第1255話 どエルフさんVS巨大どエルフロボ

【前回のあらすじ】


 大地を裂いて現れたゲッ○ーロ○的な何か。

 神聖遺物【ダブルオーの衣】から出ている【どエルフ線】という謎のエネルギーを使って動く巨大ロボットが、ここに来て女エルフ達に立ち塞がる。


「……いや、おかしいやろ。なんやねん【どエルフ線】って」


【キーワード どエルフ線: かつて実態を持たない霊的存在だったエルフを、実態を持つ現在の状態に進化させた神秘のエネルギー。主に人間のエルフに対する憧れと羨望、あと「もし森でエルフと出会って、恋仲になってしまったらどうしよう」というピュアな少年冒険者の妄想により構成される希望のエネルギーだ。このどエルフ線によって進化したのはエルフだけではなく、人類の進化にも】


「とって付けたようなフレーバーテキストやめてもろて」


 SF編らしく、いろんな有名作品のパロを交えていっているどエルフさんですが、ついに赤い男の合体ロボまで出すことになるとは。はたして未知のエネルギーとの邂逅は、女エルフ達とどんなシナジーを生み出すのか。


 というか、普通に倒せるのか赤い巨大ロボ。


 魔法少女ウワキツモーラVSどエルフロボ。はたして勝つのはどちらだ――。


◇ ◇ ◇ ◇


「ふむ。それほどのどエルフ線を生身で発生させられるというのに勿体ない。おい、そこのまな板」


「誰がまな板じゃい!」


「カッティングボード」


「言い方を変えれば良いって訳じゃないわい!」


 ロボの肩に乗っかった老博士と妙に息の合ったやりとりをする女エルフ。

 どエルフ線を研究しているだけあって、その権化のような女とは話が合うのかもしれない。なんてことを思うELF娘をきっと女エルフが睨む。


 ぜんぜんそんなことはないという感じに息巻いて再び彼女は天を仰ぐ。それを見下ろして、マッドサイエンティストはなにやら満足げに口の端をつり上げた。


「気に入ったぞ、貴様、名前を聞いておこう」


「……モーラよ。そんなの聞いてどうしようっていうのよ」


「モーラよ。どうだ、ワシと手を組まないか。ワシとお前が手を組めば、どエルフ線の研究は飛躍的に進むだろう。【ダブルオーの衣】に頼らなくても、人の身でありながらこれほどのエネルギーを出せるお前は――実に研究のしがいがある」


「モルモット扱いってこと? 勘弁してちょうだいよね――せっかくこの物語は、奴隷も洗脳も、転生も起こっていない純粋なファンタジーなんだから!!」


「いや、その代わりに他の作品にはいないようなセンシティブキャラが……」


 黙ってろと再び目でELF娘をだまらす女エルフ。

 とにかくそんな非人道的な行いは看過することはできない。断固拒否と再び女エルフは魔法のステッキの先端を赤いロボットへと向けた。


 範囲は間違いなくロボット側の方が広かった。しかし、女エルフのビームも負けてはいない。集約され密度や威力では勝っているように思える。

 うまく相手の弱点に叩き込むことができればと、彼女は赤いロボットを観察する。


 合体変形するタイプのどこか歪なシルエット。大きな大胸筋といい、妙にちぐはぐなバランスといい、どうも急ごしらえのように見える。その割には、自然な継ぎ目で一種の生命体のようだ。


 これにはたして弱点なんてあるのだろうか。

 考えながらも迷っている時間は無い。


「……そこよ!!」


 狙ったのはシンプルに胴体の中央。人間の身体で言うところの丹田だった。

 別に女エルフに格闘の知識があるからではない。かと言って、あてずっぽうということでもない。ビームを穿ったその部分には、あきらかに円状の溝が入っていた。


 まるでそこから何かを出し入れするような。


「なんと!! これを見抜くとはなかなかやるなエルフの娘よ!!」


「どうかしら、大正解――弱点だったりしてくれないかしらね!!」


「……いいや!! 残念ながら弱点ではない!! いや、むしろ逆と言っていいだろう!! よくぞここに【どエルフ線】を打ち込んでくれた!!」


 女エルフのハイメガ粒子砲。そのピンクの光が徐々にロボットの身体を覆っていく。その巨体を焼くことも痺れさせることもなく、エネルギーが包んでいく。

 どういうことだ。攻撃は間違いなく直撃している。なのに、効いている様子もない。どころか――。


「ウォォオオオオオオオオン!!!!!!!!」


「咆哮!?」


「マスター、なんだかちょっと元気になっていませんか、あのロボット!!」


 突然雄叫びを上げる赤いロボット。

 シルエットも、いつの間にか禍々しいものに変わっている。まさか鋼の身体が変形したというのか。


 いや、変形と言うよりもこれはむしろ――。


「お前の出した【どエルフ線】を浴びて、どエルフロボはさらなる進化を果たした。見よ、これがELFと人類を進化させる【どエルフ線】の力よ」


「なっ、進化ですって」


 赤い角はいつの間にか角が取れて丸くなり、あれだけ分厚かった胸板は気がつけば丸みを帯びて弓なりのシルエットに変わっている。どこかずんぐりむっくりとしいてた腹回りは細くシェイプアップされていく。


 無骨な男の浪漫を詰め込んだようなフォルムから、また違った浪漫を詰め込んだ感じのシルエットに。



 そう、それはロボットモノで必ず出てくる、もう一体。


 ヒロインが乗るための女性用ロボット――。


「お前の【どエルフ線】をエネルギー供給口から受けたことでついに完成したぞ。これぞ私が追い求めた、究極のどエルフロボだ――!!」


「どエルフロボですって!!」


「そう!! 名付けて、どエルフダイエース!!」


「マジン○ーかゲッ○ーかどっちかにしろ!!」


 塗装のカラーは女性向けの赤。けっして三倍だとか、ゲッ○ーワンカラーではない。最初から浜乙女博士の狙いはこれ。【ダブルオーの衣】から出るパワーで、女性型ロボットを作り上げることだった。


 なぜか。そんなことは決まっている。


「見ろ!! この下から覗くパンチィの神々しさを!! これこそ女性型ロボットの様式美というものじゃ!!」


「しらんがな!!!!」


 しごくどうでもいい男の浪漫によるものだった。


 流石はマッドサイエンティスト。

 ちょっとついていけない。


 ついていけないが、大ピンチには間違いなかった。

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