第1281話 どキングエルフさんといろんなロ○コン

【前回のあらすじ】


 神造遺物【ダブルオーの衣】を手に入れるため、ロボ○ン村へと向かうことになったキングエルフたち。しかし、ダイナモ市を守る為に宇宙戦艦オーカマを動かすことはできない。機械鎧での密林の突破を考えるキングエルフたちだったが――。


「大変です!! ダイナモ市地下から巨大なエネルギー反応を補足!! これは……正体不明の巨大戦艦が地下からこちらに向かってきています!!」


「巨大戦艦だと!!」


 ダイナモ市の地下に潜んでいた宇宙戦艦634がここに駆けつける。

 女エルフたちに、南の大陸が陥っている危機について知らせ、ダイナモ市の地下に潜伏し続けて来た破壊神の盟友が、ここで助けに駆けつけた。

 ダイナモ市の制御と防衛を自分達に任せて、キングエルフ達はがんばれロ○コン村に向かえと彼は言う。


「心配要らない。この老いぼれに今更、南の大陸をどうこうしようなどという野心などない」


 その瞳に揺れるのは後悔と静かな決意。

 決して野望を抱く者の顔ではない。

 キングエルフ達は破壊神の盟友の言葉を信じると、彼にこの場を任せて、がんばれロ○コン村へと向かうのだった――。


「安心してくれ。私たちは負けない。ロリコン三銃士に屈したりなんかしない」


「おいそれフラグ」


 ちょっと強めのフラグを立てつつ。


◇ ◇ ◇ ◇


 がんばれロ○コン村に向かって移動をはじめた戦艦オーカマ。

 そのブリッジに、キングエルフと艦長たちいつもの面々。さらに、がんばれロ○コン村の村長であるロ○コン。彼によって修理されたサイボーグ性郷どん(意識不明ではあるが一応)が集まっていた。


 他でもない、これから戦うロ○コン三銃士との戦いに備えるためだ。


「敵を知れば百戦あやうからず。まずは、これから戦う敵がどういう相手で、如何なる技を使うのかを把握しなくてはな」


「まぁ、言いたいことは分かるんだけどよ。嫌な予感しかしないのよ」


 肩を並べてスクリーンを見上げるキングエルフと仮面の騎士。

 赤い仮面の男と言ったらロ○コン。それはもう、初代の頃から擦り続けられているロボットサーガのお約束。


 ロ○コン三銃士との戦いと聞いて背筋が凍るのも仕方なかった。

 そんな彼を緊張しすぎだとキングエルフが肩を叩いてなだめる。


「心配しなくても相手は精神攻撃をしかけてくる手合いだ。単純な戦闘能力で我々が遅れを取るはずがない」


「いや、ロ○コンってそういうんじゃないんだよな」


「それに我々には冒険で鍛えた身体と心があるじゃないか。大丈夫だ、街の中でのんのんと暮らしているような、小型のELFに俺たちが負けるはずがない」


「だからそれ、フラグだってば……」


 ぶつくさという仮面の騎士は置いといて、正面スクリーンにロ○コン三銃士の姿が表示される。どれも可憐な少女。ロ○コンというよりロ○。けれども、全員が全員、性格の悪さが滲み出たような表情をしていた。


 ぶるりと肩をふるわせたロ○コン。

 そして、寝ているハズなのに身体をひくつかせる性郷どん。

 写真だけでこの威圧感か。いったいどれほどのものか――と、キングエルフは急に黙り込んだ。少しばかり、相手のことを軽く見ていたようだ。


「まず最初に。リーダー格のロリ○ン三銃士について説明するね」


「ほう。その金髪でツインテールのがそうなのか」


「うん。彼女の名前はリカちゃん。典型的な猫かぶり型のロ○で、外面は異様に良いんだけれど、格下と見た相手に対してはとことん追い込んでくるタイプのロ○なんだ。ぶっちゃけ、二人きりになったら死を覚悟した方が良い」


「なんと、そんなまるで人狼のようなロ○が居るのか……恐ろしいな……」


 いや、割とスタンダードな奴だぜという顔を仮面の騎士はした。

 ロ○コンだと悟られたくないので、声には出さなかったが、割とそれはよくある奴で驚くようなことではないという感じにキングエルフを見つめた。


 そんな視線に気づかずキングエルフとロ○コンが話を続ける。

 続いて出てきたのは褐色ボーイッシュな感じのロ○。


「こっちはナツちゃん。猫被ったりはしないんだけれど、公衆の面前でも容赦なく罵ってくるタイプの○リだよ。正直、彼女の姿を見つけた瞬間に逃げ出した方が良い。けど、スポーツをやっているから、気づかれたらすぐ追いつかれて罵倒されちゃう。対処の難しい○リなんだ」


「鍛えた身体を人を虐めるために使うとは……なんとあきれた」


「さらに彼女はスキンシップと称してプロレス技をかけてきたりするからね。これが女の子と思って油断すると意外と効くんだ。特に寝技が抜け出せなくて」


「寝技だと!? くっ、エルフリアン柔術の使い手として、このような悪事に柔らの技を使うのは見過ごせない!! なんてロ○だ!!」


 いや、これも言うほど珍しいロ○じゃないぞ。むしろスタンダードな奴。ともすると最近はこっちが主流になってきている奴だ――とでも言いたげな視線を、仮面の騎士はキングエルフたちに向けた。


 ロ○マエストロ。仮面の騎士にとっては、ロ○コンの口から出てくる説明はそれほど驚くような内容のものではなかった。「むしろご褒美では?」とちょっと期待している部分まであった。


 業の深い男は、仮面をくっと手で直して動揺を悟られないようにする。

 そんな横で、いよいよ最後のロ○についての情報が開示された。


「そしてこの最後の女の子。紫色の髪をした子がシュリちゃん」


「……ふむ。なるほど。なんだかこの三人の中で、一番大人しそうに見えるが?」


「いや、この子が一番強力なんだよ。ファンシー系なゴスロリファッションで、いかにもオタクに理解のありそうな感じをかもしだしておいて、真逆の言葉を繰り出してくる。見た目に抱いたシンパーをぶち壊す毒舌ぶりと、クソガキムーブで、もうどうしていいか分からなくなる究極生命体さ」


「究極生命体……こんな女の子が?」


「上の二人はなんていうか『ツンデレ・照れ隠しかな』と思って許せる部分があるけれど、シュリちゃんだけは許せない感じがあるんだよ。まるで生命として男を下に見ているような、そんな邪悪な意思を感じる。そしてそれに、僕たちの身体はまた硬直してしまうんだ」


「……なんという恐ろしい。こんな女の子がこの世には居るのか」


 いや居るよ、これもスタンダードな奴だよ。

 クソガキの最新型だよ。昔は、上のような日常の中で出会いそうなクソガキが、ロ○もののスタンダードだったけれど、最近はこういうレアリティの高い奴の方が人気だし、Vのおかげでクソガキと言えばこういうのって感じだよ。


 と、またしても仮面の騎士は思ったが口を噤んだ。

 今日ほど仮面を付けていてよかったと思うことはない。もし、素顔を晒していたら、表情で自分がロ○コンだとバレてしまったことだろう。

 自分のキャラ設定に仮面の騎士は感謝した。


 サンキュー仮面。素性と性癖を隠すのに、やっぱり仮面は欠かせないぜ。


「……どうしたんですかセイソさん。なんでそんな腰を引いてるんです?」


「……いや、別に?」


 しかし期待と股間の膨らみだけは仮面でも隠せないのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る