第1206話 ど仮面の騎士さんと黒い兄弟

【前回のあらすじ】


 押し寄せる仮面のライバルキャラクター達。

 一作目で、ファンに強烈な印象を残してしまった某仮面の三倍速男。彼のイメージはその後も丁寧に続編作品で膨らまされ、バリエーション豊富な仮面キャラクターを生み出してきた。それがいま、一斉に仮面の騎士達を襲う。


「これ以上の好き勝手はこのネオナオン軍総統――フルモロンダルが許さん!!」


「おっと、私も忘れて困ってはこまるな。この――ゼックス・マーキスをな!!」


「ユニ○ーックス!!」


「ちん○は出ているか?」


「思い出せ○ン!! お前が欲しかったのは本当にそんな力か!!」


「来たかよ!! ○―セルフ!!」


「「ダメだ。もうダメだ。このアカウントは○される。バンナムグループの申し立てによって抹○されてしまう。終った、kattern完。さらば表舞台……」」


 いや、まぁ、大和○先生が許されてるから大丈夫でしょう。


「「あの人は一本筋が通ったガノタだから許されるんであって。ニワカガノタのお前じゃ話にならんわ!!」」


 そうかなー、どうかなー、別にそんなたいした差はないと思うけどなー。

 ニフティ時代から大和田先生がガンダム漫画描いてるのは知ってるけど、面白ければなんでもありって気がするけれどなー。


「お前のは面白いの前にヤバいんだよ」


「ギャグやってる人間が、自分のことを面白い奴なんて思い出したら末期ですよ。面白いのかな自分は真面目にやってるんだけれど――くらいじゃないと、ギャグとしてキレ味がありませんよ」


 ひどくね?


 とまぁ、今週ものっけからキャラに作者がディスられる感じの入りで始まるどエルフさん。この作品もガン○ムさんみたいに、ご長寿おとぼけ作品になるといいですね……。


「「いや、そろそろ長くなってきたから区切りをつけろよ!!」」


◇ ◇ ◇ ◇


「待てィ!! 海の向こうからやって来た男達に、よってたかっての乱暴狼藉許すまじ!! 貴様らそれでもELFか!!」


 仮面のライバルキャラクター達に囲まれた仮面の騎士と少年勇者。

 もうどうにでもなれと放心していた所に、突如としてその男らしい名乗りが届く。


 いったいこの声はどこからと探せば――校舎の屋上に人影が見える。校舎中央、時計がはめ込まれて盛り上がった部分の上。そこに夕日を浴びて佇む男の姿。

 

「貴様っ、何者だっ!!」


「あ、これ、知ってます。超有名なキャラクターのノリ」


「もうなんでもアリだな。なに繋がりだよ」


「仮面で赤いスーツだからじゃないですか?」


「トリコロールカラーじゃんよ……」


 すっかり怒濤のパロディ展開にも馴れてしまった仮面の騎士と少年勇者。そんな彼らの視線の向こうで、男は腕を組んで胸を反った。


 青々と光る頭部のそれは間違いない、特徴的なヘルメット――。


 じゃない!!


 ブルマ!!

 ブルマです!!

 ブルマを被っております!!


 ブルマを被った変質者が、突如学校の屋上でロム立ちキメて仮面のライバルたちを見下ろしている。

 スパロ○よろしく、他作品のロボキャラが乱入してくるのはパロディでもよくある展開だが、流石にこんな酷いエロネタは許されるのか。

 なにがなんやかという状況に、その場にいる全ての人間が言葉を失った。


 そんな中、男が叫ぶ――。


「シュバルツ・ブルーマー見参!!」


「「そっちかい!! そして名乗るんかい!!」」


「戦艦オーカマの戦士達よ、義によって助太刀するぞ!! さぁ、かかってこい、雑な仮面のクローン男ども!! ぬわっはっはっは!!」


「おめーがそれ言ったらいかんやろ」


「セイソさん、よしましょう。変態には変態をぶつけろ。キングエルフさんを見ていて、僕たちは嫌というほどそのことを学んだじゃありませんか」


 突如乱入したゲルマン忍者にここは任せよう。

 仮面の騎士と少年勇者は目で意思疎通を交わすと、謎の男の登場で気が散った仮面のライバルたちの包囲網を突破した。追いすがろうとしたロン毛の仮面。しかし、それにすかさずブルマ男がキックを入れる。


「貴様!! 同じマスクライバルのくせに裏切るのか!!」


「笑止!! マスクキャラと裏切りはセット売り!! ある時は主人公の敵、ある時は主人公の味方、そして――マスクの下は驚きの人物!! それが男の浪漫だというのに、貴様らは形ばっかりをなぞってからに!! 人、それを未熟者という!!」


 とってつけたようなパロ元のセリフが背中で木霊するのを聞きながら、仮面の騎士と少年勇者が夕日の中を駆けて行く。


 マスクライバル大集合&大乱闘。

 校庭で始まった第1次スーパーマスクキャラ大戦に背中を向けると彼らは逃げた。どこまでも逃げた。


 昇る美形キャラの断末魔に耳を塞ぎながら。


「もうやだ、思ってた潜入任務と違う。なんなんだよこの展開」


「徐々にシリアスキャラからギャグキャラに染まっていくこの感じ。気をつけましょうセイソさん、このままだと僕ら等身縮んでコメディリリーフモブキャラになっちゃいますよ」


「80年代ジャンプ漫画かよ……」


◇ ◇ ◇ ◇


「という訳で、命からがら取ってきたぜ【ダブルオーの衣】」


「大変でしたよ。やっぱりギャグ担当の人がいないと、シティアドベンチャーとはいえこういう酷い展開になっちゃうんですね」


 場所は戻って、戦艦オーカマの医務室。

 白いベッドに横たわるキングエルフに、仮面の騎士と少年勇者は任務の完了報告に訪れていた。ベッドの隣のパイプ椅子には、なぜか林檎を剥いている艦長。


 ごくろうとキングエルフが頷く。彼が目配せすると、ちょうど剥き終えた林檎を艦長が二人に差し出す。うさぎちゃん型のそれを、彼らはひとつずつ摘まむと食べながらしょんぼりとした顔をするのだった。


 深い深いため息が揃って戦士達の口から漏れる。

 対照的にキングエルフと艦長の口からはふふっと温かい笑い声が漏れた。

 何がおかしいんだよと突っかかったのは仮面の騎士だ。


「いや、なに。大変な任務には間違いなかったが、それ以上に二人に任せた意味があったのかなと思ってな」


「なんだよそれ」


「随分とお互いへの信頼が深まったようじゃないか。どうやら、【ダブルオーの衣】以上のものを、持ち帰ってくれたようだ」


 そういうこっぱずかしいことを言うなよと、病人のキングエルフに肘を入れる仮面の騎士。やめてくださいよと、慌てて布団を叩く少年勇者。

 部下のむず痒い反応を確かめてうんうんと頷くキングエルフ。


 くだらなくそして違う意味で大変なミッションだったが、それを経てまたしても彼らチームの絆は深まったようだった。


「……で、その後ろで控えている変態はいったい?」


「「そうなのよ、着いてきちゃったのよ、この変態」」


「私の名前はシュバルツ・ブルーマー!! 変態ではない!!」


 そして、変態もついて来てしまったのだった。

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