第1274話 どワンコ教授さんとコロ○スケー

【前回のあらすじ】


 ドラドラセブンの最後の一人。

 姿を見せない謎のELF。

 オバケの○太郎の正体がついに判明する。


「ようやく見つけたぜ!! ドラドラセブンを裏で操っている謎のメンバー!! 俺たちに情報を寄こしながら、姿を一度も見せなかったのはそういうことか!!」


『なっ、お前はネズミ型ELF『○ンプイ』の一匹!!』


「デラえもん!! いや、オバケの○太郎!! お前が全ての黒幕だったのか!!」 


 デラえもんこそが全ての元凶。この南の大陸に騒乱を呼び込んだ張本人だった。そう、全ては知の神側が巻き起こしたマッチポンプ。人類を進化させるために起こした無理矢理なイベントだったのだ――。


 って、流石に気がつきますよね?(白目)


「出てくるキャラがF系ばっかりだったものね。まぁ、破壊兵器のくだりとかもそうだったし。そもそもF先生の作品ってシニカルな内容のも多いから、元ネタ的にもありそうっていうか……」


 どエルフさんが補足してくれたように、ここまで出てきたドラドラセブンのメンツから察していただきたい。正義と悪が入れ替わるのは、この手のお話の鉄板。

 そう真の巨悪は――ア・マゾ・ン側だったのだ。


 という所で、敵の本拠地へとやってきしまった偽男騎士&女修道士シスターたち。彼女達はこの状況をどうやって脱出するのか。○太郎にどう挑むのか。

 真のボスが明らかになった所で、今週もどエルフさんはじまります。


◇ ◇ ◇ ◇


『くくく、バレてしまったからには仕方ない!! そのまま騒ぎが一段落するまでア・マゾ・ンの地下収容所に入って貰おうかと思っていたが、そんな悠長なことは言っていられなくなってきたな……!!』


「だぞ!! 僕たちをどうするつもりなんだぞ!!」


 慌てて階段から出てきた女修道士シスターと新女王。

 最後に出てきた偽男騎士は剣を鞘から抜いて、目の前の巨大なマザーコンピューターにその切っ先を向ける。鋼の壁に向かって剣を向けるなどいささか滑稽だが、その肩からたしかな剣気が立ちのぼっていた。


 騙したのか。欺いたのか。利用したのか。


 男騎士パーティーの怒りの視線がマザーコンピューターを射すくめる。そんな中、ビコビコビガビガとマザーコンピューターが明滅する。


『既に貴様たちに利用価値はない。あの娘――どエルフとか言ったか、それとそちらの男騎士のオリジナルは多少やるようだが、他は烏合の衆。お前達がいくら騒いでみた所で、もはや状況は覆らぬ』


「だぞ!! ひどい言い草なんだぞ!! 僕たちを舐めるんじゃないんだぞ!!」


『では、お前達にこの状況を突破することができるのか?』


 暗い部屋の壁が開く。そこからわらわらと出てきたのは二頭身の小さなELF。

 鏡餅のようなシルエット。手には棒。くりっとした丸い目をしたそいつらは、あっという間に偽男騎士達を取り囲んでしまう。


 膝丈ほどの大きさのELFたちだが、これだけ集まられると身動きが取れない。

 ひるむワンコ教授。その前でちびELFたちがいっせいに棒を振り上げた。


 ビリビリと青白い光が棒から放たれる。見た目以上に危ない武器だ。これはピンチかもしれないと女修道士シスターが杖を構えた――。


『くっくっく、どうした。そんな小さなELFたちもどうこうすることができないのか。情けのない奴らめ』


「くっ、こいつらはいったいなんなんだぞ!!」


『そうさな。そいつらは私の小型コピー品。私と意識を共有し、人類の進化という目的のために動く使い魔。さしずめ、小さなデラえもん――ちびデラとても言おうか』


「ちびデラなんだぞ!?」


 小さなデラえもんことちびデラ。

 手に棒を握りしめてこちらに正眼の構えで向かう彼らは――どちらかというと、元ネタ的にはからくりの方っぽかった。


『ワガハイはちびデラなりなぁー!!』


『覚悟するなりー!!』


『生きて返さないでござるよー!!』


 かけ声もだいぶからくりの方っぽかった。

 コロコロとしたスケのからくりっぽかった。


 残念ながらファンタジー世界の住人であるワンコ教授たちに、この些細なパロディの違和感は伝わらない。迫り来る小さき侍たちに、じりじりと間合いを詰められていく。その抜いた棒の先端がじりりとワンコ教授の服の裾を焦がす。


 これまでか――そう思ったその時。


「バカめ!! こっちにもまだ切り札はあるんだぞ!!」


『なに!?』


「このメンバーで戦えるのがティトだけだと思ったら大間違い!! 僕はこの大陸で戦えるようになったんだぞ!! この――【ピキピキの実】のおかげで!!」


 白衣の下からひょいと取り出したのは【ピキピキの実】だ。

 ワンコ教授の身体能力を飛躍的に上昇させ、さらに狂戦士と化すアイテム。

 たしかにこれを使えば、この窮地を脱することができるかもしれない。


 しかし、つい先ほどイーグル市の高軌道エレベーターで使ったばかり。【ピキピキの実】がワンコ教授の身体に与えるダメージは大きい。一日に二度の狂化は、純粋なウォーリアーではないワンコ教授の身体には耐えられないだろう。

 

 それでも、そうでもしないとこの場は切り抜けることはできない。


 額を透明な汗が走る。

 覚悟を思わせるように浮かび上がった眉間の筋を伝って、それは彼女の鼻先から頬をへと流れた。少しだけ開いた唇にそっと緑の実を近づけてワンコ教授が笑う。


「だぞ!! 僕だって世界を救う旅の仲間なんだぞ!! これくらいのピンチ、なんてことないん――だでなァ!!」


『なぁっ!! くそっ、まさか【ピキピキの実】の使い手がいたとは!!』


「……ゼハハハハハハハハハ!! おらっ、モーラからもらった、魔法アイテムもこっちには揃っとるで!! 降参するなら今のうちだでな!! 後からごめんなさいしても、ケティは許さんからね!!」


 狂化したワンコ教授が、女エルフから渡されたマジックアイテムを展開する。

 ここからまた、先ほどの高軌道エレベーターのようなバトルが繰り広げられるのか――そう思った時、ぐっとワンコ教授が胸を押さえた。


「ケティさん!!」


 心配して女修道士シスターが叫ぶ。

 やはりワンコ教授の身体に、時間をおかずの【ピキピキの実】は負荷が高い。

 戦闘をするのは無理がある。なんとか踏ん張って上体を起こした彼女だが、次々にやってくるミニデラをたちにその顔が苦渋に滲む。


 勝てるのかこいつらに。

 倒しきれるのかこいつらを。

 逃げおおせられるのか、このア・マゾ・ンの地下から。


 苦悶にワンコ教授の笑顔が曇ったその時だった――。


『……こ、コロさん?』


『……そんな、その特徴的な喋り方はまさか?』


『……嘘なりよ。こんなことって?』


「えっ? えっ? どうしたん? 何があったの?」


 ここで予想外のパロとパロのケミカルが発生した。

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