第1192話 どエルフさんと店員さん

【前回のあらすじ】


 女エルフ&女修道士シスターのドスケベ電マレビュー開催!!


「しとらんわい!!」


 というのは冗談として、異世界で出会ってしまった電動こけしにすっかり心を奪われてしまった二人。スイッチを入れればすっかりその振動の虜にされてしまった。

 身体の大切な部分にそれを当てて悦に浸るアラスリエルフと妙齢女修道士。

 そろそろ身体のケアが心配になってくるお年頃の二人にそれはとってもよく効く。よく刺さる。魅惑のアイテムだった――。


 まぁ、健康的な使い方(肩に当てる)しかしてないんですけれどね。


 と言うわけで、ちょっと寄り道はこれくらい。

 今日はそろそろ本題に戻って、イーグル市の地図について女エルフ達に捜索させていきたいと思います。いい加減、話を進めないと申し訳ないしね。


「そう言って、もう何ヶ月こんなことしているのよ……」


 ほんと申し訳ない。

 やっぱりぶつ切りで作業していると、どうしても話がとっちらかりますね。

 今度はきっちりプロットを切りきってから挑むように気をつけます……。


◇ ◇ ◇ ◇


 電気マッサージ器で体力と健康を回復した女エルフ達。

 その後も、マッサージチェアに室内サイクル、ランニングマシンと色んなアイテムを使ってデトックス。まるでスポーツジムで一汗掻いたようなすっきりした顔で、二人は健康器具コーナーを後にするのだった。


「どうかしらコーネリア。このあと、調理器具コーナーを見てくるっていうのは?」


「いいですねぇ。冒険で使っているケトルを新しいのに変えたかったんですよ」


「フライパンとかも新しいのに変えたいし……って、そうじゃないじゃろがい!!」


 ここで女エルフがようやく気がつく。

 すっかりとビッ○カメラの魔力に取り憑かれて、前後が見えなくなっていたことに、彼女はようやく気がついた。


「イーグル市の地図を手に入れるんじゃなかったの。何をのほほんとシコリンと一緒に休日ショッピングしてるのよ。バカか私は」


「モーラさん、自分を責めないでください。バカなのは昔からじゃないですか」


「はい、いつもの小ボケありがとうね。ぶっとばすぞ!!」


 すっかり正気を取り戻した女エルフ。

 彼女はマッサージ器具を丁寧に棚に戻すと、ホラ行くわよと女修道士を連れて歩き始めた。目指すは地図のある場所――とは言っても、心当たりはない。

 しかし、どうすればいいかは「緑の」から聞いている。


「店員さんに聞けば、どこで売っているか教えてくれるって言ってたけれど」


「なるほど。これだけ大きなお店なら、自分で探すよりもそこで働いている店員さんを頼った方が早いですね」


「そういうこと……おーい、そこな店員さーん!!」


 分からなければ聞けば良い。

 女エルフはたまたま通りかかった店員に声をかけた。


「はーい!! なんでしょうかー!!」


 振り返ったのは背の高い女店員。

 ちょっとボーイッシュなショートヘアー。体つきも全体的にがっしりとしていて男っぽい。しかし、顔は少し女の子っぽくて、えくぼが似合う娘だった。

 王子様のような雰囲気のあるその少女は、とてとてと女エルフの方に駆けてくるとまじまじと彼女を見つめた。


 同性とはいえイケメンに見つめられるとちょっとドキッとする。女エルフと女修道士が少し照れて言い淀んだ。


「あー、えーっと、実はこのイーグル市の地図を探しているんですが。どこにあるか分かりませんかね」


「地図ですか? うーん、そうですね、ここは家電量販店なので、ちょっと分からないですねぇ……」


「え? なんでも揃うって聞いたんですけれど?」


「まぁはい、どこかにはあると思います。ただ、ここって、家電売り場以外は基本的にテナントが入っているんです。そこのお店に聞かないと分からないんですよね」


 申し訳ないと頭を下げる大きな女の子。

 こうも毒気もなく謝られては、女エルフ達もそれ以上は言えない。うぅんと、腕を組んで二人は黙り込んだ。


 すると――。


「えっと。ちょっとだけお時間いただいてもよろしいですか?」


「あ、はい」


「うちの店員ではないんですけれど、知り合いにそういうのに詳しい人がいますので、その人にどこにあるか聞いてみますね」


 ひょいと彼女は胸ポケットから四角い板を取り出した。小さなそれになにやら打ち込むと、ぴぽぱと電子音が鳴る。どうやらそれで連絡をするみたいだ。


 呉服屋シーマ村でも見た光景だ。

 女エルフもつい先ほどまでスマホを弄っていたからなんとなく分かる。

 黙って彼女たちは、女店員のすることを見守った。


「あ、もしもし、おにーちゃん。うん、今ね、バイト中。えっとね、ちょっと聞きたいことがあるんだけれどいいかな?」


「あら、知り合いってお兄さんなんですね」


「兄妹で仲が良いのね。ちょっと羨ましいわ」


「モーラさんの所と比べたら、そりゃどこだって良いですよ」


「……まぁ、それはそうね。けど私は悪くないわよ。それだけは言っておくわ」


 女エルフとキングエルフの関係についてはまぁ仕方ない。

 つい最近まで、兄妹であることさえ知らなかった上に、兄があの兄である。


 ふんどし一丁で飛び回り、エルフリアン柔術がうんたらと叫び、無茶苦茶な無双を見せる男をどうあがめろというのだろうか。


 兄妹仲云々の前にキングエルフに難が多すぎた。


 仲よさげに談笑する女店員。その楽しげな素振りに、ちょっとは「見習った方が良いんじゃないですか」と、女修道士シスターが女エルフをからかう。「五月蠅いわねぇ!」と、腰をついてきた彼女を振り払った女エルフ。

 そうこうしている内に話は終ったらしい。店員さんが電話を切ると顔を上げた。


「えっと、私の兄がこちらに来てくれるそうです。おそらく本屋か文具コーナーにあるだろうとは言っていましたけれど、最悪電子機器を買えばなんとかなるかと」


「あ、わざわざお兄さんに来てもらうの? なんか、悪いわね……」


「そこまでしていただなくてもいいのに」


「大丈夫ですよ。お兄ちゃん、放っておくと家の外に出ませんから。たまには何か理由つけて外に出してあげないとなって思っていたんです」


「あら、たいした女房うっぷりねこの妹さん」


「お兄さんなんですよね? ちょっと、親密過ぎでは?」


「いやだなー、そんなことないですよー、普通ですってこれくらい」


 そう言いながら照れ照れと顔尾を赤らめて身体をくねらす女店員さん。

 これ、もしかして何かあるんじゃないだろうか。女エルフと女修道士シスターはもしかして、声をかける相手を間違えたかな――と、少し考え込むのだった。

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