第1301話 どエルフさんと最強のスーパーエルフ人

【前回のあらすじ】


 第十部最後の切り札。

 この長く辛い戦いを終らせるのは、マッドサイエンティスト達が作り上げた、巨大な決戦兵器。ロボットと互角に戦うことができる巨人だった。


 そう、エルフの――。


「エルフゲリオン!! またの名を、ジャイアントどエルフさん!!」


「……ちょっと待ってくれ」


 巨娘ならぬ巨エルフと化したどエルフさん。

 でかい、すごい、けど貧乳。未知の科学力で南の大陸に降臨した巨大なエルフ。


 こういうのも最近流行りですよね。ジャイアント女子。

 さぁ、その貧相な巨体で男を虜にするのだどエルフさん。

 進撃のどエルフさん、はじまるよ……。


「はじまって!! たまるか!! なんでこんなことになるねんや!!」


 エ○ァと言った、巨大な○波。クライマックスには、どエルフさん巨大化したろと虎視眈々と機をうかがっていた作者ですが、こうしてうまく事が運びました。

 あとはもう、このジャイアントどエルフで大暴れするだけ。


 いけ、ジャイアントどエルフ。悪を打ち砕くのだ。敵は全体的に丸いフォルムのロボットだ。絵面には気をつけろよ。


「こんな全方位に土下座しなくちゃいけないネタ書くんじゃないわよ。というか、もうほんと、アンタ一応これでプロなんだから……もう少しこう、手心を……」


 プロだから忖度してパロディやめてたら、僕はとっくの昔に売れっ子作家でさぁ。

 売れてこんな汚えギャグからはさっさと卒業してえ。


 ワイかて、こんなん書きたくないですばい。せやけど、人気作のネタに頼らんと人は読んでくれんのです。本は売れんのです。出せんのです。

 所詮、ワイの書くもんはその程度の……


「……あんた、またそうやって字数稼ぎを」


 はい、さっさと本編。


◇ ◇ ◇ ◇


『と、とにかくだお!! みてくれてはあれだけれども、これで充分『ド・ラー』と戦うことができるんだお!! 大丈夫なんだお!!』


「……みてくれが?」


『ヒック!! まぁ、たしかに膨らみが足りない気がするが、そこはおめえ急ごしらえで発酵が足りなかったからしかたあるめえよ……』


「……膨らみが足りない?」


『どエルフ線でも、胸部装甲を進化させることはできなかった。どうやら、人の進化と肉体の進化は別の力が働いているようだ。あるいは、遺伝子的な限界』


「……よし、浜乙女、お前は○す」


『とにかく、こちらの準備はできている。モーラさん、後は君がこのジャイアントエルフに乗り込むだけだ。人類を救うために、戦ってくれ!!』


「いやじゃこんなもん!! どうして私がそんなことせにゃならんのじゃい!!」


 作品クライマックスの激闘を女エルフは拒否した。

 巨大な自分に乗り込んで戦うという運命を彼女は受け入れなかった。


 乗れるわけないよ。女エルフの心は繊細な少年パイロットだった。

 いや、まぁ、そりゃ巨大な自分に載って戦えなんて、身も蓋もない要求をされれば受け入れられるかというもの。いきなりにもほどがあった。


「そんな!! モーラさんが乗らないなら、いったい誰が乗るっていうんだ!!」


『だお!! シンクロ率はモーラさんに合せて調整してあるんだぞ!! 乗れば自分の手足のように、ジャイアントエルフを操れるんだぞ!!』


『その巨体で全てを蹂躙する、巨大なエルフになりたくないのか、モーラさん。ひっく!!』


「そんなこと言われても……」


『胸部装甲が薄いくらいがなんだ!! そもそも、装甲自体があってないようなもんだ!! すっぽんぽん!! ジャイアントエルフ!! 裸の巨人が街を蹂躙する!! 巨人ものってのは……そういうもんじゃろがい!!』


「それが一番嫌なんだよなぁ……」


 悩む女エルフ。恥ずかしい役どころはたいがいやってきた彼女だけれど、全裸の巨人になって暴れるのはちょっとはじめての経験。

 乙女心――アラスリエルフ心が、それはちょっとできないわと待ったをかけた。


「せめて何か、着るものでもあれば話が違うんだけれど……」


『……だお!? なんだお!? 格納庫に異変が!!』


 ドクターオクトパスくんが急に切羽詰まった声を上げる。

 それと同時に、アラートがかまびすしく鳴り響く。


 緊急事態を告げるその音。少し遅れてアナウンスが入る。


『基地内に敵対勢力の侵入を確認。現在、隔壁を十二層まで突破。一直線に、ジャイアントエルフ格納庫に向かっております』


「なんですって!!」


『バカな!! 知恵の神側に、こちらの動向を見透かされていただと!!』


『まずいぞ、このままだとジャイアントエルフを奪われる――!!』


 敵の裏をかいたつもりがかききれず。知恵の神側もバカではない、攻カク○頭隊の存在を把握していたように、彼らの研究が完成した段階で奪いに来たのだ。

 そうに違いない。きっと第十三使徒のようにジャイアントエルフに侵入するに違いないのだ。ネチョられるジャイアントモーラさん。


 そんなエッチな展開あっていいのか――。


「やめて!! ただでさえ自分のコピーが闇堕ち敵キャラとして登場する展開は恥ずかしいのに、巨大化してとかほんと耐えられない!!」


「マスター、ツッコミがニッチすぎます!!」


「あと……せめて闇堕ちバージョンは胸くらいは大きくして!!」


「あ、そういうのもありますね。闇オチしたら体格まで変わってみたいの」


「「「言ってる場合か!?」」」


 冷徹な仮面の騎士・少年勇者・ロ○コンのツッコミが入ったその時、ついにジャイアントエルフ格納庫の天井が破壊された。


 爆発と共に姿を現わしたのは――。


『どこだティトロット!! 出てこい!! 俺と戦え!!』


「「「「「もっと厄介な展開になった!!!!!!!」」」」」


 女エルフ達の前から姿を消したスーパーキングエルフ3だった。

 そう言えば、男騎士の気配を探して飛び立ったのをすっかり忘れていた。


 全然、知恵の神側の刺客でもなんでもなかった。普通にキングエルフだった。


『むっ、こんな所にフェラリあの形を汎用エルフ型決戦兵器が』


「ほんでまた空気を読んだように話が進む」


『ちょうどいい!! このスーパーキングエルフ3状態にも疲れてきた所だ!! この中に入って、いっちょ暴れてやるか!!』


「仲間の発言じゃないんよ……」


 キングエルフ、ジャイアントエルフ、培養槽の男騎士、TSしてしまった女エルフ。はたしてこのカオス極まりない状況を、いったいどうまとめるのか。


『乗るのよ、シン○くーん!!』


「ほんでまたよく分からない幻聴が聞こえてくるし」


『○バーに乗りなさーい!! シン○くーん!!』


「というか、マジで聞こえてくるんだけれど。なによシン○くーんって」


 声のする方を振り向いた女エルフ。するとそこには見知った船が。

 ここ、イーグル市に来る時に使った、シーマ村店長が譲ってくれた宇宙海賊船。

 その縁に立って――赤い海賊服を纏った女が立っていた。


『逃げちゃダメよ!! エ○ーに乗りなさい!! シン○くーん!!』


「……誰だあれ? あれ、けど、この声どこかで聞いたことがあるような」

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