第1279話 どキングエルフさんとロ○コン三銃士

【前回のあらすじ】


 視点変わってキングエルフたち。

 ダイナモ市に溢れたゾンビELFや、打ち込まれたミサイルにより、女エルフたちの状況を察した彼らは、自分たちはどう動くべきか考えていた。


 するとそこに、女エルフの意向を受けたお嬢さまELFからの連絡が入る。


『彼女から、至急【ダブルオーの衣】を回収したいと要請されています。既にイーグル市にある衣は回収済み。そちらが保管されている【ダブルオーの衣】と、頑張れロ○コン村の【ダブルオーの衣】をすぐに用意できるかとのことです』


 既にキングエルフたちも【ダブルオーの衣】を二つ回収済み。

 ダイナモ市には既にないので、残す三つはロ○コン村にあるはず。


 という訳で、キングエルフたちは残りの衣を求めて、ダイナモ市を発つことにしたのだった――。


「お願い兄さん、早く回収してきて!! 妹にこれ以上恥をかかせないで!!」


「いや、いまさらじゃありませんかマスター?」


 女エルフを一刻も早く元に戻すため、頑張れキングエルフ、負けるなキングエルフ。お前の尻のふんどしに、女エルフの下半身事情がかかっているぞ……。


◇ ◇ ◇ ◇


 場所は移って医務室。

 倒れてしまった性郷どんと彼を甲斐甲斐しく看病するロ○コン。破壊神陣営コンビの居る部屋に、改まった顔をしてキングエルフが顔を出した。


 入電の内容はロ○コンも聞いていたのだろう、キングエルフの登場に彼も覚悟を思わせる表情を返す。話が早いという感じに頷いたキングエルフは、ベッドの横に置かれていたパイプ椅子を手に取ると、ロ○コンの前に座った。


「……単刀直入に言おう。ロ○コン、【ダブルオーの衣】を譲って欲しい」


「……無理だよ」


「…………うん?」


 トントン拍子に進むと思われた交渉は初手から躓いた。


 ロ○コンがあからさまに下を向いてキングエルフから視線を逸らす。寸胴型で背骨がないタイプのELF。そんなロ○コンでは落ち込みを誤魔化しようがなかった。

 協力がしたくない訳ではなさそうだ。なにやら理由があるみたいだ。


 すかさずキングエルフが俯いたロ○コンの表情を覗き込んだ。


「どうしたんだロ○コン。何か問題があるのか。もしよかったら、話してくれないか。私たちならその問題を解決できるかもしれない」


「……あまり、話すようなことではないんだけれど。この状況だし、ね」


 いかにも歯に何かひっかかったような物言いでロ○コンが語り始める。

 なんでも、がんばれロ○コン村にある【ダブルオーの衣】は、彼の管理下にないらしい。別のELFたちが衣を私的に保有しているのだという。


「人呼んでロ○コン三銃士。彼女たちは、なんとうか――とにかく性格が悪くってさ。僕たちにまったく協力してくれないんだよ」


「ロ○コン三銃士。そんな、破壊神の使徒の代表である君の言うことにも耳を傾けないのかい?」


「やーいやーい、ざこざこロ○コン、泣き虫、弱虫、落ちこぼれって……」


「なんと酷い暴言だ。聞くに堪えないな」


「そうなんだよ。なんだか彼女達の罵りを聞いていると、身体の内側からこう、出しちゃ行けないエネルギーみたいなものが溢れてくる気がして。それで、あまり彼女達に会いたくないんだよ」


 ロ○コンは今にも泣き出しそうな顔だった。

 よほどその罵詈雑言は、彼の心を傷つけたのだろう。真っ赤な顔がさらに恥辱で赤らんでいるように見えた。

 確かに間抜けではあるが、破壊神の使徒として真っ当に役目を果たしている男になんたる言い草だろう。


 ここまで彼を落ち込ませるとは、ロ○コン三銃士ただものではなかった。


「だからごめん。すぐに【ダブルオーの衣】は用意できない。今から、僕が頼みに行ってなんとかしてもらうけれど、体よく断られちゃうかも」


「いや、その必要はないロ○コン。苦手だというのなら、交渉はこの私が行こう」


「えぇっ!? キングエルフが!?」


 弱き者を見捨てておけない性分がここで出たか。キングエルフが突然、そんなことを申し出た。まぁ、なにがあってもくじけない、めげない、ついでにギャグで肉体的なダメージもなかったことにするこの男には怖い物などない。


 ロリコン三銃士なぞなにするものぞ。彼はどんと胸を叩いて見栄を切った。

 しかし、それを見て慌ててロ○コンが首を振る。


「無茶だよ!! 確かにキングエルフくんは強い男だ!! けれど、彼女達の精神攻撃の前には、どれだけ鍛えた身体も無意味なんだ!!」


「……精神攻撃?」


「そう。彼女達はそれはもう的確に、エグいくらいに僕たちが気にしている所をついてくるんだ。たとえばタケルくんなんかは、その……」


 ちらりと性郷どんの股間を盗み見るロ○コンとキングエルフ。

 何を言われたのかはだいたい察しがついた。脳内再生余裕な罵りだった。


「罵られたタケルくんは、その場で卒倒して、それから一週間ほど生死の境を彷徨うことになったんだ」


「生死の境を!?」


「うん。本当に死を覚悟したんだろうね。途中何度も、子孫を残そうとして股間から必要のないオイルが流れ出ていたよ。アレは壮絶だった」


 ロ○コンがそっと性郷どんから視線を逸らすと遠い目をした。

 よほど思い出したくない凄惨な光景だったのだろう。

 その表情からキングエルフも全てを察する。


 察するが。それでも尚、引くわけにはいかない。

 腰を深く落として下から見上げるようにロ○コンに向かい合うキングエルフ。彼は冷たいELFの手をその逞しい手で握りしめた。


 どうか信じてくれと、真心をこめて――。


「ロ○コン大丈夫だ。私はそんな悪辣な罵詈雑言に屈するような男ではない。エルフリアン柔術は、弱き身体を補う心を養う柔術。鍛えられた心の鋼を、安い言葉で貫けようものか」


「……キングエルフ。どうしても、やるっていうんだね」


「やる。たった一人の妹が困っているのだ。なんとしてでも力になってやりたい」


 見つめ合う男とELF。

 熱い視線が静かに交わり、そして何かが伝わった。「分かったよ」とロボコンが呟いて顔を上げる。君に任せると彼はキングエルフの手を強く握り返した。


「そうと決まれば、さっそくロ○コン三銃士についての情報だ」


「あぁうん、分かっている範囲で教えるよ」


「どういう奴なんだ、その罵詈雑言を浴びせてくるELFっていうのは……」


 妖しい空気をビンビンと漂わせながら、ロ○コン三銃士の詳細については次回へと続く……。

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