第1308話 どエルフさんとダミープラグ

【前回のあらすじ】


 デラえもんVSジャイアントエルフ。

 暴走モードに入ったジャイアントエルフの圧勝かと思いきや、そこは伊達にもこちらの世界で一番知名度のあるロボット。

 ジャイアントエルフの猛打を全て受け流して、さらには反撃に出てくる。


 暴走モードに入れれば勝てるかと思ったがそんなことはない。

 普通に強敵を引いたら転落はあり得る。最近はそういう台が多いんじゃ……。


「いや、最近っていうほど、アンタもう行ってないじゃないのよ」


 五年くらい前の感覚でパチ&パチスロを語ってる感はありますね。

 暴走モード、なんですぐ終ってしまうん。スロでもそこまで乗らへんのん。


 確変も上乗せ特化ゾーンも信用ならへんのじゃ。

 やっぱりギャンブルする人間に大切なのは剛運。


 某○術の秤パイセンみたいなお座り一発的な強力な運気が必要なのだ――。


「はいはい。ギャンブルへの恨み節はその辺にして」


 拮抗するデラえもんVSジャイアントエルフ。このまま戦ってもまだ戦力差が埋められないと判断したELF娘は【性闘衣】を完成させるべくコクピットを脱出する。

 一人、ジャイアントエルフの中に残された女エルフ。はたして、彼女一人でELF娘が【性闘衣】を完成させるまで持ちこたえることができるのか。


 デラえもんの必殺劇場版で利用頻度が一番高い奴レールガンはすぐそこまで迫っている。


 はたして、女エルフの運命は。


◇ ◇ ◇ ◇


「うぉりゃぁっ!! なにがレールガンじゃ!! ジャイアントエルフの胸部装甲を舐めるなぁっ!!」


『なっ、無茶よシン○くん!! デラえもんが使うその砲は、劇場版で幾多の修羅場をくぐり抜けてきた実績のあるアイテム!! まともに喰らったら命がない!!』


「なにを言ってるか分からんなぁ!! せっかく膨らましたこの胸を、こういう所で使わずにどうするっていうのよ――!!」


 デストロイモードに変形したことにより肥大化した女エルフの胸部。

 明らかに大きい部類に入るそれ。弄るだけで薄い本なら10ページは稼げそうな魔乳を手にして彼女は構える。


 見据えるは砲撃の瞬間。


 暴走モードから一時的にコントロールを戻した女エルフは、目の前の劇場版で利用頻度が一番高い奴レールガンを構えるデラえもんを睨み据えた。

 大丈夫だ、女エルフもまた冒険者。

 この手の修羅場、命の駆け引きには馴れている。


 デラえもんの手の筒が激しい火花を散らす。撃ち出されたのは鉛の球。元ネタとは違う。しかし、レールガンの当て字に違わずその射出速度は音速を超えた。

 飛び出す銃弾に音が遅れて聞こえる――そんな一撃を。


「奥義!! 魔乳弾丸挟み!!」


 とても当て字もつけれぬような必殺技で女エルフが受け止めた。精妙無比、弾丸の軌道に合わせて開けられた胸の谷間。そこに誘い込むと、摩擦力と包容力で鉛玉の勢いを殺していく。

 その谷の底につく頃には、弾丸の勢いは殆ど萎えていた。


 おそるべし――鍛え上げられた乳の威力。

 そしてデストロイモードのどエルフさん。


 見たかと女エルフが勝利を確信したとき――。


「バカめ、それは囮よ!!」


『……ぐふぅっ!!』


 強烈なソニックブームがジャイアントエルフの胸部を襲った!!


 そう、発射された弾頭は照準をつけるためのもの。劇場版で利用頻度が一番高い奴レールガンの本命の攻撃は、射出と同時に生み出されるソニックムーブ。

 弾頭に遅れて着弾した防御不能の衝撃に打ちのめされて、ジャイアントエルフがその場に膝を突いた。


 やはりデラえもんの方が一枚上手。道具の使い方、戦いのやり方、全てにおいて女エルフを上回っている――。


 膝を突いたジャイアントエルフに、ファーストコンタクトと同じようにデラえもんの影がさす。今度こそ絶体絶命、返す手はないか。


『シン○くん!! 聞こえるかしら!!』


「なんですかマー……ミサ○さん!! 今、ピンチなんですから、しょうもないこと言ったら怒りますからね!!」


『二人で動かすことが前提のジャイアントエルフを、一人で動かすのは無理があったわ!! リリエルが【性闘衣】を用意するまで、貴方の神経系をエントリープラグから切り離すわ!!』


「切り離すって、じゃあどうやって戦えと!!」


『大丈夫!! こんなこともあろうかと、ダミーシステムをそのエントリープラグには搭載してあるわ!! 暴走モードもあるし、後はダミーに任せなさい!!』


「……ったく、分かったわよ!!」


 このまま戦っても不利と判断した女エルフ。素直に海母神のアドバイスに従う。

 操縦桿から手を離せば、暴走モードの表示と入れ替わりに『マミーシステム起動』の文字がスクリーンに表示された。


 これで、とりあえず自分にダメージが入ることはない。

 そう安心したのも束の間のこと――。


『はい、と言うわけでね。今回はこちら、『野蛮世紀エルフゲリオン2』のゲーム実況をやっていきたいと思います』


「!??!????!??!」


 突如としてジャイアントエルフがしゃべり出す。

 しかも、女エルフが知っている女性の声で。


 割と最近聞いたばかり。しかも、この世界の危機に何をしているんだと、呆れかえった相手。そして、最近なんか新しい趣味配信業をはじめたエルフ。


『あ、すみません。いつもの名乗りを忘れていましたね……はーい!! どうもこんばんエルフ!! 森を焼かれて街に出て来た哀れな放浪エルフこと、400歳エルフVTuberの夜田ネロです!!』


「お養母さん!?」


『エル民のみんな!! それじゃいつもの挨拶行くよ――「ドドン、ドドンがドン!! 全エルフ系VTuber1美しいのは誰だ!! ドドン、ドドドン、ドン!! ネロ様!!」』


「挨拶変わってるやんけ!!」


 それは女エルフの養母だった。

 そしてノリノリの配信開始挨拶だった。


「どういうことなのよこれ!! ダミーシステムじゃないの!?」


『……モーラさん、落ち着いて聞いてください。どうやら、弊社の技術スタッフが仕様書を読み間違えたみたいです』


「読み間違えたって!!」


『ダミーシステムを、マミーシステムって。強制的に、お養母さんの意識をトレースするように設計しているみたいですね』


「そうはならんやろ!!」


 けど、実際なっとるやろがい。

 ジャイアントエルフにダミーとして搭載された魂は女エルフの養母のものだった。まぁ、それも元ネタ準拠と言えば――許されるよね。


 作者のパロは悪くないよねぇ?(そらとぼけ)



 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る