第1208話 どキングエルフさんとサイボーグ化手術

【前回のあらすじ】


「ついてくついてく!!」


「「「そんな可愛らしい話じゃなかっただろ!!」」」


 仮面の騎士と少年勇者にひっついて宇宙戦艦オーカマにやってきたシュバルツ・ブルーマ。ブルマを被った変態の仮面。どうして仮面の騎士達を助けたのかと思えば、その正体は思いもよらない人だった。


 いや、過去にGガ○ネタはやっている。

 厳密にはGガ○を元ネタにしたエ○ゲネタを擦っている。

 筆者大好きAliceso○tさんが、21世紀の始まりにリメイクを放った某格闘技リスペクトエ○漢ゲーで、虎の皮を被って出てくる漢の中の漢。


 それに男騎士が扮していたことを考えれば――シュバルツ・ブルーマの時点で賢明な読者諸君は気がついてくれただろう。


「いや、気がつくかこんなもん。毎度毎度、伏線の張り方が雑で大味でわかりにくいんじゃ!!」


 気をつけます……。(猛省)


 という所で、女エルフたちのイーグル市攻略の山場に合わせて、キングエルフ達に接触した男騎士。彼はどうやら、キングエルフをさらなる高みへと導こうとしているようだが――はたして、どうなることやら。


◇ ◇ ◇ ◇


「私がこの大陸を救う切り札とはどういうことだティト?」


「……まずはこれを見て欲しい」


 ぽいと男騎士が放り出したのは、いつだったか女エルフも渡された白いキューブ。地面に転がったそれはカシャリと音を立てると、広々とした病室の壁に映像を投射した。表示されたのは、裸にふんどし姿のとある男。


 キングエルフ――ではない。

 よく似ているがその身体の半分は、メタリックな機械によってできていた。


「これは?」


「お前を模して作られたELFことキッカイマンだ」


 いつの間に消えたか、どこに消えたかキッカイマン。女エルフパーティーが、男騎士のニセモノに襲われて以降、彼の消息も不明になっていた。


 投影された映像の中で、彼は冷凍カプセルのようなものに入れられている。

 胸に手を当てて安らかな顔で眠る姿は――またしてもGガンのパロみたいだった。


「例の騒動の後、私と本物のティトは彼を強襲して捕らえた。現在はAIをスリープ状態にしてこうして保護している」


「なんのために?」


「お前のためだキングエルフ。こいつが暴れ回ることで、お前に不要な迷惑がかかるのを防ぐとかじゃない。こいつは、お前がさらにひとつ上のエルフになるために、必要な素体なんだ」


「素体とは? ティト、お前はいったい私に何をさせようというのだ?」


「……ずばりキングエルフよ、このお前を模したELFと合体してサイボーグになるつもりはないか?」


 後ろに控えていた仲間達が一斉に身構えた。何を言い出すかと思えば、とんだ提案である。ELFのことも機械のこともとんと分からない彼らだが、合体という言葉からやろうとしていることは想像できた。


 エルフであることをやめて、ELFと一体化するだなんて――。


「何をバカなことを言い出すんだ!! キングエルフ、こいつの言うことなんて聞く必要ねえ!! いくら世界の為だからってエルフをやめる必要なんかない!!」


 真っ先に反対したのは仮面の騎士だ。

 もうすっかりと仲間気分なのだろう。あれだけトンチキ野郎とこけにしていたキングエルフなのに、彼が人間を辞めようとするのを彼は慌てて止めた。


 奥歯を噛みしめて男騎士を睨みつける仮面の騎士。

 病室なので帯刀はしていないが、隙あらば殴りかかるくらいの剣幕だった。


 その後ろで少年騎士も渋い顔をする。


「世界を救うために誰かが犠牲になるなんて間違っていますよ。見損ないましたティトさん。貴方がそんなことを言う人だっただなんて……」


 男騎士達の力になりたいと西の王国から飛び出してきた少年勇者。

 彼の瞳に、男騎士の非常な申し出は残酷に映ったらしい。曇った表情で視線を床に彷徨わせると彼はくっと唇を噛みしめた。


 理想だけで全てが解決できるとはもちろん少年勇者も思っていない。

 けれども、誰かを犠牲にする選択肢を簡単に口にできるほど、彼もまた世界に対してすり切れてはいなかった。


 キングエルフの部下二人が反対する中。


「うん。いいんじゃないか合体。サイボーグ系のキャラクターは人気があるし、キングエルフは兄貴キャラだからシナジーある気がするぞ。私はいいと思う」


 なぜか艦長がサクッとそれを了承した。

 ほんと軽い感じ。まるでスナック感覚で合体したらみたいなことを言い出す。

 その言葉の軽さにすぐに仲間達が驚いてその顔を見た。その驚愕の表情にも、また艦長は軽いいつものとぼけ顔を向ける。


 キングエルフに艦の全権を奪われ、今も無茶苦茶にこき使われている。そんな恨みが積もりに積もってそんなことを言うのだろうか。


「なんてこと言うんですかブライトさん!! キングエルフさんだって生きているエルフなんですよ!!」


「そうだぜ、見損なったぞブライト!! お前、キングエルフがエルフをやめても良いっていうのかよ!! そんなことしてまで手に入れた世界平和に、本当に意味なんてあると思っているのか!!」


「いや、お前らそうは言うけれど――そもそもこいつがエルフかと言われれば、限りなく怪しいだろ」


「「……たしかに」」


「いまさら、サイボーグになろうが吸血鬼になろうが、超生命体になろうが、キングエルフはキングエルフって感じだろ?」


「「……それはまぁ」」


「だったらお前、別にいいだろサイボーグ化手術だって」


 そんなことないという言葉がどうして出ない。あまりにも説得力がありすぎる艦長の言葉に、仮面の騎士も少年勇者も黙り込んでしまった。


 確かに、もうなんていうかキングエルフは、エルフのキングというより、キングエルフという独自の何かみたいな所がある。そもそも現時点で、サイボーグ手術を受けたようなやりたい放題っぷり。一般的なエルフと剥離してしまっている。


「普通のエルフは、ふんどし一丁で空を飛んだりしないものなぁ」


「そうですよね、普通はエルフってもっと線が細くて綺麗な感じですものね」


「金髪版飛鳥○みたいな奴だから、サイボーグ手術もしっくりくるかも」


「がっちりしていて初代ライダー感もありますからね、キングエルフさん」


 艦長が言うとおりいまさらなのでは。

 キングエルフの部下二人は、彼のこれまでの無茶苦茶ぶ黙り込むのだった。むしろ止める理由がないとばかりに――。

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