」


「人類を救うためなんだ!! モーラさんの身体のことなら、この世界の誰よりも俺が良く知っている!! その俺が言うのだから間違いない!!」


 男騎士は強固にELF娘に衣装の作り直しを求めた。


「別に胸のサイズが合わなければパットとか入れればそれでいいじゃないですか」


「この大舞台でモーラさんに恥をかかせられるか!! ただでさえ、人の前に出すのも恥ずかしい貧乳なのに!!」


「愛しているのかバカにしているのかどっちなのか」


 厄介な人と縁を結んだものだなとELF娘は静かに自分の主人の身の上を案じた。

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