第1256話 どエルフさんとメルトダウン

【前回のあらすじ】


 どエルフロボが女エルフたちを襲う。未知のエネルギーどエルフ線によって動く脅威の巨大ロボット。対するは、いつもの魔法少女フォームになって、ハイメガ粒子砲を使えるようになった女エルフ。


 構えた魔法少女ステッキの先からピンク色のレーザービームが放たれる。

 数多くの魔法少女と巨大ロボットを葬り去ってきたハイメガ粒子砲だったが、その成分は巨大ロボットの動力源と同じどエルフ線。


「お前の出した【どエルフ線】を浴びて、どエルフロボはさらなる進化を果たした。見よ、これがELFと人類を進化させる【どエルフ線】の力よ」


「なっ、進化ですって」


「お前の【どエルフ線】をエネルギー供給口から受けたことでついに完成したぞ。これぞ私が追い求めた、究極のどエルフロボだ――!!」


「どエルフロボですって!!」


「そう!! 名付けて、どエルフダイエース!!」


「マジン○ーかゲッ○ーかどっちかにしろ!!」


 どっちも原作者が同じだからって混ぜちゃダメ。そもそもゲッ○ー○があるじゃないか、敵機だけれども。なんてツッコミは置いといて。

 女エルフのエネルギーを吸収して、どエルフロボは脅威の進化を遂げたのだった。


 どエルフ線は進化のエネルギー。

 無限の可能性を秘めたエルフ達の希望。

 そんな権化に、女エルフたちは敵うのか。


「だからタイトル!! もう言ってるようなもんじゃない!!」


 最近、タイトル回収が多いのはアレです、作者が何を書くのか覚えてられないくらい、ちょっとボケて来ているからです。という訳で、白熱の戦いの決着やいかに。


◇ ◇ ◇ ◇


「くそっ!! まだだ――ハイメガ粒子砲、出力120%ォォオオオオ!!」


「ふはははっ、無駄無駄!! 貴様がどれだけその身体から、無限の【どエルフ線】を出すことができると言っても、吸収してしまえばいいだけのこと!!」


「そうですよマスター!! これ以上やっても無意味です!! どエルフダイエースにむざむざ力を与えてどうするんです!!」


 女エルフのどエルフ線を浴びてさらに禍々しく、巨大に変貌していくどエルフダイエース。頭部の髪はいつの間にかエルフの耳のような形状に変わり、代わりにどこから生えたのかなんの用途なのか、金色をしたケーブルが垂れ下がる。

 緑色に輝いていた瞳は、どんどんと大きさと丸みを増していき、気がつけば萌えキャラのようになっていた。口も小振りなアヒル口だ。


 もうロボットじゃねえ。


 なによりその胸部。

 まな板、絶壁、ブレストファイヤー撃つのに持って来いだった平らな胸部は、いつの間にか大きく盛り上がっている。○っぱいミサイルといえば、女型ロボットの華というか外すことのできない部分だが、いささか盛りすぎ。

 欲望てんこ盛り、もはやミサイルというよりガスタンクだった。


「ほら、よく見てくださいマスター!! マスターの【どエルフ線】を吸って、どエルフロボがあんなボインちゃんに!! エルフの情緒が台無しです!!」


「なにを言う!! 巨乳エルフとは人類とエルフが思い描く至高の姿!! 山育ちで粗食がちでどうしても発育が悪いエルフにとって、豊満な身体への成長は難しい!! 健康な身体、豊かな肉体、それは揺るぐことのない美の根幹!! それが分からないのか貴様には!!」


「そうかもしれませんけれど――こんなのマスターにはあんまりです!! 自分のどエルフエネルギーを吸わせて、相手をボインにするだなんて!!」


 どエルフ線で胸が大きくなるなら、幾らだって自分が浴びてやりたい。

 女エルフはそう考えているに違いない。出会ってそう間もないELF娘だが、主従の絆だろうか女エルフの複雑な心境を彼女は思い遣っていた。


 その心配は半分当たり。女エルフは歯を食いしばると口の端から血を滲ませていた。自分の手により相手をボインボインのナイスバディ恵体エルフにしてしまうことに、少なからず女エルフの精神も肉体もダメージを受けていた。


 けれども、何の考えもなしにこのような自傷行為に及ぶ女エルフでもない。

 出力を上げてでも【どエルフ線】をロボットに浴びせかけるのには、彼女なりの思惑があったのだ。


「いいえ違うわリリエル!! むしろボインボインだからいいのよ!!」


「えぇっ!?」


「どっちの【どエルフ線】が上かなんて勝負をしている訳じゃないの!! 私がやりたいのはどっちが【どエルフ線】の容量があるかってことよ!! 一朝一夕、ポッと出てきただけの捨てキャラに、この作品が始まってからというものどエルフ線を浴びせかけられてきた、私の許容量が負けると思っているの!!」


「……つまり!? どういうことです!?」


 ELF娘が聞き返したのとほぼ同じタイミングでみしりと重たい音が響いた。音の出所は、どエルフダイエースが飛び出してきた研究所の床。

 巨大化したどエルフダイエース。その加重に耐えきれずに建物の基礎が軋みだしたのだ。地下深くまで研究施設を作っていたのもこの際には仇になった。


 巨大ロボが飛び出してきた穴は、気がつけば再びその巨体を地の底へと誘う、落とし穴へと変貌していた。


「いかん!! すぐに飛ぶんじゃ、どエルフダイエース!!」


「させるかぁっ!! 魔法少女式ハイメガ粒子砲!! 200%ォオオ!!」


「ぎゅるぉぉおおおおおおおん!!!!!」


 女エルフ渾身のピンクの破壊光線がどエルフロボを襲う。

 既にFカップサイズだったボインがさらに二倍に膨れ上がったかと思うと、ずしりとその身体をのけぞらせた。


 崩れた上半身のバランスを持ち直すこともできず、巨大なボインロボは崩壊を始めた奈落へと背中から倒れ込む。それがトドメとなって、ついに彼らが立っている足場は破断し、巨体は再び地下深くに向かって沈降をはじめるのだった。


 肩に乗っていた浜乙女博士が振り落とされる。

 驚愕にその表情が引きつる。脂汗の滲んだその顔の先で、女エルフが勝利を確信した表情と共に、魔法少女ステッキから放つレーザービームを止めた。


「バカな!! 私のどエルフダイエースが!!」


「そのままおっぱいに埋もれて地の底で眠ってろ!! なにがエルフの理想の姿だ――エルフってのは、スレンダーだからこそ価値があるんじゃろがい!!」


「いや、マスターそれには諸説があると思いますよ!!」


 イーグル市の地底深くに落ちていくエルフロボットとマッドサイエンティスト。

 その手から零れた【ダブルオーの衣】がひらりと荒廃した街の空にたなびいた。

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