第1298話 どエルフさんと三バカ博士
【前回のあらすじ】
キングエルフは激怒した。
世界を救うためにキッカイマンと合体したキングエルフ。
さらなる強さを求め――彼はスーパーキングエルフ3と化した。
身体は普段のキングエルフとそう変わらない。
女体化も解除され、合体完了と思いきや――。
「濃ッ!! 顔が濃ッ!! どうなってんのそれ!!」
「なんだフェラリア。そんなに慌てて」
「慌ててって!! そりゃアンタのその顔見たらびっくりするわよ!! どうなってんのそれ――完璧な悪人面じゃないの!!」
「なにを馬鹿な……」
顔が見るからに悪人面。
エルフとは思えない面相になってしまった。
まぁ、なんでしょう。
あのパワーアップ演出が発表されて以降、色んな漫画で「髪伸び」+「人相変化」が定着した訳で、あれは創作のブレイクスルーだったのかもしれませんね。
特に、パワーアップと共に肉体に分かりやすい変化が現れる、というのはもはや昨今では外せない展開。
そういう訳で、あきらめてくれキングエルフ――。
「許さん!! 許さんぞ!! 美しいエルフの顔をこんな最強生命体、劇場版で何度も何度も倒されるような、凶悪な面に変えてしまうだなんて――!!」
「……兄さん?」
「ティト!! いや、ティトロット!! お前はこの私が絶対に殺してやる!!」
「いやいやいや!! 情緒不安定か!! 変身する度に性格が変わりすぎでしょ!! やめなさいって、今、それどころじゃないでしょ……!!」
「ティトロットォオオオオオオオオ!!」
理不尽な怒りを爆発させるキングエルフ。
彼は、自分を唆した男騎士を倒そうと、得意の舞空術で飛び立った。
せっかくあつめた【性闘衣1/2】を纏ったまま。
「ほんともう!! あの馬鹿は余計なことしかしないんだから!!」
◇ ◇ ◇ ◇
「どうしましょうか。マスターのお兄さん、凄いスピードで飛んでいって、どこに居るか分かりませんよ」
「……分かりませんよじゃないわよ。なにそれ、やっと【性闘衣】ができあがってTSが治ると思ったのにどうしてこうなるのよ」
怒りにまかせて飛び立ったキングエルフ。彼を見送る女エルフと仮面の騎士達。
理不尽キャラのキングエルフ。一度暴走してしまうと止めれる人間はいない。これはもうどうしようもないのでは……と諦めムードが辺りに漂う。
「とりあえず、外で俺たちの仲間が待ってますんで。そっち合流します?」
「あ、はい。ご丁寧にどうも」
「いえいえ、こちらこそ……」
仮面の騎士と少年勇者の先導で市役所の外に出た女エルフたち。
外で周囲を警戒していたロ○コンたちと合流すると、今後についての話し合いが始まった。
ア・マゾ・ンの空の上では、激しい空戦が繰り広げられている。
一刻も早く、彼らの助太刀に向かいたい所だが――。
「キングエルフが暴走し、【性闘衣】が失われ、もはや俺たちに打つ手なし」
「知恵の神の最終兵器ド・ラーは動き出し、今はオーカマが当たっているがそれもいつまで保つか分からない」
「僕ら破壊神側の戦力も出し切った。もうできることは何もないよ……」
冷静に自分達の置かれている状況を受け止める仮面の騎士と少年勇者とロ○コン。
彼らに残された機械鎧だけで特攻するにはあまりに無謀。万策尽きていた。
一方、女エルフたちにももう手はない。
「ケティたちとは連絡が取れていないし、こちらはそもそも【性闘衣】だのみ」
「ドラドラセブンを倒したはいいものの、逆に相手を下手に刺激してピンチになってしまいましたね。うぅん、どうしましょうかこれ」
残された希望はもう何も残っていない。
お通夜ムード。もうこのまま、世界が滅ぶのを座して待つしかないか。
そんな空気が五人の中に流れた時だった。
一人の男が、ずいと彼らの前に進み出る。ふんどし。そこにおさまりきらぬおおふぐり。その巨人は、「あきらめるな!!」と女エルフたちを激励した。
大性郷あらため、サイボーグとして生まれ変わった性郷猛である。
「どんなに絶望的な状況でも、最後まで戦うのを諦めるな。我々が悪に屈したら、その時、人類は滅んでしまうのだ。人類の希望を、人々の勇気を、人の善意を、最後まで我々は示さなくてはならないのだ」
なかなかのあつくささであった。
今の今まで、『この章の重要人物として出てきた割りには、空気で余計なことしかしない、いったいなんのために配置されたんや』という感じのキャラが、急に色めきだしたことに、一同ちょっと興ざめした。
だったらもっと活躍せんかい。
そんな無言の圧が大性郷に飛んだが――古い人間の彼には若者達のヒリついた無言のメッセージなど伝わるはずもなかった。
「たしかに、キングエルフはいなくなった、頼みの綱の【性闘衣】も失われた。しかし、苦境の中にこそ活路がある。もう一度、なにか我々にできることはないか、考えてみようじゃないか!!」
「いや、そう言われても……」
「オーカマ側は全軍突撃状態で何もできないし」
「私らはもう動ける仲間もいないし、持ってるアイテムもないし」
「破壊神側は……あぁ、そう言えば各都市の博士たちが、この状況を打開するために動いてくれてるとか言ってたなぁ」
「「「それだ!!」」」
三都市のマッドサイエンティストたちが、巨大な知恵の神のロボ『ド・ラー』に対抗する手段を考えてくれている。それをロ○コンたちが思い出したのだ。
巨大ロボットにはやっぱり巨大ロボットをぶつける。
両陣営の神に技術的な差がどこまであるかは分からないが――。
「あの早乙女博士やドクターオクトパスくんたちなら、なんかエグいロボットを造ってくれそう」
「三博士に今は駆けましょう」
「……けど、それより早く破壊神側の都市に封印されているロボットが動き出すかもしれない。うぅっ、巨大ロボットによる全面戦争なんて、この世界を消失させかねない最悪の状況だ。できれば、そうなるまえに止めたかったんだけれど」
「なら、ロボでなければ問題ないわね」
「……誰!?」
女エルフたちの会話に突然割り込んだ謎の声。
市役所の屋根――そこに立っていったのは黒いスーツ姿の女型ELF。彼女はそこから華麗に飛び降りると、宙返りをして女エルフの前に降り立った。
この大陸にやって来てから、何かと因縁のある謎のELF。
「……あなたは!! ムラクモ!!」
「久しぶりねモーラさん。いよいよ、この戦いを終らせる時が来たわ」
熱帯密林都市ア・マゾ・ンに侵入したELF。
攻カク○頭隊のムクラム少佐だった。
「俺も!! 俺もいるぜ!!」
「勃チ○コマ!!」
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