第1302話 どエルフさんと強制顕現

【前回のあらすじ】


 ジャイアントエルフ起動準備完了。

 女エルフの遺伝子を元に作られた、巨大な汎用エルフ型決戦兵器が最終決戦を前にして姿を現わす。さぁ、プラグスーツに着替えて乗り込むのだどエルフさん。

 この世界を救うために、行くのだ――進撃のどエルフさん。


「最近、巨女ネタも流行ってきてるわよね。一時期はけっこう、特殊な領域の楽しみというかジャンルだったのに」


 そうですね。

 巨大な女の子に押しつぶされたい。

 大きくなった女の子のあれやこれやを眺めたい。

 あるいは、自分が小さくなって悪戯をうんぬんかんぬん。


 巨人少女ネタは昔からありましたが、今までは日向に出ることはなかった冥府魔道の嗜み。しかし、多くの同好の士達がそれとなく性癖を滲ませ、一般作品の中にこっそりと仕込んできた。その仕込みが、今、こうして爆発している。

 他の性癖もしかり。全ケモ。TS。男の娘。昔は知る人ぞ知る紳士の嗜みが、一般的なエンタメとして受け入れられている。


 本当にいい時代になったものですね。

 そして、その文化を築いてきた多くの創作者の方々には尊敬の念が絶えません。


 商業作家の端くれとして、私も先人達に敬意を――。


「はい、そろそろ500文字。あらすじのリミットよー」


 しかし、進撃の女エルフなど断固拒否!! 女エルフはジャイアントエルフの搭乗をしぶる!! さらに、キングエルフがそこに乱入し、妹の形をした汎用エルフ型決戦兵器を奪おうとするのだった――!!

 どうなるどエルフさん。乗るのかどエルフさん。いいのかこのネタどエルフさん。


『逃げちゃダメよ!! エ○ーに乗りなさい!! シン○くーん!!』


 そして聞こえる不穏なミ○トさんっぽい声の正体は!


 今週も、どエルフさんはじまります!


◇ ◇ ◇ ◇


 空飛ぶ船。それはかつて女エルフをイーグル市の地下ドッグへと運んだ宇宙船。

 呉服屋シーマ村の店長が、現役時代に使用していた戦艦だった。


 イーグル市から脱出する際にワンコ教授達が使ったのではなかったのか。どうしてそんな戦艦が、空を飛んでこちらに向かってきているのか。

 いや、そんなことよりも――。


「なんだ、あの舳先でガイナ立ちしている赤い服の女は……?」


「シン○くん!! エ○ーに乗りなさい!!」


「だから誰よシン○くんって!!」


 舳先に乗っている赤い服の女が気になる。

 筒状赤い帽子を被り、服はいつぞやみた海賊服。全体的に赤い格好。赤紫の髪色。そしてそこはかとなく漂うセンシティブな身体付き。


 新劇場版○ヴァQ以降のミサ○さんコスか?

 宝○マリ○の新衣装のコスか?


 判断に困る――。


「シン○くん!! 今からそっちに行くわよ!! シン○くーん!!」


「あーもう、五月蠅い!! なんなのよあんた!!」


 ひょいと船の舳先から飛び降りる赤い服の女。くるりと宙返りをすれば、かなりの距離から落ちたというのに軽やかに着地する。まるで重力を無視したような動きに、こりゃまた厄介な人物が出てきたなと女エルフが白目を剥く。

 そんな彼女に、ずかずかと赤い服の女は近づいてくると。ペシリとその頬をひっぱたいた。


「シン○くん!! 逃げちゃだめ!! 貴方がエ○ーに乗るのよ!!」


「いや、私はモーラやがな!! シン○くんちゃうがな!!」


「……いいわ、分かった。シン○くん。貴方はもう何もしないで」


「どっちやねん!! いい加減にせんとはっ倒すぞ!!」


 キレた女エルフだったが、振り上げた腕がぴたりと止まる。どことなく漂ってくる雰囲気。彼女から漂う臭いや、意味不明なセリフながらもこの独特で強引な勢いに、彼女は既視感を覚えたのだ。


 どこかでこの赤い服の女と自分は会っている。

 それも、そう昔のことではなくつい最近。


 いったいどこで――。


(モーラさん、ここは話を合わせてください。新劇版○ヴァパロディのノリで、私の言う通りに動いてください)


 心の中に直接話しかけてくるその声色は間違いない。


(マーチさま!? いったいどうして!? なぜそのような格好を!?)


 女エルフに対して割と親身になって世話してくれる七つの柱の一柱。

 女修道士シスターたちが崇める、教会の主神こと海母神マーチだった。


 いつも会うときは特徴的な髪型をしているのですぐ分かった。けれど、今日はそのお魚みたいな髪型が、すっぽりと帽子で隠されている。

 一目で分からなかったのは仕方がなかった。


 しかし、どうして隠れて出てきたのか――。


(破壊神と知恵の神の争いに、私まで参加しては収集がつかなくなります。これはあくまで非常事態措置。本来なら、出しゃばるつもりはありませんでした)


(いや、ほんとすみません……)


(いいんですモーラさん。貴方の気持ちはよくわかります。たとえどんな事情があろうとも、巨大化した自分に乗って暴れるなどしたくないですよね。それが乙女心というもの。私も、流石にはこれはキツいとみていられなかった)


(マーチさま……)


(しかし、そうも言っていられません。現状、この破壊神ライダーンVS知恵の神アリスト・F・テレスの戦いに、終止符を打つことができるのは、モーラさんしかいません。モーラさん、ジャイアントエルフに貴方は乗らなくてはいけません)


(……けど、流石にあれは)


(大丈夫!! そのために、私は貴方に力を与えたはずですよ!!)


 男体化した女エルフのポケットでそれが震える。

 この章で、海母神より授けられた携帯端末。スマートフォン。その中で稼働していたソーシャルゲームが、今、通知をあげる――。


『育成完了 SSSランク達成です!! おめでとうございます!!』


「……あ、UWA娘!! AUTO周回かけたままだった!!」


(そうですモーラさん!! ついに貴方は成し遂げたのです!! 私が出した課題をクリアした貴方には――今やセンシティブな力が宿っている!! それを使えば、ジャイアントエルフをさらにもう一段階進化させることが可能!!)


(つ……つまり!?)


(このまま、海賊になりたいコスプレ女に言われるまま、ジャイアントエルフに乗ってしまうのです!! 口車に乗せられて乗ってしまえば、後はあなたが 身に付けたセンシティブ力が、全てを解決してくれるでしょう!!)


 ようはつべこべ言わずに乗れというもの。

 しぶる女エルフを、なんとしてでもジャイアントエルフに乗せる。


 そんな気概を込めて、海母神の化身が叫ぶ――!!


「シン○くん!! エバーに乗りなさい!! わがまま言うんじゃありません!!」


「原作でそんなこと言わないでしょミサ○さん!!」


「いいのよ、私は葛城ミサ○のものまねをする、海賊に憧れたコスプレ女だから!! 多少のキャラブレは愛嬌ってことにして乗り越えられるわ!!」


「もうなんでもありじゃん……!!」


 女エルフ、ジャイアントエルフへの搭乗はもう避けられそうになかった。

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