第1312話 どELF娘さんとキングエルフ3

【前回のあらすじ】


 デラえもん、コツカケする。


 露出していた臀部のコア(ON/OFFスイッチ。)を守るため、デラえもんはそれを体内へと吸収した。そもそも、コアを露出した状態にしているのがおかしい。そんな無防備な状態でどうするんだ。体内に取り込むのは自然の流れだった。


 しかし取り込むのは尻の排気口から――。


「排気口だから、深い意味はないから!! どうか許して!!」


 そもそも元ネタには穴なんてないだろ。

 ロボットやぞというツッコミはやめてもろて。


 なんにしてもデラえもんは尻の排気口にコアを隠すことで、女エルフの養母が操るジャイアントエルフの猛攻から逃れたのだった。まるで、薄い本に出てくる悪魔系の女の子のような感じで――(よいこのみんなはうすいほんかえるようになったら、いろいろよんでみようね! katternお兄さんとのやくそくだ!)。


 流石にちょっと本編が汚くなってきたので視点を変えますね。


「おい!」


 キングエルフが持っていった【性闘衣1/2】を求め、地上に降りたELF娘。彼女は無事にキングエルフを見つけることができたのか。

 そして、【性闘衣】を完成させることができるのか。


 がんばれELF娘。

 お前の頑張りにこの大陸の未来がかかっている――。


◇ ◇ ◇ ◇


 場所は変わってジャイアントエルフが射出された地下研究施設の中。

 秘密裏に造られたその建物。神の使徒さえ把握していない建造物の中を、ELF娘は直感だけで駆け抜けていた。


 目指すはキングエルフが向かったジャイアントエルフの格納庫。

 ――ではなく、男騎士が入っている培養槽のある場所。


 ジャイアントエルフが射出された今、キングエルフは本来の目的である男騎士の始末に向かったと考えたのだ。流石はまだパーティーに加入して間もないELF娘。頭脳派(ツッコミ)とは違って、的確な判断だった。


「仲間同士で争っている場合じゃないというのに。いったいなんなんでしょうね、あの人たちは」


 そしてごもっともなツッコミだった。


 この人類の危機にいったい何をしているのか。仲間内で揉めるのはけっこうだが、それは先にデラえもんを倒してからではいけないのか。

 そもそも勝手にキングエルフが【性闘衣】を持っていかなければ、こんな面倒ごとにはならなかった。センシティブにパワーアップした女エルフと【性闘衣】の力で、一瞬で戦いは決着していたはずなのに。


「とにかく、一刻も早くキングエルフさんを見つけて正気に戻さないと……」


「おっと、誰を正気に戻すって?」


「!?」


 突如としてELF娘の頭上に降り注ぐ声。

 仰ぎ見たその先――配管の隙間から降りてきたのは間違いない。


 神秘のアイテム【性闘衣】の力で怖い顔になってしまった――キングエルフ3。

 禍々しい黄色い闘気をまとって彼はゆっくりと彼女の前に降り立った。


「なるほど、フェラリアの代わりにお前が出向いたか小娘。しかし、エルフの中のエルフであるこのキングエルフに、貴様のようなモブエルフが敵うと思ったか」


「……随分と舐められたものですね。マスターのお兄さんということで、私もできれば話し合いで解決したい所でしたが、言葉の通じる相手には思えません」


「実力行使しようというのか!! 面白い!!」


「力に溺れ、欲に溺れたその目を拓いてあげましょう!! 覚悟!!」


 ほとばしる闘気で向かってくるキングエルフ。それに向かい構えるELF娘。

 悲しいかな、どうして二人が争わなければならないのか――そう思った次の瞬間、二人の間に一つの影が割り込んだ。


 華麗に宙返りをして割り込むと、両者の拳を素手で止める。


「双方ここは押さえろ!! 今は、モーラさんとデラえもんの戦いが優先だ!!」


「「お前は……ムラクモ!!」」


 黒いスーツに身を包んだスタイリッシュなELF。

 攻カク○頭隊の少佐だった。


 そして――。


「やっと見つけたぞ!! ティトロット!!」


「ティトロット? どうしたんだいったいキングエルフは……?」


 中身は男騎士。

 この南の大陸を救うため、ELFの身体を遠隔操作している、我らが主人公であった。荒れ狂ったキングエルフの事情をどうやら彼は知らないようだ。


 当然、憎き仇の出現に落ち着いていられるはずがない。純然たるキングエルフの殺意が少佐を襲う――。


「ここで会ったが百年目!! お前に騙されてこんな顔にされてしまった恨み、晴らしてくれようではないか!!」


「こんな顔って……うぉ、よく見ればなんか濃くなっている!!」


「貴様の勧めに従って、ELFと合体したらこれだ!! どうしてくれる!! この俺のイケメンエルフ顔が台無しなじゃないか!!」


「いや、エルフにしてはお前はイレギュラーな存在だったような」


 問答無用とキングエルフが少佐に殴りかかる。咄嗟にガードの体勢に入った少佐だが、キングエルフの動きの方が早い。あっという間に肉薄された彼女は、肩からタックルを食らって秘密基地の壁に激突した。


「ぐわぁああああっ!!!!」


 どれだけのエネルギーが籠められていたのだろう。壁を突き破り、配管を破壊して少佐の身体は飛んでいく。まるで砲弾のように、攻カク○頭隊の基地を破壊して進んだ身体は、大きな広場に飛び出してようやく静止した。


 そこには緑色の培養液に浸され、口にマスクをつけた男騎士の姿が――。


 少佐の開けた穴の向こうについに目的の男の姿を見つけたキングエルフ。


「そこにいたか!! ティトロットォオオオオオオ!!」


「ダメです!! 逃げてくださいティトさん!!」


 闘気をジェットエンジンのように弾けさせて飛んだキングエルフが、培養槽の男騎士へと迫る。


 身動きの取れない男騎士。

 このままではキングエルフのタックルの餌食になる。

 哀れ、ELF娘を遠隔操作していたのが仇となったか――。


 割れる培養槽のガラス。

 飛び出す緑色の培養液。

 キングエルフの闘気が閃光に変わって弾ける。


 その中で――。


「落ち着けキングエルフ!! 何があったか知らんが話せば分かる!!」


「ティトさん!!」


「ちぃっ、意識を取り戻したかティトロット!! 眠っていればいいものを!!」


 少佐への遠隔操作を解いて、咄嗟に男騎士が向かってくるキングエルフを受け止めた。遠隔操作をしているためラグがあるELFの身体。しかし、直接戦闘であれば戦士技能が高い男騎士にも、戦闘マシーンと化したキングエルフと五分に戦えた。


「落ち着けキングエルフ!! まずは何があったか説明しろ!!」


「うるさい!! もう貴様の口車などに乗るものか!!」


 がっぷり組み合う男と男。

 キングエルフと男騎士が手を掴んでお互いの身体を押し合う。


 身に纏った【性闘衣】により増強された闘気をこれでもかとぶつけるキングエルフ。それをまともに正面から喰らいながらも一歩も引かない男騎士。

 二人の男の溢れんばかりの闘士に、男騎士が眠っていた培養槽のガラスが、まるで弾けるように四方八方に爆散した。


 どうやら主要キャラ二人の戦いは避けられそうにないみたいだ。


 男には譲れぬ戦いがある。

 ELF娘にはもう、この成り行きを見守ることしかできなかった――。

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