第1299話 どエルフさんと攻カク○頭隊の真実

【前回のあらすじ】


 女エルフ達は【性闘衣】を失った。

 キングエルフたちは【サイコ銃】とキングエルフを失った。

 ロ○コンたち破壊神陣営にはもう切れる手札がない。


 万事休す。ここに進退窮まった。

 まさかここまで引っ張って、残念ゲームオーバーどエルフさんBADENDになるとは誰が思ったか。それもこれも、受賞してからというものそっちにリソースを割きすぎて、こちらのプロットをおざなりにしてきたのが悪い……。


「いや、悪いと思ってるならもうちょっと考えて書きなさいよ。どうするのよ。この章だけなんか知らないけれど300話近くあるわよ……」


 マジでちょっとペース配分ミスったなと、今更になって後悔しています。いや、だいぶ前から後悔はしていた。だいたいどエルフさんって100前後で章が終るんですが、今回はすごいボリュームになってしまった。


 まぁ、知恵の神と破壊神。両方の話だから、ボリューム二倍ということで納得してもろて。


「……いい加減だなぁ」


 とにもかくにも万策尽きたと思われたその時。破壊神陣営の三バカ博士が、知恵の神に対抗するロボットを造っていることをロ○コンが思い出す。


「……うぅっ、巨大ロボットによる全面戦争なんて、この世界を消失させかねない最悪の状況だ。できれば、そうなるまえに止めたかったんだけれど」


「なら、ロボでなければ問題ないわね」


「……誰!?」


 彼らの会話に割り込んだのは、この章が始まった時から割と顔を出してたキーパーソン。というか、エルフ達の裏で暗躍していた人物。


 攻カク○頭隊のムラクモ少佐。

 そして、彼女の愛機勃チ○コマだった。


◇ ◇ ◇ ◇


「モーラさん、安心して。こんなこともあろうかと、三バカ博士には、ロボットであってロボットではない、けれども絶妙にロボットに分類されるかもしれない、汎用人型決戦兵器を造ってもらっているわ」


「あ、もう、なんというか展開が見えた」


 ロボットあってロボってではない汎用人型決戦兵器とは。

 多くの熱心なファンが「ロボじゃない!!」と言いつつ、毎回スパロボに参戦してきて、もはや彼らの存在なしに作品が成立しないようなアレではないのか。


 まぁ、確かにこの未曾有の大型ロボット大激突、わっちゃわっちゃのウルトラロボット大戦の幕を引くには、あれを投入するしかなさそうだが――。


「それはうちのリーダーがパロってるから、今更出すのはどうなのよ」


「赫青鬼アンガユイヌのことか。まぁ、それはそれこれはこれよ」


「それはそれこれはこれって」


「だいたい、元ネタだってアレは一体だけじゃなかったでしょう。二号機、零号機、三号機といろいろなバリエーションが出ているわ。大丈夫、もう一体くらい作中で出ても整合性は取れる」


「この状態で整合性を取る必要がはたしてあるのか……」


 というか、そもそもなんでこの女はそこまで女エルフたちの事情に詳しいのか。

 いきなり出てきていい所をかっさらったのもさることながら、未だ分からない彼女の素性に、女エルフが不満げに眉をしかめた。


 そんな彼女にニヒルな笑顔を向ける少佐。


「すまないモーラさん。今回の南の大陸攻略作戦を開始したその時から、このミッションは始まっていたんだ。いずれ戦うことになる知恵の神陣営の切り札『ド・ラー』を打倒することができるのは、破壊神の系譜からはこれしかないと」


「なによ破壊神の系譜って」


「破壊神ライダーンと遠き星の神マッドヤー。その二つの柱に眷属神と従う神。彼が産み落とした力がどうしても必要だったのだ」


 仮面の騎士の目つきが鋭くなる。

 その眷属神を、彼もよく知っているからだ。


 そいつは鬼という存在を生み出し、【鬼族の呪い】というシステムを生み出した。彼の身体にも刻まれたその呪いを生み出した神。この世界の七柱にこそ数えられていないが、多大な影響を与えている神――アンノウン。


 確かにアンノウンは、破壊神の権能を自ら封じているライダーン、遠き星からこの地に気まぐれに干渉するマッドヤー、両神の代理として暗躍するような神。

 その神の力を使うというのは巧い手だと仮面の下で唸った。


 同時に、彼は何が起きているのか、この一行の中で一番最初に理解した。


「計画の実行のためには、アンノウンが生み出した【鬼】の因子が必要だった。攻カク○頭隊は、長年にわたってこの【鬼】を追い求めてきたが……南の大陸についぞ【鬼】は現れなかった」


「……いや、そんなことはないでしょ。だから、うちのリーダーが」


「そう。七つ柱の神に導かれて、この南の大陸に脚を運んだ男。それこそが、この長年にわたる南の大陸の硬直を真に破壊する鍵だったのだ。彼がその身に持っている、【鬼族の呪い】。【鬼】の因子を手に入れる必要があった」


「……ちょっと待って。それじゃ、もしかして」


 ムラクモがどこからともなくキューブ状の立体投影機を放り出す。

 地面に転がったそれが宙に映し出したのは、培養液の中に揺れる男の姿。


 その裸を、女エルフは何度も目にしたことがある。愛した男の身体を忘れることなどあるだろうか。

 驚く彼女の前で、培養液の中の彼は静かに目を開けた。


「モーラさん、そういうことだ。俺は今、破壊神の研究ベースの中にいる」


「ティト!! 無事だったのね!!」


「心配をかけてすまない。しかし、君たちが知恵の神の相手をしてくれていたおかげで、こちらも準備は整った。【鬼】の力は解析され、知恵の神の【ド・ラー】に対抗する技術は確立された」


「……だったらそうと言ってくれればいいのに」


「敵を欺くにはまず味方からだ。そして、すまない。もう一つ、君に謝らなければならないことがある……」


 再会の感動に浸る女エルフ。

 いつものふざけた調子も一気に吹っ飛ぶ湿っぽいシーン。誰もが、彼女達の再会を見守る中で、男騎士が苦しい顔をする。


 そして――なぜか少佐も苦しい顔をした。

 まるでその表情はリンクしているかのよう。


「実は、俺はこの培養液の中でデータを取得されながら、君たちを守ろうとELFを遠隔操作していたんだ」


「ELFを遠隔操作?」


「そう。君たちの冒険を助け、知恵の神の思惑を狂わせ、キングエルフたちとの間に割り込み、そして必要とあれば前に出て戦っていたんだ……」


「……まさか」


 ひょこひょこと歩いてくる勃チ○コマ。

 その頭部で格納ハッチが浮き上がったかと思えば、中から電脳の代わりに見知った剣が飛び出してくる。


「よっ!! モーラちゃん、久しぶり!! 言うて、三日くらいだけれどな!!」


「……エロス!? って、ことはもしかして!!」


 男騎士は、魔剣を相棒として南の大陸の各地で転戦していたのだ――。

 見た目と性別と口調をすっかりと違うものに変えて。


「ムラクモの正体は俺なんだモーラさん。黙っていてすまない」


 謎のスパイELFの正体は男騎士だった。

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