第1215話 どエルフさんと七人のELF

【前回のあらすじ】


 超能力者ササヤマから南の大陸の状況について説明される女エルフ。

 空を覆う青い雷と霧は、ランプの魔人のようなもので、知性を持った群体だということ。それを南の大陸の空にばら撒いた、七人のELFが存在すること。


 詳細は不明だが彼らの目的はかつて神々が目指したこと。


「……今の人類の滅亡」


「眠っていた都市を起動させ、再び新人類創造の営みを発生させたこいつらは、やがて来たる新たな人類の完成と、旧人類の殲滅のために動いている」


 女エルフ達がこれまで見たどれよりも大きい宇宙戦艦を鋳造し、虎視眈々と人類滅亡の計画を進めているそいつら。もし大陸の霧を払ったなら――そいつらとの戦いは避けられないものとなる。


 何百年もの月日をかけて人類を滅ぼそうとしている秘密結社に、女エルフ達は勝つことができるのか。そして――。


「今更だけれど、七人ってちょっと多くない? もうクライマックスよね?」


 急に増えた敵陣営の数に女エルフも作者も困惑。

 まぁ、その、パロ元的に七人でなければならないんですけれど――はたしてそんなに思いつくのか。パロることができるのか。

 作者的にもちょっと不安な展開となって参りました。


 さてそれでは、本日は詳細は分からないながらも、その七人についてぼちぼちと触れていこうかなと思います――。


◇ ◇ ◇ ◇


「七人の正体について詳細は分かっていない。ただ、それぞれの役割についてはだいたい分かっている。過去に南の大陸で起こした活動内容については、俺の方で調査済みだ……」


「どうしてそんなの調べてるのよ?」


「暇だったから」


「いや、暇だったからって」


「世界の未解決事件とかそういうの好きなんだよね。イーグル市とダイナモ市のデータベースを覗いてたら、なんかそういうおかしな事件が目についてさ。興味本位で調べだしたら泥沼なのよ。だからさ、もし誰かに教える機会が来たら、逃すまいと虎視眈々と狙ってたって訳なのよ。なははは」


 なんとも俗っぽい理由で助けられたものだ。

 文句はないがちょっと気落ちした女エルフ。そんな彼女の前でまたホログラムがチカチカと明滅する。戦艦の代わりに表示されたのは、巨大なクレーターだった。


 いや、よく見るとただのクレーターではない。

 四つの縦の溝が入ったそれは――大きな大きな拳。


「一体目。ぶっちぎりで危険なこいつは七人の中の切り込み隊長と思われる。南の大陸の各地に、こいつが暴れたと思われる痕跡があり、これはその中でも最も特徴的なクレーターだ。場所はダイナモ市とイーグル市の中間。かつて、ダイナモ市が管理していた水産資源施設が、この一撃により蒸発した」


「……なんてこと。人間業じゃない」


「識別のために俺はコイツのことをこう呼んでいる――『オークゴリラ』と」


 オークゴリラ。

 なんというか緑よりも青い格好をした姿が、思い描けてしまうのは気のせいだろうか。小さい子をからかうが、なんだかんだで世話焼きというか、某ジャイのアンよりは愛嬌がある感じがしないでもない。


「もしくは『クマノカオリ』!」


「凶暴そうな名前だわ……」


「こいつとだけでは遭遇したら戦わないようにした方がいい。特に、野菜屋の周辺で目撃情報がある。ほいほいと青果店には近づかない方が賢明だ」


 ごくりと息をのむ女エルフ。

 彼女の顎先に汗が走るのを見守ってササオカは次の画像を表示した。


 続いて表示されたのは広大な空の風景。人影などまるで見えない、すがすがしいまでの青空だった。たなびく白い雲。空を飛ぶ小鳥たち。


 そして――それに混じって飛ぶ円盤。


「……なにこれ?」


「イーグル市とダイナモ市の上空を徘徊している謎の飛行物体だ。おそらくだが、こいつが霧の魔物をこの大陸にばら撒いて操っていると思われる」


「これ、生き物なの?」


「分からない。こいつも俺は便宜上こう呼んでいる――『鳥マン』と」


「『鳥マン』!」


 こいつもまた黒いヘルメットを被った灰色タイツ男のイメージが脳裏に浮かぶ。

 どうしてだろうか、会ったこともない相手なのにその姿が浮かぶのは。

 不思議な感覚に女エルフは打ち震えた。


 再び画面が切り替わる。


「この空を飛んでいる少女はなんなの?」


「彼女は俺と同じエスパーなんだ。まだ成長途中のため俺ほど超能力を使いこなせていないが――潜在能力は計り知れない。下手に爆発させるとこの大陸が粉みじんと化す可能性がある」


「なんて危険な」


「彼女を俺は『エスパーM美』と読んでいる」


「『エスパーM美』!!」


 また写真が切り替わる。今度は鍬を持ったロボットのような奴。

 これは動画で、ジャキンジャキンと鍬を振り下ろしては、すごい勢いで大地を耕していく――。


「これは畑を耕しているの?」


「それが分からないんだ。その大きな鍬を振り抜いて、なにやら耕しているのは間違いないが、何かを植えた形跡はない。ただ、コイツが通った後は綺麗に畑に整地されて、作物が良く育つんだ」


「作物がよく育つ!!」


「名付けて『ゴンバトラーSK』。長いから略して『ゴンスケ』と読んでいる」


「『ゴンスケ』!!」


 この後も出てくる出てくる、ネズミ型の群体ロボットや、ゴージャスな天空城に住むELF。どれも一度見たら忘れられないようなビジュアルをした奴らだった。


 耳にしただけで、思わず怖じ気づいてしまいそうな存在感はどうしてか。人類を滅ぼそうとする面々は揃いも揃って、とんでもないキャラクター性を持つ奴らだった。


 そして。


「こいつらを束ねているボス。こいつが一番厄介なんだが、残念ながらこいつの情報だけはどうやっても見つけることができなかった」


「見つけることができなかったっていうのは?」


「実態がないのか、それとも巧妙に姿を変えているのか。ただ、六人のメンバーをうまく差配して、人類滅亡計画を円滑に進めているのは間違いない。リーダー格の七人目が確かに存在しているんだ」


「姿の見えないリーダー格の七人目!!」


「俺は仮にそいつのことを『オバケの○太郎』と呼んでいる」


「『オバケの○太郎』!!」


 いったいアリスト・○・テレスの使徒だというのか――。


 ついに明らかになった七人の敵。

 それらは元ネタ的にどう考えても、知恵の神に縁のある奴らだった。

 ただし、女エルフ達は元ネタを知らないので気づきもしなかったが。


 そう。


 この大陸を破滅へと走らせていたのは他でもない。人類を救えと男騎士達を走らせた知恵の神――に関係する者達のようだった。

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