第1296話 どエルフさんとメス堕ち

【前回のあらすじ】


 キングエルフメス堕ちする。


「いや、いやいや。表現に気をつけて。キャラが変わっただけだから」


 TSとメス堕ちはワンセット。変わってしまった性と身体に、戸惑う間もなく女の子だとわからせられる。それがTSの美学。


 むくつけき男が可憐な少女になって理不尽な目に遭うのも。

 細身のイケメンがキレイめ女子になっておっさんにわからせられるのも。

 不良がギャルになって眼鏡くんと甘々えちえちになっちゃうのも。


 全部、TS好きの同好の士達が連綿と築き上げてきた文化なのだ。


 キングエルフが女体化して性格が変わってしまったのは仕方が無いというもの。誰もこのTS力学から逃れることはできない。性別の転換と共に、心まで変わってしまう。だからこそTSは面白いし、男の心を捉えて放さないのだ……。


「いや、一部の方だと思いますが?」


 僕も実は言うほどです……。(エロとしてはあんまり。けど、エロなしのTSはけっこう好物です。急に幼馴染が女になったとかそういうの)


 とにかくそういう訳で。


「私、キッカイマンと合体するのはやめますわ!!」


「なんでじゃあTSしたねん!!」


 本末転倒なことを言い出したキングエルフ。女エルフを食っちゃいそうな、清楚ロリボイン銀髪エルフという暴力的なスタイルで、今後はやっていくつもりなのか。


 許されるのかそんなえちえちエルフ。

 大丈夫なのかどエルフさんのタイトル。


◇ ◇ ◇ ◇


「いやいやいや、あかんでしょ!! なんのためにTSしたのよ!! さっさとサイコカンを装備してキッカイマンと合体しなさい!!」


「いやだ、合体だなんて。モーラってば卑猥よ。お姉ちゃんになんてこと言うの」


「このくらいのやりとりいつもしてんじゃねーか!! なーにを今更カマトトぶっとんじゃい!!」


「だってこの【エッチな棒】。とっても太くて、固くて、立派で……ゴクリ!!」


「ゴクリやあらへんねん!! だから、そういう危ないネタはやめなはれ!!」


 キッカイマンとの合体を渋るキングエルフ。

 そんなキングエルフをなじる女エルフ。

 

 姉弟で醜い言い争いがはじまる。

 世界の危機を前に、何が「女の身で極めてこそエルフリアン柔術か!!」と、キングエルフのことを頑なに認めようとしない女エルフ。


「というか、アンタみたいな正統派なロリエルフが出てきたら、この作品が違う作品になっちゃうじゃないのよ!!」


「大丈夫よモーラ。お姉ちゃんキャラは、たいていヒロインよりもロリでバブみが高いもの。特にエルフ系の作品はそういう傾向が顕著。なぜなら、ヒロインがそもそも恵体タイプの豊満エルフで……」


「貧乳エルフで悪うございましたね!! とにかく、この作品の根幹を揺るがしかねないビジュアルをなんとかしろ!! 絶対にこんなTS認めないからな!!」


「……あぁっ、何をするのです!!」


 キングエルフをえいやと投げる女エルフ。

 急な攻撃にエルフリアン柔術も出せぬまま組み敷かれると、彼女はお尻を突き上げる形で押さえ込まれた。流石はエルフリアン柔術創始者の妹か、男体化していることもあってがっちりと押さえ込めば、キングエルフはみじろぎができなくなった。


 振り返って「やめなさい!! モーラ!!」と叫ぶキングエルフ。

 しかし、女エルフはその言葉を無視する。彼女もまたTS化の影響により、ちょっとS気強めの鬼畜俺様エルフっぽくなっていた。


 性別以上に性格の方に深刻な影響を受けていた。


「オラッ!! 【サイコ銃】挿備しろ!! そのために女になったんだろうが!!」


「やめて!! 乱暴しないで!! モーラ、私たち実の姉弟なのよ!!」


「しっとるわい!! だから、そういうセンシティブな発言やめろ!! ちょっとした棒を装備するだけじゃろがい!!」


「あっ、あっ、ダメ……そんな所に装備しちゃダメなのぉ……」


 キングエルフに【サイコ銃】が挿備される。

 どこかは言うまい。


「……ダメ、ダメなのぉっ!! こんなの挿備したら、私、壊れちゃう!!」


「もう既にキャラが壊れとるから大丈夫じゃい」


「いやぁ!! 私の力に反応して、【サイコ銃】がビクビクしている!!」


「……あ、これはちょっと、マジで本気で気持ち悪い奴」


「だめ、だめだよこんなの……あぁ、出る出る、出ちゃう!!」


 その時、装備した【サイコ銃】が激しく振動しその砲身を光らせた。

 イーグル市役所の天井に向けられてその先から、白色の光線が天に向かって放たれる。天井を粉々に砕いて大穴を空けて、遙か上空にある雲を散らすと、【サイコ銃】は静かに音をたてて大人しくなった。


 ゆっくりとキングエルフはその挿着した【サイコ銃】を降ろす。

 彼女の身体――左前腕に装備された【サイコ銃】にそっと触れれば、まるでそれに応えるように、意思でもあるように微かに震えるのだった。


「無理矢理装備させるなんて酷いわモーラ。貴方をそんな乱暴な子に育てた覚え、私にはないわよ」


「そらなぁ。幼い日に奴隷商人に攫われたらなぁ。ありませんわなぁ」


「……なんにしても、これで合体のための儀式は終りってことですかね?」


 引っ張った割りにはあっさりと【サイコ銃】を装備したキングエルフ。

 別にこれなら、女になる必要なんてなかったのでは――と、女エルフが思ったのも束の間だった。キンと、激しい金切り音がしたかと思うと、天井に空いた大穴をくぐって目の前にELFが飛来した。


「セクシー!! エルフ!!(決め台詞)」


「出たわね兄貴のパチモン。こっちの方が、今は兄貴っぽいけれど」


 半分が肌色、半分が機械。ハーフの身体を持つELF。

 それはキングエルフを模したELFのキッカイマンだった。


 サイコカンの発した求めに応じてどうやら駆けつけたらしい。

 女体化したキングエルフを見や、すぐに彼は状況を把握して頷いた。


「どうやら合体する準備が整ったようだなキングエルフ!!」


「……キッカイマン。ごめんなさい、私、まだ心の準備が」


「なに大丈夫だ。このキッカイマン、見た目の通り着飾らぬことをよしとせぬ裸の紳士。貴殿の身体に負荷をかけぬよう細心の注意を払おう」


「……分かったわキッカイマン。優しくしてね」


 なんで自分同士でアホみたいな会話し取るのだこいつらは。

 女エルフが冷ややかな視線を向ける。そんな彼女の前で、キングエルフとキッカイマンは、ついに二人で一つの生命へと変わろうとしていた――。


「「合体フュージョン!! 破ァッ!!」」


「そっちのやり方で合体するんかい!!」


 呪文と共にラジオ体操の脇を伸ばす運動のような感じに指先を突き合わせる。

 それは古典的で健全すぎる合体方法だった。


 わざわざ男と女になった意味はなんだったのか。

 健全で助かったけれども、思わず女エルフはツッコんでいた。


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