第1207話 キングエルフさんとシュバルツ・ブルーマー

【前回のあらすじ】


 仮面の騎士と少年勇者を襲う仮面のライバル達。

 パロ元でも強キャラポジションの仮面のライバル達。三倍速で動いたり、古のMSにのったり、ミスターブシドーだったりと強者揃い。そんな奴らに包囲されればもはや為す術もない。


 哀れ万事休すかと思われたその時、学校の空に男の声が木霊する。


「待てィ!! 海の向こうからやって来た男達に、よってたかっての乱暴狼藉許すまじ!! 貴様らそれでもELFか!!」


「貴様っ、何者だっ!!」


「シュバルツ・ブルーマー見参!!」


 颯爽と数を増すマスクキャラ&変態キャラ。

 そうねこいつもマスクキャラ。敵ではないけれどもマスクキャラ。例外的な作品に出ているから、すっかりと忘れていましたけれどいましたGにもマスクの変態。


 だからって、何もそんな変態仮面みたいなパロにしなくてもよかったじゃないのよ。ブルーマーって。頭にブルマを被っているって。


 言い逃れできない奴じゃん。(バンナム・サンライズさんからお叱り待ったなし)


 キャラクターよりも作者の方がピンチ。むしろ、展開的には心強い兄貴キャラが出てくれたならそれは好機。シュバルツにライバル仮面たちを任せると、仮面の騎士達は一目散にその場を逃げ出した。


 かくして【ダブルオーの衣】を巡る彼らの冒険は幕を閉じた。

 大切な神聖遺物と仲間との絆。そして――。


「……で、その後ろで控えている変態はいったい?」


「「そうなのよ、着いてきちゃったのよ、この変態」」


「私の名前はシュバルツ・ブルーマー!! 変態ではない!!」


 変態を戦艦オーカマに持ち帰って。


◇ ◇ ◇ ◇


 ことの次第は既に仮面の騎士達から話を聞いている。

 シュバルツが名乗れば、すぐにキングエルフは事情を察した。すぐさま彼はベッドから降りるとブルマを被った謎の男の前へと進み出る。


 心配そうに仮面の騎士と少年勇者が見守る中、新旧二人の変態がにらみ合う。


「なるほど、ブルマとはいい趣味をしている」


「貴様も白ふんとはなかなかやるではないか。データにはないが流石はエルフの中のキングを名乗っているだけある。その胆力、素直にこの私も認めよう」


 一触即発かと思いきや意気投合、すぐにがしっと握手を交わした二人。

 類は友を呼ぶ、変態は変態を識るということだろうか。心配した割には穏便な話の決着に、仮面の騎士達がほっと息を吐いた。


 さて、それはそれとしてどうして彼がここにやって来たのかだ――。


「何の用だシュバルツ・ブルーマー。私の部下を救ってくれたことはありがたく思って居るが、お前のような得体の知れない男となれ合うつもりはないぞ。たとえ貴様がブルマを穿いた紳士でも、それは変わらない」


「ふっ、そうでなくては会いに来た甲斐がないというもの。キングエルフよ、貴様が本当に気骨のある男かどうか見極めさせてもらった。その上で、どうかお前に聞いてもらいたいことがある」


「……なんですこの茶番?」


「アレックス、もう俺たちはトンチキなやり取りしなくていいんだから、ここは素直に黙っとけ。巻き込まれるだけ損だぞ」


 おずおずと後ろに下がる仮面の騎士と少年勇者。艦長も彼らの後に続いた。

 変態と変態の頂上決戦。わかり合えたと思った所からの抜き差しならぬ空気。

 そんな中で、シュバルツはそっとそのトレードマークである頭に被ったブルマに手をつけた。ゆっくりと、彼はそれを下へとずらしていく。


 すると――。


「なっ!! まさか、お前は!!」


「そうだ、この顔に見覚えがあるだろう、エルフキング」


「なんです、どうかしたんですかね、あれ?」


「……顔に見覚えもなにも、ブルマ頭に被ってただけで、顔は最初からモロ出しだったけれど」


「いいんだ、細かい所は……」


 露わになったシュバルツ・ブルーマーの素顔。それはキングエルフもよく知る人物。いや、読者もよく知る男の顔だった。


 そう間違いない。


「ティト!! ティトじゃないか!! お前、いったいどうしてこんな所に!!」


「……あ、どこかで見たことがあると思ったらティトさんだ」


「……げげっ、連邦共和国の総大将かよ。なんで気がつかなかったんだ」


 ブルマの下から姿を現わしたのは、我らが主人公――男騎士だった。

 あまり男騎士と接点のない少年勇者と仮面の騎士には、ぱっと見で彼がそうだとは気がつかなかった。けれども、キングエルフともなれば話は別――ブルマを脱げばすぐに彼だと気がついた。


 女エルフと共に旅をしているはずの男騎士。それが、どうしてここで一人でいるのだろうか。そも、シュバルツ・ブルーマと名前を偽っていたのもどうしてか。

 キングエルフが首をかしげると、それにもっともだという感じに男騎士が頷く。


「どうして俺がこんな所にいるのか疑問に思うだろうキングエルフよ」


「それはまぁ。モーラたちと一緒だったんじゃないのか?」


「実は敵側の罠にはめられてしまってな。この南の大陸に入ってからこっち、ずっと俺はモーラさんたちと別行動をしているんだ。ついでに言うと、この個体は本物のティトではない。ティトの生態情報を元に作り上げた、クローンELFだ」


「あ、なるほど、それでそのキャラのパロディなんですね」


「ややっこしいことするなぁ。どんだけ好きなんだよGガン○ム」


 男騎士のクローンELF。


 話を聞けばなんてことはない。先日のダイナモ市デビルガ○ダム頂上決戦の際に破壊された男騎士に化けたELF。それを男騎士達が改修して、自分達の手駒として動くようにした――と、これまたGガンリスペクトな経緯を経て彼は生まれていた。

 

 そして、いよいよ女エルフ達がイーグル市に潜入するかという所で、連携するべくキングエルフ達の元へと訪れたのだ。


「今、モーラさんたちはイーグル市に潜入している。彼女達が【MM砲】を奪取し、この大陸の上空に蔓延している謎の陰を払うことができれば――それで作戦の第一段階は完了する」


「作戦の第一段階?」


「あぁ。破壊神の都市も、知恵の神の都市も、それで自分達が操られていたことに気がつくだろう。となれば、後はこの南の大陸に介入した謎の敵との総力戦だ」


 そのためにも、もう少し自分達には力が必要だと男騎士。

 彼はキングエルフを静かに睨んだ。


「キングエルフ。お前は人類のために、その身を捧げる覚悟があるか?」


「この身を捧げるだと?」


「あぁ。エルフの中のキングから、さらにもう一段、エルフの魂のステージを上げるときが来たのだ。お前こそがこの大陸を救う切り札なんだ……」

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