第1297話 どエルフさんとスーパーキングエルフ3

【前回のあらすじ】


「もうええやろ!! さっさと物語をすすめなさいよ!!」


 キングエルフTSする。

 からの女エルフによる強制サイボーグ化。

 そして本日のタイトル芸。


 本当に引き延ばしが酷い。

 どうしてこんなことになってしまったのか。

 ちゃんとプロットを切ってないから、こういう事態になるんじゃないのか。

 無限に続くストーリー、まじでそろそろ収束させた方がいいんじゃないのか。


 そんなだからKAD○KAWAから見捨てられるんだぞ。(見捨てられてません(たぶん))


「いや、そもそもコイツが書籍化できたのが奇跡」


 とにもかくにも、合体に必要なアイテム【サイコ銃】を腕に装備したキングエルフ。「わざわざ女体化する必要ありました?」という根本的な疑問は置いておくとして、シンプルかつ古典的な方法で、キッカイマンと合体するのだった。


 そう合体と言えばやっぱりフュー○ョンですよね。

 僕らの時代もこれは流行りました。


「いや、これ読んでるおっさん達の世代的には、そっちよりも『融合カード』とかじゃないの? 筆者もどっちかっていうとそっちの世代では?」


 合体方法にも世代とかあるんですかね。

 伝わってますこのネタ。そして、このタイトル芸になった経緯が。そんなことを考えながらも、今日も行き当たりばったりなギャグ小説は続く……。


(書籍化したというのに、こいつまったく成長してないな……)


◇ ◇ ◇ ◇


 キングエルフとキッカイマン。

 指を合せた二人の身体が眩い光を放つ。


 先ほど、天井を撃ち抜いたそれは【サイコ銃】の光と同じ。

 神秘の合体アイテムの光により一つになるエルフとELF。


「あぁ、これが一つになるということ……」


「合体。究極の進化……」


 輝きながらも、甲骨としたその顔が光の中に浮かび上がる。

 裸になって昇天するような兄の姿に、女エルフは素直に吐き気を覚えた。


「なんか気持ち悪いこと言い出したなぁ……」


「「貴方と、合体したい」」


「ほらまたそういうことする!! 合体ネタだからって持ってくるな!!」


 今度は合体ロボットネタで攻めてくるキングエルフ達。すると、次の瞬間、二つのシルエットが一つになった。


 むき出しになった上半身。

 たなびく褌。

 エルフのトレードマークの長い金髪。


 よかったどうやら無事に合体できたらしい。そして、ガワは男の方に寄ってくれたみたいだと女エルフが安堵したのも束の間、「あっ!」とELF娘が声を上げた。


「見てくださいマスター!! キングエルフさんの顔が!!」


「……顔がどうしたのよ?」


「なんだかやけに劇画チックなタッチになっています」


「……そんな馬鹿な」


 そもそも劇画チックとはどういうことか。

 人間の顔なんてそうそう変わることはないでしょう、変わった所で何か問題でもあるのかしら。そんな軽いノリで女エルフは兄の顔を確認した。


 そして口からブフゥと息を吐き出した。


「濃ッ!! 顔が濃ッ!! どうなってんのそれ!!」


「なんだフェラリア。そんなに慌てて」


「慌ててって!! そりゃアンタのその顔見たらびっくりするわよ!! どうなってんのそれ――完璧な悪人面じゃないの!!」


「なにを馬鹿な……」


 近くにあった窓を覗き込んだキングエルフ。

 するとそこには、顎が割れ・白目を剥いた悪人面の男がいた。


 むしろ3というより伝説の方だった。


「……な、なんということ!! まさか顔まで変化するとは!! そんな話は聞いてないぞティト!!」


「……いやまぁ、その濃い顔は笑えるわ。いいじゃない、似合ってるわよ。その顔ならエルフだからって舐められることはないんじゃない。よかったわね、エルフリアン柔術の極みに、また一歩近づけて?」


「ふざけるな!! 肉体的なバフなぞエルフリアン柔術には不要!! というか、顔が怖くなったくらいで強くなってたまるか!!」


 日頃の憂さ晴らしだろうか、兄の濃くなってしまった顔を指差してプークスクスと笑い飛ばす女エルフ。一生そのままだと、それはそれで笑い事では済まないと思うのだが、やはり日頃の兄から受ける仕打ちへの報復の方が彼女の中で優った。


 女エルフ達の背中でクスクスと笑う仮面の騎士たち。鬱憤というほどではないが迷惑をかけられっぱなしの彼らもまた、キングエルフの間抜けな合体姿につい笑いが出てしまった。


 それがよくなかったのだろう――。


「笑うな!!」


 一喝。


 キングエルフの怒鳴り声と共に、女エルフ達がいる市役所の壁という壁に亀裂が走った。まずいと思った時には、建物が揺らぎ屋根がもろもろと崩れ出す。


「ちょっとちょっと、どうなってるのよこれ!!」


「エルフとELFの合体により、こんな馬鹿げた力が発生するなんて。これは流石にデータにありませんでした」


「落ち着いて兄さん!! ごめんて!! 悪人面って言ったのは謝るから!!」


 珍しく激昂したキングエルフ。

 彼をなだめようと、いつもは何があっても非を認めぬ女エルフも珍しく謝った。


 しかし、どうも様子がおかしい。


「許さん!! 許さんぞ!! 美しいエルフの顔をこんな最強生命体、劇場版で何度も何度も倒されるような、凶悪な面に変えてしまうだなんて――!!」


「……兄さん?」


「ティト!! いや、ティトロット!! お前はこの私が絶対に殺してやる!!」


「いやいやいや!! 情緒不安定か!! 変身する度に性格が変わりすぎでしょ!! やめなさいって、今、それどころじゃないでしょ……!!」


「ティトロットォオオオオオオオオ!!」


「ていうか、誰よティトロットって!!」


 崩壊する市役所。【サイコ銃】で空いた天井の穴を潜って、キングエルフが空高く舞い上がる。顔もイッているが思考もイッちゃってる。

 少しでも「これ、止められるんだろうか」と迷ってしまったのが運の尽き。


「そこかティトロット!! そこに居るんだな!!」


「なんか知らんがティトの居場所を察知したみたいだ!!」


「決着をつけてくれる!! 待っていろ――!!」


「ほんで飛んでいった!! なんでなんでなんで、なんでそーなるのよ!!」


 キングエルフは得意の舞空術でどこかへと姿を消したのだった。


 世界を救うのでは。

 さらなるエルフの高みに登るのでは。

 クライマックスの最中だったのでは。


 さまざまな思いをこめて固まる女エルフ。その肩を、ぽんとELF娘が叩いた。


「マスター、放心中の所申し訳ありませんが、大変なことになりました」


「いやもう、これ以上大変なことなんてないでしょ。なにがおきたっていうのよ」


「……キングエルフさんが、【性闘衣1/2】を着ていかれました」


「ほんともう!! あの馬鹿は余計なことしかしないんだから!!」


 飛び立ったのはキングエルフだけではない。

 せっかく集めた【ダブルオーの衣】、それで編んだ【性闘衣1/2】も、彼と共に飛び立ってしまったのだった……。

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