第1309話 どエルフさんとマミーシステム

【前回のあらすじ】


 引き続きデラえもんVSジャイアントエルフ、南海頂上決戦(大作映画風)。

 デラえもんの攻撃をモロに喰らってダメージ累積した女エルフ。このままでは、ELF娘が【性闘衣】を持ってくるまでに彼女の体力が尽きてしまう。


 そう判断した海母神は、女エルフにジャイアントエルフのコントロールをシステムに移動する『ダミーシステム』の利用を提案した。

 しかし、実際に起動したのは――。


『あ、すみません。いつもの名乗りを忘れていましたね……はーい!! どうもこんばんエルフ!! 森を焼かれて街に出て来た哀れな放浪エルフこと、400歳エルフVTuberの夜田ネロです!!』


「お養母さん!?」


『エル民のみんな!! それじゃいつもの挨拶行くよ――「ドドン、ドドンがドン!! 全エルフ系VTuber1美しいのは誰だ!! ドドン、ドドドン、ドン!! ネロ様!!」』


「挨拶変わってるやんけ!!」


 女エルフの養母の人格を強制的に召喚する『マミーシステム』だった。


 これ、元ネタわかりますかね?(某世界三位のVTuberのお母さんネタ)


「あのVTuber、ときどきそうやって家族の話題が出るけれど、本当に仲良しって感じが伝わって来て見てて楽しいわよね……」


 Vネタで家族話は割と強い。

 けど、一般人だから擦りづらい、ってのはありますよね。


 という訳で、ここで女エルフの養母が参戦。なんかよく分かってない感じというか、ゲームをしているノリのようですが――はたしてどうなるどエルフさん。


◇ ◇ ◇ ◇


「意識をトレースするってどういう意味よ!! まさか、お養母さんになにかダメージが行くようなことはないでしょうね!!」


『大丈夫よシン○くん!! お養母さんにフィードバックが行くことはないわ!! ただし、逆にお養母さんの恥ずかしいノリがフィードバックされるから――そこん所は覚悟しておいて!!』


「覚悟て!!」


 いい歳したエルフのさらに母親(養母)の痴態とか、もうウワキツ意外のなにものでもない。いや、エルフとしては清楚な感じのエルフの養母だ、きっと大丈夫。

 胸に手を当てて「大丈夫、きっと大丈夫だ」と女エルフは自分に言い聞かせた。


 いきなり開幕のメッセージが、個性の強いのに変わっていたのにはビビったが。


『はーい、それじゃこの野蛮世紀エルフゲリオンのゲームシステムについて説明していくね。このゲームはですね、私が得意としているアクションゲームでして』


「するするはじめたわね」


『このエルフゲリオンを操縦して、次々やってくる敵から街を守るという、とてもシンプルなゲームなんですね。ちなみに、エルフゲリオンの装備はいろいろあるんですが――基本的に、敵の装甲が鬼なのでほぼ役に立ちません』


「どんなゲームよ」


『ただ、敵キャラごとに弱点がちゃんと設定されていまして。それを的確についていく――という、ちょっと頭がいるゲームですね』


 流ちょうにゲームのシステムを解説していく女エルフの母。

 だいぶ配信馴れしている。いったいどれだけ配信を重ねれば、ここまでするっと解説できるようになるのだろうか。


 養母の知らざる顔を知ったばかりの女エルフだったが、さらに闇の深さまで垣間見ることになるとは。さっそく彼女の覚悟が揺らいだ。


『えーっとですね、それではさっそく戦闘をはじめていこうと思うんですが』


 じろりと女エルフの養母――が操るジャイアントエルフがデラえもんを眺める。

 ちょっと雰囲気が変わった敵の様子に、警戒モードに入っていたデラえもん。一応、銃口をジャイアントエルフの方に向けながらも、そちらから仕掛けてくる気配はない。


 そんな敵をじろじろと見据えて『うぅん……?』と女エルフの養母が唸った。


『弱点のコアが見当たらないですね。敵はコアが露出しているはずなんですが』


「そりゃそうだわよ。だってこれゲームじゃないし」


『まぁ、そういう敵も中にはいます。ある程度、戦闘を続けるととコアが露出して、攻撃箇所が分かるようになったり。なので、まずはちょっと戦闘していきましょう』


「完全にゲーム実況のノリじゃん……」


『という訳で、いつもみたいに行ってみましょうか――うっらぁあああああああ!! ○ねやゴルァアアアアア!!』


「ちょっと待って!? お養母さんって、絶叫系VTuberだったの!?」


 絶叫系でした。


 世の中には色んなタイプのVTuberがおり、ゲームのプレイスタイルや雑談のスタイルも多岐にわたりますが、こういう風にゲームに熱が入るあまりに絶叫してしまうタイプのVも存在するのです。


 というか、これだけ三期生ネタを擦っておいて、彼女だけハブるとかないでしょ。

 それにほら○バーですし。


『丸々とした身体しやがってよぉ!! コアどこに隠しとんじゃコルァ!! さっさと出さねえか!! その○の中か!! それとも○かち割れば出てくるんか!! ったく、配信序盤のボスなのに厄介なの出てきやがってよぉ!!』


「……あぁ、養母の怒声が普通に耳に痛い。というか、内容もなんていうか、いつもの感じからは考えられない」


 清楚キャラほど一回壊れると脆いですからね。(元ネタ感)


 さて。

 流石にアクションゲームが得意と言っただけはあり、マミーシステムがトレースしたジャイアントエルフの動きはなかなかのキレだった。先ほどまでの、暴走モードによるゴリ押しではなく、的確に立ち回ってダメージを与えている感じ。


 さらに容赦の無い怒声がデラえもんのメンタルも削る。


『くそっ!! 急にちょこまかと!!』


『ヘイヘイヘーイ!! そろそろへばって来たんじゃないの!! おらっ、こっちこっち!! いやぁ、エルフゲリオンは古いゲームなので、操作性がマジで死んでて、ちょっと先読みして動かさなくちゃいけないんですけれど――今日はやけに思い通りに動いてくれますね?』


『くそっ、もう一度――劇場版で利用頻度が一番高い奴レールガン!!』


『はーい、予備動作で射撃攻撃回避余裕でしたぁ!! おらぁっ、クールダウンで動きが遅くなってるだろ!! ここが狙いどきじゃ!! おらっ、コア出せコア!! さっさとコアを出せやゴルァアアア!!!!!!!!』


 女エルフの養母の容赦の無い攻めぶり。

 エントリープラグ内で女エルフは絶句する。


 これはもう、最初からマミーに任せておけばよかったのでは?

 そんなことを考えながら、自分では手も足も出なかったデラえもんを、蹴り回す姿を彼女はスクリーンから眺めているのだった。


「しかしまぁ、まさかお母さんがここまで肉弾戦が得意だとは」


『母は強し。そういうことですね。元ネタ的にも』


「いやまぁ、そうなんだけれど。こんな展開になるとか誰も思わないでしょ?」


 僕も思っておりませんでした。

 やっぱり、勢いだけで突っ走る小説ってのはダメですね――!!

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