第1204話 ど仮面の騎士とハーレム展開

【前回のあらすじ】


 プールの教員用更衣室で【ダブルオーの衣】を探していた仮面の騎士と少年勇者。そこに思いがけない訪問者が現れる。やって来たのはジャージ男の同僚。


 ピンク色のおかっぱの髪をした乙女――。


「ちょっと待て! それは仮面の騎士の方の同僚じゃないのか!」


 パロ元が分かってしまうと展開が分かるよね。

 そう、ここで唐突に仮面の騎士に刺客が忍び寄る。元ネタ時に、遭わせちゃいけない感じのピンク髪キャラが、何の因果か彼の前に姿を現わしたのだ。


 どうやらジャージ男に用があるようだが、この二人の出会いが果たしてどんな波瀾を巻き起こすことになるのか。そして、この事態を紛らわすためにうっかりと、神造兵器【ダブルオーの衣】を身につけてしまった仮面の騎士だが。


「あぁ、そう言えばそのアイテム、かなり曰く付きな品だったわね」


 ギャグと見せかけてしれっとこういうギミックを用意してみました。

 流石にそろそろ、話を核心へと進めていこうかなと思っています。というこ所で、本日もどエルフさんはじまりはじまり。


 はたして、仮面の騎士の運命やいかに。


◇ ◇ ◇ ◇


「あはっ!! どうしたんですかもう、なんだか元気がないですよ!!」


「いや、えっと、あのそうね……うん……」


「元気だけが先生の取り柄じゃないですか!! というか、髪の毛も金色に染めちゃって……あっ、もしかしてトラブルってそのことですね!?」


「いやまぁ、そういう、ことかなぁ……」


「恥ずかしがらなくてもいいじゃないですか!! 生徒指導担当の先生だって、たまにはそれくらいお洒落したって罰は当たりませんよ!! それに……私は先生が、皆に黙ってこっそり髪を染めていても、それを人に言いふらしたりしませんよ?」


「なんなの、この子のこの距離感。どういうことなの……」


 きゃぴきゃぴとギャルっぽいムーブで迫ってくるピンク髪のおかっぱ。

 どうもこのジャージ男の同僚らしく、彼女も教師のようなのだが――発言にどうも大人らしさを感じられない。まるでハメを外した子供のような気安さに、辟易するように仮面の騎士が眉根を寄せた。


 助けを少年勇者に求めたい所だが、スク水姿の彼をここに出すわけにも行かない。

 ここは一人で乗り切らなければと気合いを入れるように仮面の騎士が瞳を閉じた。


 そして――。


「先生? どうしました、本当に調子悪いんですか?」


「どわぁっ!?」


 そんな一瞬の隙を突くように、女が仮面の騎士に肉薄してくる。彼の意識の外を突いたような急接近。思わず後ろにのけぞると、彼はロッカーの扉にしたたかに腰を打ち付けた。


 大丈夫ですかと、自分が原因にも関わらず心配そうな顔をする乙女。

 思った通り厄介な女だ――。


「なにかやらかしたみたいですけど、調子が悪いのに無茶しちゃいけませんよ。あれだったら、私とこれから一緒に保健室まで行きましょう?」


「いや、大丈夫だよ。急に君が近づいてくるものだから、驚いて」


「……やだ、私と先生の仲じゃないですか」


「どういう仲なの君と俺って」


 化けているとは分かっていても気になってしまう、ジャージ男とこの乙女の関係。この距離まで近づくのが許容される仲とは。同僚とは言ったけれども、明らかに若いこの女教師とまさか――。


 邪な想像が仮面騎士の頭を巡る。

 傍若無人に見せかけてかなりピュアなところがある仮面の騎士に、ちょっと乙女の大人なムーブは身に余った。そして、またしてもそれが彼の判断を鈍らせた。


「ほら、ダメですよ先生、無茶したら」


「……あっ!!」


「一緒に、保健室に行きましょう? ねっ?」


 そっと仮面の騎士の腕を引っ張って身体を寄せたピンク髪のおかっぱ娘。さりげなく二の腕に胸に押しつけると、彼女は怪しく上目遣いで仮面の騎士を覗き込む。

 これは間違いない。こんな触り方をしてくるのは間違いない。


 あのゴ○ラみたいな顔をした教師――あんな冴えない風体で、こんな女性とそういう関係なのかと、ふつふつとした怒りが仮面騎士の身体の中に湧き上がった。


 しかし、それよりも――。


「おふぅ……」


「あら、どうしたんですか、前屈みになって?」


「……な、なんでもないんだ、気にしないでくれ」


 欲望の方が彼の下半身の先端部分に滾ってしまった。


 あぁ純情、仮面の騎士。


 怪しいピンク髪の女の色香に絡め取られて身動きが取れない。それもそのはず、暗黒大陸は魔の者がはびこる殺戮の大地。エッチなことや色恋にうつつをぬかしている時間がない。彼らを率いていたぺぺロペは、歩くエロ漫画みたいなキャラクターだったけれどもそれはそれ。


 仮面の騎士にはエッチなことに対する免疫がなかったのだ!!

 だからキマる。ピンク髪の乙女の猛攻ボディタッチが恐ろしい程に彼の精神を蝕んでしまった――。


「やっぱりお加減がすぐれないみたいですね。流行病かもしれません、ちょっと本当に作業は切り上げて保健室へと向かいましょう」


「いや、大丈夫だよこれくらい。唾吐けておけば治るから……いや、大人しくしていたら普通によくなるから。だから、お願い、放っておいて」


「先生のこんな表情見せられて放っておける訳ないじゃないですか。もうっ、心配くらいさせてくださいよ。水くさいですよ」


「いや、あの、その……」


 お願いだから距離を取ってくれの一言が言えない仮面の騎士。

 さらに密着を深めて、ぐいぐいと身体を押し当ててくるピンク髪の乙女に、もう逆らえない。


 仮面の騎士、万事休すか。

 まさか元ネタで振った相手のような女にトドメを刺されてしまうのか。

 向こうと違ってパロディだからキャラが異なるのは仕方ないが、それでもまるでパロディのお約束みたいに、意趣返しをされてしまうのか。


 どうすればいいのかと迷う視線が助けを求めるように部屋の中を彷徨う。


 背後の【ダブルオーの衣】が入っていたロッカー。

 少年勇者が隠れている部屋の隅。

 桃色の髪の乙女に破壊された部屋の入り口。


 なにか、なにかないだろうか、この状況を打破することができるキーアイテムは。そう思いながら忙しく首を振り回していたその時。


「ちょっと、抜け駆けは酷いんじゃないおばさん。先生は私の先生なんだけれど」


「……誰がオバサンだと。もう一度いってみろ小娘」


「なに!? なにがどうなってるの!? だれ、誰のセリフなのさっきの!?」


 またしても唐突にどこからともなく人の気配が漂ってくる。

 いったい何が起こっているのか、混乱する仮面の騎士達の前に――壊れた部屋の入り口の陰から、ぬっと緑色の髪が姿を現わした。


 そう、まるで、あの元ネタの最後の恋人のような鮮やかなエメラルドの髪が。


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