第1277話 ア・マゾ・ンと鉄人兵団
【前回のあらすじ】
ついに【ネズミ型ELF破壊爆弾】のある格納庫にたどり着いた男騎士パーティ。
そして、なんの葛藤もなく大量破壊兵器を放つマッドなワンコ教授。
ピキピキの実がキマリすぎてないか。
本作品の癒やし枠、ロリケモ博士はどこへ行った。
狂犬ムーブで、彼女は南の大陸を指一つで救ってしまうのだった。
「よっしゃ!! そうしたら、次はネズ太郎の弔い合戦やね!!」
「……いやいや、なに言ってるんですか。このメンバーで反撃できる訳ないじゃないですか。急いで脱出しないと」
「なに言ってるのコーネリア。ここがどこだか、もっぺんちゃんと見てみ?」
ふと気がつけば、ワンコ教授達がいるのは武器庫の中。
見渡す限りの未来の兵器。それがどれもよりどりみどり。さらに、誰でも使いやすいようにボタン一つで起動するようなのばかりときたものだ。
「あ、これ、行けるかもしれませんね」
「武器庫に入った時点で、ケティらもう勝ったも同然よ。デラえもんが動けないのをいいことに、この施設を無茶苦茶にしてやるでな……」
ここからついに
長くこの章に翻弄されてきた彼女たちの怒りを思い知るときが来たのだ――。
「いや、大げさじゃない?」
◇ ◇ ◇ ◇
「だぞだぞ、まずはこの何か細長い塔みたいな奴を発射してみるでな」
「え、そんな良いんですか?」
「だいじょぶだいじょぶ!! なんかあっても、このア・マゾ・ンに攻撃を仕掛けるような奴はないから!! 他の街が吹き飛ぶだけ!!」
またしても軽いノリでボタンを押すワンコ教授。格納庫の天井まで届くかという円筒状のそれが、ボタン押下と共に浮き上がった。筒の下から吹き出すのは青白い炎。その熱気により巻き起こった土埃に目を瞑った次の瞬間には、それはまた南の大陸の空へと吸い込まれていった。
いったいあのロケットはどこに向かって飛んでいったのか。
『同盟都市破壊爆弾作動。ラクテーン市直撃確認。居住ELFたち完全沈黙』
「おー。仲間に向かっての武器も用意するとはサイコパスか?」
「まぁ、味方が裏切ることほど厄介なことはありませんからね。備えあればなんとやらで対策はするものかもしれません」
どうやら飛んだ兵器は、ラクテーン市を攻撃するものだったらしい。
となれば、隣に並んでいるのはZOZO市か。またしても、逡巡なく伸びたワンコ教授の指先がぽちりと発射ボタンを押下する。
飛び立つミサイル。そして、しばらくして「ZOZO市」が沈黙したという、機械的なアナウンスが倉庫に響いた。
いくらそろそろ物語を巻いていかないといけないとはいえ、雑な扱いである。
「でゅははは、この調子でドンドン打ち込むでな!!」
「やめておきましょうケティさん。たぶん、残りは破壊神の都市。モーラさんや、キングエルフさんたちもいるのに、壊滅ミサイルなんて撃っちゃいけませんよ」
「……あらよ」
「あーっ!!」
聞く耳持たず。ぽちぽちとミサイルのボタンを連打するワンコ教授。
全弾発射。三本の壊滅ミサイルが空を飛ぶ。四角い空から見えなくなったそれは、白い煙の緒を引いて空を駆けて行った。
しばらくして、今度はアナウンスとは別に爆発音が響く。
どうやら破壊神側の都市に飛んだミサイルは、着弾の寸前で迎撃されたらしかった。遅れて『ミサイルの消失を確認』とどこからともなくアナウンスが入った。
ほっと胸をなで下ろす
つまらなさそうに舌打ちするワンコ教授。
「もう、ダメですよケティさん。なんでもかんでもそんな気軽に触っちゃ」
「コーネリア、ごめんねごめんね。けどね、別にELFしかダメージ喰らわないなら、モーラたちが居る都市に撃っても大丈夫じゃない? むしろ、暴走しているELFたちが動かなくなって助かるまであるのでは?」
「……それは一理ありますけれど。ネズ太郎さんたちの犠牲はどうなるんですか」
とにかく、他の都市を攻撃するようなのは今後はナシですと
どれもこれも、ワンコ教授たちがイーグル市に持ち込んだものより大きく、そして重たそうな外観をしている。控えめに言って強そう。
白・青・赤のトリコロールという、浪漫溢れる機体を前にしてワンコ教授が腕を組んだ。
「……あれ、動かしたらきっと面白くなるでな」
「……機械鎧ですか。けど、アレは中に人が乗らないと動かせないんじゃ」
『それなら大丈夫なり!!』
『あれは機械鎧じゃなくて鉄人兵なりな!! ワガハイたちと同じで、独立して動くELFだから、人が乗ってなくても動かせるなり!!』
「なーほーね!!」
知恵の神陣営の都市は既に破壊し尽くした。
あとは、ここ『ア・マゾ・ン』だけをどうにかすればいい。
頭の中に浮かんだ悪知恵がワンコ教授の表情からだだ漏れる。
ピキってしまった彼女の無茶苦茶ぶりには、もう
まるで玩具を追う犬のように鉄人兵の前へと駆けて行ったワンコ教授。その前に置かれたインターフェイスを慣れた手つきで叩くと、彼女は誰からの説明もなしに鉄人兵を起動してしまうのだった。
おそるべし考古学技能。未知の文明に対しても適応されるその洞察力。
賢い人間に行動力が備わればもはや無敵。知識チート無双。なんかちょっとこう、とぼけたこの小説にしては珍しい展開に入っていた。
ワンコ教授の手によって起動した鉄人兵。
その両目から緑色の光が照射される。
『何か御用ですかマスター』
「やった動いた!!」
『ご命令を。我ら鉄人兵団はマスターの御心のままに』
「えーっとね、そーじゃーねー。このア・マゾ・ンを、ぎったぎったのめっためったのけっちょんけっちょんのぼこぼこにしてほしいの」
『……え?』
「あ、伝わらんかったかな? そいじゃ、もいっかい言うでね」
『……あ、いえ、そういう訳ではなくその』
「このア・マゾ・ンを、ぎったぎったのめっためったのけっちょんけっちょんのぼこぼこのぽいにして壊滅してやって」
『……いや、私たち、ア・マゾ・ンの鉄人兵でして』
「やって」
『……はい』
圧に押し切られる鉄人兵たち。本当に起動した人間に逆らうことができないのだろう、彼らはいそいそとコンテナから出てくると、律儀に四方に散ってア・マゾ・ンを破壊しだしたのだった。
『なぜ……俺たちは、この街を守るための最後の砦のハズ』
『諦めろ。起動した奴がまずかった』
『ここまで話が通じないとは』
「なにー、ケティの言うことが聞けないの? 誰が起動してあげたと思ってんの?」
『『『……はい、やらせていただきます』』』
男騎士達を翻弄し続けた密林熱帯都市ア・マゾ・ン。
その崩壊は、あまりにも情けない展開で始まった……。
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