第1293話 どエルフさんとお湯をかけると

【前回のあらすじ】


 終らないART!!

 ART中のボーナスで上乗せ特化ゾーン突入。ベルから上乗せ抽選でうはうは。一回当たりの上乗せ回数は少ないけれど、それでも塵も積もれば山となる。

 さぁ、ここが運の使い所。どこまで伸ばせるか勝負勝負……。


「って、今の六号機は枚数管理で最大排出数が規定されちゃったから、乗れば乗るだけ出るってもんでもなくなったらしいのよね」


 最近は完走とかいうらしいですね。

 夢のない時代になったものだ。


 あと設定lですっけ。

 検定通すための特殊設定らしいですけど、そんなのこっそり使われたらたまったもんじゃありませんわな。五号機が出た時も夢のない時代になったものだと散々嘆かれておりましたが、いったいパチスロはどこに行き着くんですかね。


 いやぁ、ほんとやめてよかった……。(演出面は結構好きなんですけれどね)


「はい、スロ感想終わり。クライマックス、いいところなんだから話を進める」


 と言うわけで、無事に褌エルフRUSHをキメてイーグル市へと入ったキングエルフ。後は女エルフと合流するだけ。彼らは無事に出会うことができるのか……。


◇ ◇ ◇ ◇


「フェラリア!! フェラリアどこに居るんだ!! 出てきてくれ!!」


「おー、キングエルフの妹、スゲー名前してんな」


「どういう意味なんです?」


「……いいんだ、アレックス。俺がバカだった。気にしないでくれ」


 イーグル市に辿り突いたキングエルフたち。

 市役所に立てこもっているという情報を元に、彼らはゾンビELFたちを蹴散らして市役所が建っている丘の上までやってきた。しかし、肝心の女エルフが見つからない。鬼気迫る感じで、キングエルフが妹の名を叫ぶ。


 ちなみに、馬で送ってくれた親切なおじさんELFは、再びどこかへと去って行った。去り際に雲も散らし、相変わらずゾンビELFを蹴散らし、悠々と森に消えるその姿には、いっそ頼もしさまであった。むしろこの後も助けて欲しいまであった。


「フェラリア!! すぐ行くぞ!! フェラリアー!!!!」


「……助けに来たのか殺しに来たのか分かんねーなこれ」


 女エルフの真の名前を連呼するキングエルフ。その時、少年勇者が何かに気がつく。それは市役所にゾンビELFが殺到したときにできた壁穴だった。


「もしかして、市役所は既に襲われた後なんじゃ」


「どっかに隠れているってことか。すると、ちょっと叫んだくらいじゃ見つかりそうにないな」


「市役所の中に入って確認しましょう」


 狼狽えるキングエルフを引っ張ってきて作戦会議。

 いつものメンバーことキングエルフ、仮面の騎士、少年勇者の三人で市役所の中へと突入。ロ○コンを含めた残りのメンバーはゾンビELFたちが再び近寄ってこないよう、警戒をすることになった。


 穴の空いた二回の壁から中へと侵入する三人。ぶちまけられたゾンビELFたちのパーツに、うげげと仮面の騎士が顔を歪ませる。パーツを踏まないように奥へと進めば、比較的綺麗な廊下が現れた。


 さて、どっちに行くべきか――。


「むっ!! 【ダブルオーの衣】がなにやら反応している!!」


「おっ、近くにあるから共鳴してるとかそういう奴か。これならすんなりみつかりそうだな」


「そんな簡単にいくとは思えませんけれど……」


 キングエルフの手にした【ダブルオーの衣】。その袖がひょいと持ち上がったかと思うとくいくいと廊下の先を示す。どうやらそっちに女エルフがいるらしい。


 頷き合って三人は衣が示す方向へと進む。

 電灯は切れており廊下は薄暗い。ただ、なんとなく生活音のようなものが聞こえてくる。ELFたちのざわめきとはちょっと違う、人間の生々しい息づかい。


 キングエルフの【ダブルオーの衣】を握る手に力が入る。


「フェラリア!! どうか無事でいてくれ!! せっかくこの世で二人だけの兄妹なのだ!! こうして再び出会えたのだ!! お前を再び失いたくない!!」


「……こいつ、本当に時たままともなことを言うよな」


「……存在はおふざけいがいの何者でもない感じなのにね」


 階段を降りて地階へ。すると、ほの暗い廊下の先に、隙間から光が漏れている扉が見えた。間違いない、中に誰かがいる。


「フェラリア!!」


「「あ、ちょっと!!」」


 辛抱たまらないという感じで駆け出すキングエルフ。ゾンビELFたちがどこに潜んでいるとも分からないのに、廊下を勢いよく駆け抜けると扉の前へ。そのまま、鈍い銀色をしたドアノブを回して押し込むと、彼は中へと転がり込んだ。


「フェラリア!! 無事か!!」


「……え、あ?」


「あら。これは確か、噂のマスターのお兄さま」


 中に居たのはエルフが二人。可憐な銀色の髪をした少女。そして、キングエルフと同じようにむくつけき身体をした逞しいエルフ。

 厚い胸板、盛り上がった上腕二頭筋、逞しい二つの脚に高身長。

 そしてポニーでまとめられた金色の髪。


 エルフの中のキングエルフをして、敵わぬと思わず目を剥いてしまう完璧なマッチョエルフ。彼はキングエルフをじろりとにらむと、その手の中の【ダブルオーの衣】をひょいと取り上げた。


「はー、やっと集まったか。まったくもう、どれだけ待たせるのよバカ兄貴。さっさと持ってきてちょうだいよね」


「……え、いや、うん」


「妹が困っているのにどうせちんたらばかなことしてたんでしょ。丸一日も集めてくるのにかかるなんて。おかげでこっちは、すっかりこの形態が馴染んじゃったじゃないのよ。名残はもう、女言葉だけだわ」


「……ちょ、ちょっと待ってくれ。君はいったい。いや、その口ぶりは」


「あ、そうだ説明していなかったわね」


 ダブルオーの衣を1/2だけ手に入れて、合体させた【性闘衣】を装備した女エルフは――今は男エルフになっていた。


「なんか力が不安定でね、TSしちゃうんだって。まぁ、もう慣れちゃったから問題ないけれど」


「はやくそちらの【ダブルオーの衣】を【性闘衣】に取り込まなければ」


「……うん、どうしたの兄貴。そんな固まっちゃって?」


 変わり果てた妹の姿。自分よりも逞しく、エルフの王にふさわしい彼女。

 その姿にキングエルフはすっかりと心を打ちのめされていた。


 もう自分がキングではない。

 彼女こそがキングだ。


 そんな気持ちを込めて彼はようやくその口を開いた。


「フェラリア。いや、今のお前はもうりっぱな――マラリアだな」


「おい、ぶっ○すぞクソ兄貴。勝手に名前を変えんな」


 改名、フェラリアあらためマラリア。

 フェ○ーチョとマ○ラーみたいな名前の交換であった。

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