第1275話 どワンコ教授と邪神降臨

【前回のあらすじ】


 ついに正体を曝かれたドラドラセブン最後のELFことオバケの○太郎。

 それは、女エルフたちにこの南の大陸を救うように求めたア・マゾ・ンのマザーコンピューターのデラえもんだった。


 彼に【ネズミ型ELF破壊爆弾】を借りに来たのが仇となった。

 突如現れた小型ロボット「ミニデラ」に取り囲まれたワンコ教授達。

 絶体絶命。【ピキピキの実】を使って狂化して戦おうとするが、連続使用にワンコ教授の身体は既に限界。このまま、デラえもんのいいようにやられてしまうのか。


 その時だった――。


『……こ、コ○さん?』


『……そんな、その特徴的な喋り方はまさか?』


『……嘘なりよ。こんなことって?』


「えっ? えっ? どうしたん? 何があったの?」


 ミニデラたちが一斉に困惑の表情を浮かべる。


 ミニデラと表現したが、棒を持って「ござる」「なり」という語尾で喋るそれはどちらかというと「コロ○ケ」。そしてワンコ教授が【ピキピキの実】で狂化する元ネタのファン達の愛称は「コロ○スキー」。


 という訳でね、はい。


「こんなダジャレで逆転とか……(白目)」


 細かいことを気にしちゃダメだよどエルフさん。小説はキャラとノリと勢い。勢いさえちゃんと出せていれば、何を書いても問題ないのさ。(妄言)


◇ ◇ ◇ ◇


『どういうことなり。この圧のかけ方は間違いなく我らがコ○さん』


『いやけど、犬耳というだけで共通点はそんなに』


『白衣キャラだから○よちゃんの可能性もあるなりな』


『いったいどういうことなり。ワガハイ、もう訳が分かんないなり』


『あ、けど。犬耳ロリ娘に罵られるの助かる』


『『『それな!!!!!!』』』


 急に濃いオタトークを繰り広げ出すミニデラたち。


 緊迫した状況から一転して、のほほんとした語り合い。

 和気藹々とした空気にきょとんとワンコ教授たちが肩をなでおろす。それはミニデラたちも同じで、先ほどまで突き出していた棒をすっかりと下げてしまった。

 脇にそれを抱えて満足げに頷くミニデラたち。どうやら、よほと犬耳ロリ娘に罵られるのが嬉しかったらしい。


 人間もELFも業が深いものである。


「なんだかよく分かりませんが、これはチャンスですよケティさん!!」


「そだけどコーネリア。いったいこれからどうすれば」


「なにやらあのミニデラたちは、ケティさんにコ○さんなる人物を重ねている様子。その信仰心を利用してここは操るんです」


 聖職者のくせにあくどいことを考えつく女修道士シスター。ちょっと、この助言にはピキっていてもワンコ教授も引き気味だった。

 けれども手段を選んでいられる状況でもない。


「分かった。やってみるでな」


 この状況を最大限利用して窮地を切り抜けてみせる。ワンコ教授は静かに決意すると、そっとミニデラたちの方へと歩み出た。


 ただそれだけのことなのに小さなELFたちがわっとざわめきたつ。

 それほどまでにロリケモ耳キャラは魅力的か。喋り方一つでこの扱いの代わり方はいったいなんなのか。いろいろと思う所はあったが、ワンコ教授はそこをぐっと堪えて切り出した――。


 彼らが望む、圧たっぷりの犬耳キャラを演じることを選択した。


「おうおうおう!! お前ら、このケティさまに逆らうとは良い度胸してんじゃねえか!! けれどもおめーら、そんなデラえもんとかいう奴にいいように使われて、なさけなくねーのか、おぉん!!」


『こ○さん!! いや、ケティさん!!』


『しかし、ワガハイたちはデラえもんの忠実な手先なり!!』


『いくらケモ耳ロリ娘の頼みとはいえ、逆らうことはできないなり』


「おねがい。ケティ、この南の大陸を救おうと必死なの。ELFのみなさんが、笑ってくらせるように頑張ってるの。だから、ミニデラさんたちの力を貸して欲しいな」


『『『ま・か・せ・て!!!!!!』』』


『こ、こいつら!! 秒で裏切りやがった!!』


 くるり転身するミニデラたち。ワンコ教授たちに背を向けた彼らは、「行くぞ!」という勇ましい音頭と共に、マザーコンピューターのデラえもんに襲いかかった。


 黒い壁のようなそれに飛びかかり、斬りかかり、弾かれて死んでいく。

 相手は自分達の産みの親。コピー元。オリジナル。敵わぬと分かりながらも、それでも大切な人のために自ら死地へと赴くその姿は壮観だった。


 さらに、さらに。


『くそっ!! 出てくるミニデラたちが、すぐにこっちに向かってくる!! 工場で作ったそばから反乱してくるってどういうことだこれ!?』


『こ○さんへの信仰は、我らミニデラの心に刻み込まれたモノ!! 具体的には、不揮発領域(ROM)に書き込まれているデータ!!』


『後付けで書き換えることなどできないなりよ!!』


『魂とかゴーストとかじゃない、ハードウェアレベルで刻まれたケモ耳ロリ娘への想いを感じろ!!』


『デラえもんよ、これが、俺たちが、ミニデラだ!!』


『えーい!! なんでこんな無駄に暑苦しいんだお前ら!! 僕のコピーだろ!!』


 コピーロボットの反乱というSF的によくある展開にてんやわんやと場が乱れる。

 そして次の瞬間、桃色に発光していたデラえもんの光が消えた。


『ケティちゃん!! デラえもんを一時的に動作不能にしたなりよ!!』


『ここから復旧まで一時間くらいかかるはずなり!!』


『その間に【ネズミ型ELF破壊爆弾】を作動させちゃうなりよ!!』


「おめーらー!! ありがとー!!」


 今がチャンスと駆け出す女修道士シスターたち。こっちだと先導するミニデラたちに続いて、彼女達は管理者の死んだア・マゾ・ンの中を駆けた。


 タイムリミットは1時間。

 デラえもんが復旧し、再びア・マゾ・ンのコントロールを取り戻すまでが勝負。


「絶対に見つけてみせる!! 【ネズミ型ELF破壊爆弾】を撃つ!!」


 急げワンコ教授。走れワンコ教授。

 この章になってからやけに大活躍。主役は君だ。頑張るんだワンコ教授。


 科学都市の命運は、白衣が似合う学者の肩にかかっているのだった。

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